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St.ベイべー17

大盛り上がりの会場の雰囲気を他所よそに私の心は津軽海峡冬景色。

ええ、木枯らしふいてます。

隣から冷気が漏れてますし…てか寒いです、凍りますその作り笑顔。


なんとか誤解を解かないといけないんだけど、次から次へと誰かが挨拶に来てくれちゃうし…。


クワタン!早く戻ってきて!


愁子め!上手いことイモムー連れてっちゃうし!食べられてしまえ!丸呑みだ!丸呑み!


「お、お手洗いに!!」


金色の影を素早く見つけた私が思わず声を上げる。仕方なくユリウスが腕を緩める…


「5分だけだ」


耳打ちされるのは甘い言葉ではない…ひえ~。こわい、怖いよう!


きっと私が人間界に未練たらたらで何とかあがいてるって思ってるよね?


とにかく!大事なドレスを奪還しなくては!!


今日という今日は許しませんよ!美咲ちゃん!!



~~~~~



会場外のクワタンと合流です。事のあらましをクワタンに説明して…


「あの女。性懲りもなく…。やっぱりあのまま外国にでも飛ばせしておけば…。」


「え!?ちょ、クワタン?もしかして美咲ちゃんになんかしたの?」


「…い、いや?」


この~判りやすいリアクションクワガタめ!


「言わないと今夜のブラシ掃除無しにしますよ?」


「う。」


知ってるんですよ!毎晩のお手入れブラシを楽しみにしているの!高級ソフト歯ブラシですからね!


「わ、わかった!わかったよ。あの女、姫さんにちょっかいばっかりかけようとするから阻止しただけだよ。ほんと、それだけ!だって、悪質なんだぜ?姫さんを危ない奴らに襲わせようとしたり…。」


む、むむう。今回ばかりは怒っていいですかね!!


「クワタン…ありがと。最近傍に居なかったのはそのせいだったんだね。女の子のお尻ばっか追っかけてるって思ってた私を許して。」



「ひでっ!!」




…とにかくクワタンに血を与えて美咲ちゃんと持って行ったと予想されるドレスのありかを調べてもらうことにした。席に戻るとユリウスが私の腕を拘束する…だから、誤解ですってば…くすん。周りの人は「ラブラブだね~。」とか暢気なこといってますが私は後が恐ろしいです。




AM11:00


間も無く金色のクワガタが帰ってきた。うん。仕事が速いね~!よし、よし。


「お、お腹の調子が…。」


ユリウスが右眉をちょこっと上げて私を見る。ええ、演技しなくても青い顔でしょうよ!

まさか乙女にそこでしろとも言えないでしょうし、しぶしぶですがしばしの間、開放です。

…きっと遅くなったら膝召還するに違いない。人目があろうと今日は関係ないだろうし。


「クワタン!どうだった?」


「会場の外のゴミ箱に袋に入れて捨ててあった。まったく。あの女は会場の後ろでお前の様子窺ってたぜ。」


「……。クワタン。私は猛烈に怒っています。」


「当たり前だろ!いっそのことユリウスに言っちまえばよかったんだよ!ま、一瞬で消されるな。」


ええ。日本列島もろとも。


「人型になっていいですから、ちょっと呼び出してくれません?」


「え、いいの!?やたっ!」


「早く行ってください!」


その無駄な美貌使って誘い出してください!


新たに私の血を吸うと金髪の美男子登場。まったく、クレーメンス関係者が会場にいるお陰でイモムーもクワタンも浮かなくて助かりますよ。




ノコノコと美男子に釣られて美咲ちゃんが控え室にやってきた。


「何!?なんなの?あなたたち知り合いなの?」


「今まで知らん顔してあげてたのに。」


私の登場で頬を染めていた美咲ちゃんが瞬時に固まる。


「な、なんのこと?」


「調べはついてるぜ?この紙袋もあんたのだろ?」


クワタンが美咲ちゃんに詰め寄る。


「な、なんでいつもあんたばっかり!間嶋くんも悠里くんも!そこのあなただって騙されてるだけよ!この女はねぇ!犯罪者の娘なんだから!」


?間嶋?ああ。あの中学校のときの変態ストーカー!


「私の親がどうでも美咲ちゃんには関係ないでしょ!誰だって色々あるんだよ!辿っていって祖先の罪まで皆かぶんなきゃいけないの?バカらしい!だいたい私がなんかしたっていうんですか!なんで意地悪するの!意味わかんないよ!」


「いつだって私の欲しいものはゆきちゃんが攫っていくじゃない!ずるいのよぅ!私のほうがかわいいのに!高校だってゆきちゃんだけ受かってるし!」


「…それって逆恨みって言うんです。ここで言い争ってもしょうがないので長年の恨み晴らさせていただきますよ!」



バチン!


女の子だから平手ですよ!平手!美咲ちゃんが男の子だったら確実にぐーですからね!

それでも一応効いたのか頬を押さえながら美咲ちゃんが涙をためている。でも、同情なんかしませんよ?自業自得です。


「いいですか!?今後私に何かしようものなら全力で立ち向かいますからね。もう、見てみぬ振りなんてしてあげないですよ!わかったら早々に立ち去ってください!」


…もっと早くこうしていれば良かったのかもしれません。美咲ちゃんを増長させてたのは私かもしれませんからね。悔しそうに立ち去る美咲ちゃんの背中をみてそんなことを思ってしまいました。ふう。


さて、時間がないです。早く席に戻らないと!

ドレスに着替えて…ユリウスの機嫌を直さないと!


廊下を急いでいると後ろからタックルされた。


…当然私は顔からこけた。


き、金髪妖怪子泣き爺~~~~~!!!


痛い!痛いってば!


「~~~~~!!!!!」


だから!興奮し過ぎだっての!落ち着いてよ!テオくん!


なんとか体を反転させてテオくんを抱っこすると体が中に浮いた。


え!?


なに?この太い腕!


ちょ、ちょっと…。


何かを嗅がされて意識が遠のいていく中、テオくんと車に押し込められる…。


これって…


誘拐…?

注:クワガタ虫は間接などにダニがよくつくのでたまに歯ブラシなどでブラッシングしてあげることがあります。けっこうゴシゴシしても平気です。

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