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9.スライム進化加速、そして正面突破

魔力300ポイントを全て注ぎ込み、エミリーの土魔法によってスライム専用の訓練施設が完成した。ダンジョンの一角に突如として現れたその施設は、スライムたちの特性を最大限に活かすための工夫が凝らされていた。


重力を変化させるエリア、擬似的な敵モンスターを生成する区画、そして、毒液の精製や体積を制御するための特殊な環境。アースの指示を受け、エミリーが細部まで調整したその施設は、まさにスライムのための至れり尽くせりな空間だった。


施設が完成すると同時に、スライムたちは我先にと訓練を開始した。俊敏な動きを追求するスライムは重力変化エリアで軽々と飛び跳ね、毒液の精度を高めたいスライムは標的に向かって正確に毒液を飛ばす。力自慢のスライムは擬似モンスター相手に文字通り体当たりを繰り返し、群体統率能力を持つスライムは他のスライムたちに指示を出し、訓練を効率的に進めていく。


アースとエミリーは、その様子をダンジョンマスタールームから見守っていた。


「すごいね、アース。本当にスライムたちがどんどん強くなってる!」


エミリーが興奮した様子で言う。アースもまた、スライムたちの成長に目を細めていた。


「ああ、エミリーのおかげだ。こんな素晴らしい訓練施設を作ってくれたんだからな」


訓練施設が完成してから、たった1日が経過した。しかし、その1日はスライムたちにとって、飛躍的な成長を遂げるための時間となった。


翌朝、アースはスライムたちのステータスを確認した。その結果に、アースは目を見張った。4匹のスライム全ての能力値が、ほぼ倍増していたのだ。


俊敏なスライムは、まるで稲妻のように素早く動き、毒液スライムの毒は、触れたものを瞬く間に腐食させるほどの強さになっていた。力自慢のスライムは、以前よりもさらに巨大化し、その体当たりは岩をも砕く破壊力を持つ。そして、群体統率スライムは、他のスライムたちへの指示がさらに的確になり、その統率力は目を見張るものがあった。


(たった1日で、ここまで成長するとは……。エミリーの訓練施設は、想像以上に効果があるな)


アースが感嘆していると、ダンジョンの入口に新たな反応があった。


「……また来たか。今度は5人パーティーか……。それに、連中の魔力の質からして、Eランクの冒険者たちのようだな」


アースは冷静に分析した。Eランクの冒険者たちは、これまで襲撃してきた冒険者よりも遥かに手強い相手だ。油断すれば、スライムたちが全滅してしまう可能性もある。


「エミリー、来るぞ。今回は5人パーティーだ。油断するな」


アースはエミリーに注意を促し、スライムたちに指示を送った。


ダンジョンの奥へと進んでくる5人の冒険者たち。先頭を歩くのは、屈強な戦士。その後ろには、魔法使い、盗賊、そして、回復役の神官が控えている。最後尾には、弓を構えたエルフの女が、周囲を警戒しながら進んでいた。


「ここが、最近噂になっているスライムダンジョンか……。舐めた真似をしてくれるじゃねえか」


戦士が吐き捨てるように言う。魔法使いは杖を構え、周囲に警戒の魔法を展開した。


「罠の類はなさそうだな。だが、油断は禁物だ。スライムとはいえ、数が多ければ危険だぞ」


「心配するな。スライム程度、俺がまとめて叩き潰してやる!」


戦士は自信満々に言い放ち、大剣を構えた。


その時、スライムたちが姿を現した。


「スライムか。やっぱり、噂通りだな」


戦士は嘲笑するように言う。しかし、その顔には、僅かな警戒の色が見て取れた。


「行くぞ! スライムどもを殲滅する!」


戦士が号令をかけると同時に、5人の冒険者たちが一斉に攻撃を開始した。


戦士は大剣を振りかぶり、スライムたちに斬りかかる。魔法使いは炎の魔法を放ち、スライムたちを焼き払おうとする。盗賊は影に身を隠し、スライムたちの背後を伺う。神官は回復魔法の準備をし、エルフの女は弓に矢をつがえ、スライムたちを狙い撃つ。


しかし、スライムたちは慌てなかった。群体統率能力を持つスライムの的確な指示のもと、スライムたちは完璧な連携で、冒険者たちの攻撃をかわしていく。


俊敏なスライムが戦士の攻撃を翻弄し、毒液スライムが魔法使いに毒液を浴びせかける。力自慢のスライムが盗賊を吹き飛ばし、他のスライムたちがエルフの女に襲いかかる。


回復役の神官は、必死に回復魔法を唱えようとしたが、群体統率スライムに邪魔され、詠唱を中断させられてしまう。


スライムたちの連携攻撃に、冒険者たちは翻弄された。各々のスライムが、訓練施設で培った能力を最大限に活かし、冒険者たちを追い詰めていく。


そして、ついに決着の時が来た。


毒液に侵された魔法使いが倒れ、俊敏なスライムに翻弄された戦士が力尽きる。力自慢のスライムに吹き飛ばされた盗賊は、立ち上がることができず、他のスライムたちに囲まれてしまう。エルフの女は、毒液とスライムたちの連携攻撃によって、弓を構えることすらできなくなっていた。


最後に残った神官は、恐怖に顔を歪めながら、スライムたちに懇願した。


「や、やめてくれ! 命だけは助けてくれ!」


しかし、スライムたちは容赦しなかった。群体統率スライムの指示のもと、スライムたちは一斉に神官に襲いかかり、その命を奪った。


ダンジョンには、再び静寂が訪れた。


「……勝った……。正攻法で、Eランクの冒険者たちを……」


アースは信じられない思いで呟いた。エミリーもまた、驚きを隠せない様子だった。


「すごい……。本当にすごいよ、アース! スライムたち、本当に強くなったんだね!」


エミリーは興奮した様子でアースに抱きついた。アースはエミリーの体を優しく抱きしめ返した。


「ああ、エミリーのおかげだ。お前がいなければ、スライムたちはここまで成長することはなかっただろう。ありがとう、エミリー」


アースは感謝の気持ちを込めて言った。


「……どういたしまして。でも、これはまだ始まりに過ぎないよ。もっともっと、スライムたちを強くして、最強のダンジョンを作ろう!」


エミリーは満面の笑みを浮かべた。アースもまた、未来への希望を胸に、力強く頷いた。

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