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St.ベイべー19



ち、地上に着いたモヨウです…


膝ががくがくでやっとこさ立ちましたよ。ええ。


グェホゲウェホ。


広い窓から見えるのは土煙の向こうに立つ人の影。


あ、隣の部屋から三人出てきました!


え、その。


あ…


人影が一瞬ゆらいだかと思うとバタバタと倒されました。


瞬殺ですね。


…さすがユリウスです。


鼻水と涙まみれになった私を優雅にユリウスが待ち構えています。いいですね。いっつも余裕で…。

死なないと分かっていても死にそうでしたよ!

心臓に悪いのでもうアトラクション的なお仕置きはしないでください…トホホ。



ユリウスが私を見ながら、顎に手をやっています。はあ。美男子は様になりますね。




キラン

 


ん…?


その左手に輝くのはもしや…


すぐさまポケットに手を入れる…。な、ない…。



「私も用意していたんだが…。こちらの方が似合うな。」



この上なく上機嫌のユリウスがそう言って私の左手を取った。


「ユキ…。私の生涯の伴侶となれ。」


「はい?」


そう言うとユリウスは私が内緒で用意していた指輪を私の指にも沈めた。



人が用意した指輪で偉そうだな、オイ。口に出してはいえないけど(モチロン怖いから)



この日の為に。

プロポーズも済し崩しに魔界に嫁ぐことになるかと考えて用意していたペアの指輪。

裏の文字は「Amour eternel」永遠の愛。日付とYtoYの文字を足したら文字が小さすぎて魔界の技術では彫れなかったのでクワタンに頼んで人間界で注文しました。

埋め込んだ石は魔界で守り石として有名なブラックダイヤモンドに似た石。小さいですがアルダママが取り寄せてくれた一級品です。ユリウスに逆プロポーズする予定だったんですが…。



今のは!?


プロポーズでいいの?



「あ、あのね、ユリウス。私、ユリウスが大好き。これからも一緒にいたい。選んでくれた白いドレスもちょっとしたアクシデントがあってまだ着れて無いだけなんだよ。きょう着るのをとっても楽しみにしてたんだ…。」


「詳しい事情はこいつに聞いた。」


ユリウスが瓶に詰められた震える黄金のクワガタを見せてくれる。…そこにホルマリンを注いでしまいましょうかね?ご主人様をほっといてナンパに励むイケナイ子には。まあ、ユリウスにガタガタいわされているようですから私からのお仕置きはいらないでしょうが。


「ユキ…。」


ユリウスは私を腕に囲うとくすりと笑って額にキスをひとつ。


見上げる私はユリウスの漆黒の瞳に吸い込まれそう。ああ。私ってばめちゃくちゃこの人のこと好きかも。二晩ほど離れているだけでも寂しかった。寂しかったよう。せっかく今朝会えたのに怒ってて…悲しかった。


ユリウスの腰に手を回してそっと抱きつく。



「愛してる。」



ユリウスがそう言っていつもの甘い唇が落ちてきた。



め、



め、




め、メテオ~~~~!!!!


おお~~っ!!!


隊長!隕石が衝突したであります!


ユキの脳みその平原が一瞬にして真っ白に!


だ、だれか、



い、今の!



録画して~~~~~っ!!



エンドレス再生して~~~っ!



プツン……。



目をひん剥いたままユリウスにキスされた私の思考回路はショートしました。




~~~~~



PM1:00



「ゆきちゃん…。」


会場に戻ってくると最新話題作の映画を見せられながら昼食を食べ終わった。皆が待っていた。


「お色直しで二時間ってあやしいなぁ~。なにしてたのよぅ」


詰め寄られても恵ちゃん…。

いじわるユリウス…。気絶している間に首と胸ににキスマークつけてるし。カッパ姿のままの方が目立たなかったかも。しくしく。


皆、誤解してるよう。うう。


恥じらいも無く堂々と私を膝に乗せてご満悦のユリウス。ここは魔界か?


上機嫌過ぎると逆に怖い…。


てられて吐き気がしそう…。」


後ろから頭や髪にキスされまくってますからね…。未来ちゃんがそう言うのも無理も無いです。

どうしてこうアウトオブ眼中できるのでしょう。恐るべし魔界人…。


ひな壇から会場を見る。


みんなニコニコ。


誘拐現場から帰ってきてテオくんを渡すと金髪ママが泣いてお礼を言ってくれた。ボンバーな胸を押し付けられて窒息しそうでしたがね。クレーメンスの会長さんも…。藤代一家からも頭を下げられてちょっと困った。…助けたのはユリウスだしさ。


控え室でユリウスが言った。


「ユキ。藤代はリコールくらいでは揺らぎはしない。爺さんは悠里を跡取りに考えているから今日のパーティを利用して悠里の顔を売りたかっただけだ。…私の人間界の家族は優秀でな。父はおっとりして見えてやり手だし、母の手腕はこのパーティをつつがなく進めているだけでも分かるだろう?太一は短気だがいい男だし、高貴は技術派で大貴と桜ははセンスがいい。このスーツも選んで貰ったものだ…似合っているだろう?」


ふふ。とユリウスは少し笑うと目を伏せた。


「私は人間界に弱みを残していけない。執着してはいけないのだ。それが私ができる恩返しでもある。」


私が良子ちゃんを想うようにユリウス…悠里クンも家族を大切に想っていたんだね。きっと身を焦がすほど欲しかった家族像が転生後に有ったに違いない。結局、魔界を選んだユリウスが人間界の大切な家族を守る方法はこれしかなかったんだ。


「ユリウス。私がユリウスに家族を作ってあげる。アルダママが先見をしてくれたの。一番目と二番目は女の子で後は男の子二人だって。」


驚き顔のユリウスが私を見る。これがなんだか快感かも。


「ふふ。ユキはよほど獣王に気に入られたらしい。」


「え?」


「アルダが大事ならもう先見はさせるな。寿命が縮むからな。」


「……。」


…聞いてちょっと青ざめちゃった。



PM4:00


そろそろパーティもお開きです。本当は6時までって皆には言ってますがね。私とユリウスを深く知る人物が沢山揃うのでここで記憶を消す魔法を施すことになっています。


「準備はよろしいですか?」


サモンさんがやってきた。ユリウスの顔を見て私は頷く。


「こちらをご覧下さい。」


そう、サモンさんの声が会場に響く。


大きなスクリーンに光が反射している。皆が光に包まれた。


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