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30.深淵の底で見たもの、狂気の根源

精神をダンジョンコアへと送り込んだアースを襲ったのは、今まで感じたことのない強烈な精神汚染だった。視界は歪み、耳鳴りが止まない。頭の中に直接、悲鳴のようなものが響き渡る。


「……くっ……! これが、狂気……!」


しかし、アースは、必死に耐え忍んだ。エミリーやノワール、そして、ダンジョンのスライムたちの笑顔を思い浮かべ、意識を保とうとした。


やがて、精神汚染の嵐が過ぎ去ると、アースの目の前に、異様な光景が広がっていた。そこは、無数の触手と、蠢く肉塊が絡み合う、悪夢のような空間だった。


「……ここは、一体……? これが、ダンジョンコアの内部……!?」


アースは、愕然とした。この空間こそが、ダンジョンコアの歪みの根源。狂気の中心だったのだ。


その時、肉塊の中から、巨大な眼が現れ、アースを見つめた。その眼には、底知れぬ憎悪と狂気が宿っていた。


「……お前は、何者だ……!?」


アースは、恐怖を押し殺し、眼に問いかけた。


すると、眼は、低い唸り声のような音を発し、アースの脳内に、直接語りかけてきた。


『……私は、ダンジョンの苦しみ……。神聖騎士の空間操作によって、歪められた、ダンジョンの負の感情の集合体……』


「……ダンジョンの苦しみ……!? なぜ、そんなものが……!?」


アースは、理解できなかった。


『……お前たちは、ダンジョンを利用し、力を得ようとする。ダンジョンは、お前たちの欲望を満たすための道具ではない……!』


眼は、憎悪に満ちた声で、アースを責め立てた。


「……それは違う! 俺は、ダンジョンを利用しようとしているのではない! ダンジョンと共に、成長し、共に生きていきたいんだ!」


アースは、必死に反論した。


『……戯言だ! お前たち人間は、常に欲望に囚われている。ダンジョンを支配し、全てを我が物にしようとする……!』


眼は、アースの言葉を信じようとせず、狂気を増幅させた。


その瞬間、アースの精神に、再び強烈な精神攻撃が襲いかかった。


「……うっ……!」


アースは、必死に抵抗する。しかし、狂気は容赦なく、アースの精神を蝕んでいく。過去のトラウマ、未来への不安、そして、エミリーへの歪んだ感情……。心の奥底に隠された負の感情が、次々と暴き出されていく。


(……だめだ……! このままでは、狂気に飲み込まれてしまう……!)


アースは、危機感を募らせた。このままでは、精神が崩壊し、二度と元に戻れなくなるかもしれない。


その時、アースの脳裏に、エミリーの笑顔が浮かんだ。


(……エミリーを、守らなければ……! このダンジョンを、守らなければ……!)


アースは、最後の力を振り絞り、狂気に抵抗した。


そして、心の奥底に眠る、純粋な希望の光を呼び覚ました。

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