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16.反転聖剣、そして騎士団の影

一夜明け、ダンジョンに侵入してきたのは、神聖なるオーラを纏った一人の若者だった。年齢は19歳。整った顔立ちにしても、その表情には苛立ちが見え隠れている。彼は自信満々に言い放った。


「ここが噂のスライムダンジョンかよ。Dランク冒険者を倒したって? ハッ、所詮スライムじゃねえな。俺の反転聖剣アポカリプスの試し切りには、丁度いい相手だぜ!」


若者はそう言い放ち、背中に背負っていた黒い剣を抜き放つ。その剣は、神聖な光を放つと同時に、禍々しい闇を纏っており、見る者を不安にさせる異様な雰囲気を醸し出していた。


アースは警戒心を露わにした。「反転聖剣……アポカリプスか」


「行くぜ! スライムども! まずは手加減なしで、『聖剣閃光』だ!」


若者は剣を高く掲げ、神聖な光で包み込むと、一気にスライムナイトに斬りかかった。


スライムナイトは、咄嗟に剣で防御するが、アポカリプスの圧倒的なパワーに押し負け、吹き飛ばされてしまった。


「なっ……!? こいつ、強い……!」


アースは驚愕した。この一撃でスライムナイトがここまでダメージを受けるとは、想像もしていなかった。


「どうした? もう終わりか? スライムって、こんなもんかよ? なら次は、『闇影絶刃』だ!」


若者は剣に闇の力を宿し、スライムアサシンに襲い掛かった。


スライムアサシンは素早い動きで攻撃を回避しようとしたが、アポカリプスの闇のオーラに包まれ、まるで影に引きずり込まれるように消えてしまった。


「アサシン……!」


エミリーは絶望的な叫びを上げた。アースも、スライムアサシンの瞬間消失にショックを受ける。


「ふん、雑魚は消えたか。だが、ボスはまだ残っているようだな。次は、お前だ! 『聖撃』!」


若者はアポカリプスを構え、スライムクイーンに向けて、手のひらから聖なる光を放出した。その神聖な奔流は、スライムクイーンの体を直接攻撃し、内部から破壊しようとする。


「まずい……! クイーンが持たない!」


アースは焦った。このままでは、スライムクイーンも消滅してしまう。


その時、スライムクイーンは機転を利かせ、自身の体を分裂させ、聖撃の攻撃範囲から逃れた。


「ほう? 分裂して逃げるとはなかなかやるじゃねえか。だが無駄だ! 『邪結界』!」


若者はアポカリプスを構え、周囲に小さな結界を張った。半径30cmほどの空間を覆い、その中に入った者の攻撃を完璧に防ぐ。


「強固な結界……! あれを破らない限り、攻撃は通用しない!」


アースは結界の防御力に驚きつつも、諦めずに叫んだ。「クイーン! ナイト! 全力で攻撃しろ! あの結界を破るんだ!」


スライムクイーンは分裂した体から毒液を放ち、スライムナイトは剣で結界を叩きつけるが、結界は微動だにしなかった。


「無駄だ! 俺の『邪結界』は、そう簡単には破れない!」


若者は笑いながら、さらに攻撃を続けた。その瞬間、スライムクイーンの放出した毒液が、若者の足元に広がっていた水たまりに流れ込んだ。


「……!?」


若者の表情が一瞬にして変わった。「しまった……! 足元が……!」


毒液は水たまりを介して結界の内側に侵入し、若者の足元を蝕んでいく。


「ぐあああああああ!!」


若者は悲鳴を上げ、結界は解除された。


「今だ!」


アースは声を上げた。スライムナイトは結界が消えた隙をつき、若者に渾身の一撃を叩き込む。


「うわあああああ!!」


若者は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。そして、若者は苦しげに呻いた。


「……くそ……! まさか、こんな雑魚に……!」


アースは、若者に近づき、問いかけた。「お前は一体何者だ? なぜ、こんなことをする?」


「……俺は、神聖騎士団の試験に落ちた落ちこぼれだ。神聖騎士団の象徴である聖なるオーラを纏っているのはそのためだ。アポカリプスは、その試験の腹いせに盗んだ。噂のダンジョンで試し切りでもして、鬱憤を晴らそうと思っただけだ……」


若者は、自暴自棄になりながらすべてを語った。


アースは驚きを隠しきれずにいた。「神聖騎士団……! そんな奴らがいるのか……!」


その時、アースは周囲を見渡した。消滅したと思ったスライムアサシンの姿が、再び現れた。


「アサシン、再生したのか!」


スライムアサシンは、死の直後から短い時間で復活していた。新たな体を持ち、まるで生まれ変わったかのように鮮やかに動き出す。


「戻ったよ、アース。何を命じる?」


アースは、再生したスライムアサシンに目を向けた。「……もういい。あいつを殺せ」


再生したスライムアサシンは、若者に近づいていく。


「ひっ……! 助けてくれ……! 殺さないでくれ……!」


若者は醜く命乞いをした。しかし、スライムアサシンの手は止まらなかった。


「言い訳は無駄だ。覚悟しろ!」


スライムアサシンは、若者の首を容赦なく切り落とした。


若者の体から聖なるオーラが消え、残されたのはただの死体だった。再生したスライムアサシンは、全てを終わらせた満足感を漂わせていた。


アースは、若者の死体を見下ろし、神聖騎士団の脅威を改めて痛感する。「クソガキでも、これほどの力を持っているのか……。神聖騎士団は、一体どれほど強いんだ……!」


そして決意を新たにした。今後の戦いに備え、自らとスライムたちを強化しなければならないと心に誓った。

明日からは15時と17時に投稿します


あとこれで完結まで半分くらいですね

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