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翌日以降も、オーランドの受難は続いた。特に、清潔さに対する彼の執着は根強く、些細なことでも悲鳴を上げていた。
ある日の午後、私が小屋の近くを流れる比較的穏やかな湧き水を見つけた時のことだ。水は冷たいが、澄んでいて、周囲にはいくつかの大きな岩が転がっていた。
「オーランド、見て! ここでお湯を沸かせば、体を拭けるわ!」
私は興奮気味に彼を呼んだ。彼が近づいてきて、私が指差す湧き水を見つめた。
私は焚き火でお湯を沸かし始めた。熱い湯気が立ち上るのを見て、オーランドの顔がぱあっと明るくなった。
「じゃあ、温かいうちに体を拭きましょう。お先にどうぞ」
私は手ぬぐいと持参した石鹸を渡し、小屋の片隅にある少しだけ仕切られたスペースを指差した。
「え、あそこでか? 」
オーランドは戸惑ったように私を見た。私は肩をすくめた。
「もちろん、他に場所がないもの。さあ、早くしないとお湯が冷めちゃう」
彼はぶつぶつ文句を言いながらも、しぶしぶ仕切りの奥へと入っていった。
「ふぅ……。なんとか体を拭いたが、こんなに不便なものなのか……。全身を洗い流す魔法が、どれだけ有り難かったか…」
少しさっぱりして落ち着いたのか、オーランドは穏やかな顔つきをしていた。
「じゃあ私もやってこよっと」
「……は!?あ、あぁ」
妙に動揺している彼に首を傾げつつ、私は手ぬぐいを受け取り、仕切りの奥へと入った。
「はーさっぱり!さて、そろそろもう寝よっか」
「……」
オーランドの元に戻って声をかけたが、彼はぼーっとしているのか返事がない。
「おーい?どしたの?」
「いや、別に…!」
彼の耳はほんのりと赤く、視線は落ち着きなく宙を彷徨っている。
「具合悪くなったら早めに言いなね」
そんな風にして、オーランドは一つ一つ、キャンプの「不便さ」と「自然の厳しさ」を学んでいった。
彼は日中、私が薪を集めたり、食料を準備したりするのをじっと見つめていた。相変わらず虫が飛んでくれば飛び上がるし、飲み水が欲しくなれば魔法を使いそうになる。そのたびに私が、忌々しそうに虫を追い払ったり、湧き水を汲んできたりした。
一度など、彼の足元にバッタが跳ねただけで、彼は叫び声を上げて小屋から飛び出し、「ひぃっ! エミリア、助けてくれ! あれは悪魔だ!」と半泣きで私にしがみついてきたほどだ。
その時の彼の震える背中に触れた時、私の胸の奥で、今まで感じたことのない温かい感情が芽生えるのを感じた。それは、まるで小さな子供を見守るような、優しい気持ちだった。