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2.侵入者、初来訪

その日、ついに俺のダンジョンに初の侵入者が現れた。


(お、ついに来たか……って、まじか? 冒険者?)


 ダンジョンの入口から、全身革の装備に身を包んだ若い男が慎重な足取りで進んでくる。手には槍を持ち、あたりを警戒しているのが分かる。腰のポーチにはいくつかのポーションがぶら下がっており、それなりに準備はしてきたようだ。


(ってか、冒険者なんて職業があるのか……そういう世界観なのね、了解)


 俺のダンジョンの狭い通路をゆっくりと進みながら、男は周囲を見回す。


「……魔物がいなさすぎる。これは罠か?」


(いや、悪かったな! うちのダンジョン、今のところスライム一匹しかいないんだよ!!)


 心の中でノリツッコミを入れながら、俺はじっと侵入者の動きを観察する。男は慎重に足を進め、ついにダンジョン内唯一のモンスター、スライムを視界に捉えた。


「スライムか。なんだ、拍子抜けだな」


 男は嘲笑交じりに呟くと、槍を構え勢いよくスライムへ突きを放った。


 だが——。


 スライムは一瞬、ぶるっと震えたかと思うと、槍の軌道を読んだかのように体を流動させ、攻撃を紙一重で避ける。


「なっ!?」


 男が驚愕する間もなく、スライムは素早く動き、粘液の一部を弾けさせた。


 ぶしゅっ!


「ぐっ……なんだこれ……毒か!?」


 飛び散った粘液が男の腕にかかる。次の瞬間、男の動きが急に鈍くなり、膝をついた。


「し、痺れる……くそ……!」


(よし、いいぞ! 今のうちにとどめを刺せ!)


 スライムは男の足元に素早く這い寄ると、一気にその身体を広げ、男の顔へ覆いかぶさった。


「ぐっ……や、やめ……」


 男は必死にスライムを振り払おうとするが、毒の影響で力が入らない。そのままスライムはぴったりと顔を密閉し、気道を塞いでいく。


「ぐ……ご……が……」


 男は最後の力を振り絞り、槍を振るうが、その動きは弱々しい。スライムは粘液を使い、槍を絡め取るようにして奪い取り、男の腕の力を完全に削ぎ落とす。


 男の身体は痙攣し、ついには指先すら動かなくなった。


「……っ……」


 そのまま数秒後——。


 ぴくりとも動かなくなった。


(……やったか?)


 しばらくすると、スライムは粘液を引き剥がし、冒険者の体をずるりと床に転がした。


(まじか……あっさり勝っちまった……)


 俺のダンジョン唯一のモンスター、スライム。たった一匹だけの最弱モンスターだったはずなのに、毒で動きを封じ、窒息で確実に仕留める——。


(これ、思ってたよりヤバい能力なんじゃないか……?)


 俺はダンジョンコアの意識を使い、スライムのステータスを確認した。


――――――――――

【名称】:スライム(変異種)

【スキル】:毒粘液(低)、流動回避(微)

――――――――――


(なるほどな……単なるスライムじゃなくて、少しずつ強化されてるのか)


 スライムが男の装備を舐めるように吸収し始める。槍や革装備はさすがに無理だが、男が持っていたポーチの中身は次々と粘液に溶け込んでいった。


(これって……スライムが成長するチャンスか?)


 俺のダンジョンはまだ始まったばかりだ。しかし、最弱と思われたスライムがこの調子なら……。


(いける……このダンジョン、もっと強くできる!)


 そう確信した瞬間だった。

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