アルカディアへの道すがら
ヨシは木と木の移動は、ほぼできない。
私が森歩きをし始めた時と同じだ。木にはなんとか登れるけど、近い木にしか移動できないんだ。
それでヨハン爺さんから森歩きを引き継いだガンツ爺さんに、森歩き組から外されたんだね。
爺さんと呼ばれているけど、まだ若いから、面倒を見切れないと判断されたのか?
ヨハン爺さんなら、最後までヨシの面倒を見たのかな? でも、本人がやめたのかもしれない。
ヨシは、賢すぎるから! 自分が他の森歩き組の子どもに迷惑を掛けていると察したのかも。
師匠達は、勿論、スピードを落としているし、私たちも。
でも、ヨシは気にしているみたい。
「私が遅いから、皆に迷惑を掛けている」
その気持ちは、痛いほど分かる。今でも、私は他のアルカディアの子どもより遅いんだ。
リュミェールもヘプトスも気にしていないだろうけど、遅い方は気にしちゃうんだよ。
「ゆっくり歩いていけばいい。ミク、上級薬草を見つけなさい」
オリビィエ師匠、無理言うよ! ここら辺には、下級薬草しか生えていない。
「無いんじゃないかな?」
ぶつぶつ言いながらも、目に魔力を集めて、辺りを調べながら歩く。
サリーもアリエル師匠から、蜂と火食い鳥を探す宿題を出された。
「師匠、こんな浅い場所に蜂や火食い鳥なんて、滅多にいませんよ!」
サリーは無理難題を言われたと、少し怒っている。
「サリー、あちらに蜂が一匹いるよ」
ヨナは、若者小屋で狩りをしていたから、魔物を見つけるのが早い。
「えっ、どこに?」
サリーとヨナは、一匹見つけた蜂が巣に戻るまで、そっと追いかける。
「ほら、ヨシ! これが下級薬草よ」
下級薬草なら、ところどころに生えているから、ヨシに教えてあげる。
「これを探せば良いのか?」
ジミーは、口は重たいけど、植物採取などにも優れている。
果物やハーブをよく見つけて貰ったんだよね!
「いいえ、これは下級薬草なの。師匠に言われたのは、上級薬草だけど……」
かなりの範囲を見つめたら、端にあった。
「あっ、これが上級薬草なの。ここら辺には少ししか生えていないわ」
ヨシもジミーも真剣に上級薬草を見つめる。
「よし! 覚えたぞ」
ジミーは木と木を飛びながら、広範囲を探す。
ヨシは、まだ目に魔力を集める方法を知らないから、歩きながら、下級薬草を見つけたら、採っていく。
「サリーとヨナは、大丈夫かな?」
離れて小一時間は経つ。心配になった。
「巣を見つけたら、報告に帰ってくるさ。それにしても、ヨシは下級薬草を見つけるのが上手いな」
そうなんだよね! 私は、上級薬草しか探していないから、まだ二本だけ。
ヨシは、もう何十本も下級薬草を採っている。
「すぐに下級薬草を覚えて、採れるのは才能がある。薬師になるかい?」
ヨシは、オリビィア師匠に薬師を勧められて驚いている。
「私には薬師のスキルはないのに?」
「ははは、人間のほとんどはスキルに恵まれないのさ。それでも、鍛冶屋にも薬師にも弓使いにもなる。アルカディアでは、子ども達にスキル以外の職業訓練もしているんだ。ヨシなら、薬師になれるさ!」
下を向いていたヨシが顔を上げた。
「本当になれるのなら、薬師になりたいです! もし、神父になるにしても、村には薬師がいない場合もあるそうですから」
「ヨシ、一緒に頑張ろう!」
「うん、ミク! 教えてね!」
そんなことを言いながら、アルカディアを目指す。
「師匠! 蜂の巣を見つけました!」
サリーが報告に戻ってきた。
「よくやったわね! ハチミツ酒が欲しいと言う森の人が多いのよ!」
それに、アリエル師匠はハチミツが大好きだからね。
パッと木に飛び上がると、凄いスピードで移動していく。
「皆も見学に行くかい?」
ジミーは、広範囲を探して、上級薬草を五本採っていた。
「蜂を生け取り! 行きたい!」
目を輝かして、即答だ!
ジミーなら、そう言うと思ったよ。
「ヨシはどうする? 道から離れるけど?」
ヨシは少し考えて首を横に振った。
「ヨシ、行きたいなら、行こう! アルカディアには、私が背負えばすぐに着くさ」
オリビィア師匠は、ヨシが遠慮したのに気づいた。
「見てみたいです」
うん、ヨシは我慢しすぎなんだ。もっと、自己主張したら良いと思う。
だって、前世の私みたいに心臓が悪いわけじゃない。
他の森の人みたいに木から木へ飛べないなんて、人間なら当たり前なんだよ!
森の人としては、鈍臭い私だけど、前世だったらオリンピックに出れるんだ。
つまり、ヨシだって凄いって事! これをもっと伝えたい。
だって、ヨシは本当に賢いんだもの。ライバルの出現だけど、弟子が二人になったら、オリビィア師匠が薬師の修業をいっぱい付けてくれるんじゃないかな?
薬師修業が少ない気がするので、期待しちゃうよ。




