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St.ベイべー11

「ユキが呼びたいだけ呼んだらいい。」


隣でお約束の恋人つなぎして、つまらなさそうに窓の外を見ている悠里クン。


「 ……。」


ニコニコと名前と住所を書く表を私に差し出すのはホテルのプランナーさん。え~名刺には本田さんと書いてあります。


「悠里はお友達少ないものねえ。なにこれ、牛込くんと熊谷くんの二人?しかも苗字しか書いてないし…もう、お母さんが適当に呼ぶわよ?」


残念そうに言うあかりさん。


「え、と。」


このホテルって外国の首相も泊まるトコですよね…。放課後にあかりさんに軽く拉致されて打ち合わせと連れて来られたのは明らかにVIPルームで担当のプランナーさんが支配人さんとこちらの話を伺っている…。


「お嬢様のお友達は何名くらいで?」


いえいえ、お嬢様なんて呼ばれる者じゃないのですよ、本田さん。隣の人たちと一緒にしないで下さい。


「ご衣裳は何回くらいチェンジされますか?」


は?


「最低2回はしたいわよねぇ。」


あかりさんがウンウン頷いている。ご衣裳なんて持ってませんよ!魔界のドレスは素敵だけどゴスロリ過ぎて人間界こっちでは確実に皆が引きますし!だいたいお誕生日会でお色直しなんて聞いたことありません!


ええ、安易に承諾したわたしが悪うございました…


ユリウスも昨晩「いいのか?」って言ってましたし。さっきなんてあかりさんが「ビンゴの景品うちの車でいいかな?」って聞いてくるし…。高校生が車なんて要りません!


世界のFUJISIRO舐めてましたよ!ペロペロ!


…招待客って言っても私も良子ちゃんと未来ちゃん?愁子ちゃんを取り合っても悠里くんと並ぶほどのリストになりそうなんですが…。クラスの皆とか来てくれるかなあ。




「悠里。ゆきちゃんにドレス買ってあげていい?」


「…。ユキのものは俺が買う。」


…い、今のは幻聴でしょうか?悠里クンお小遣いで買うつもり?


「一枚だけ!一枚だけお祝いに着物!」


「…選ぶだけだ。」


悠里クンはあかり母に譲る気はないらしい。私としてもあかり母に買ってもらうのは気が引けるし、悠里クンに買ってもらうほうがいいけど…。ユリウスと違って悠里クンは学生でしょ?いくらなんでも悪いよ…。


「プレゼントはうれしいけど、着物もドレスも要らないです…。衣装チェンジは無しで…。」


一着くらいなら今の良子ちゃんに頼めばポーンとよそ行き服買ってくれるはず。


「…。もしかしてゆきちゃん、悠里のお金の心配してるの?…健気…。ああ、なんていい子なのかしら!買ってくれるんだったら黙って買ってもらえばいいのに!」


一瞬あかりさんが私を抱き寄せようとしたけど悠里クンに阻まれた。


「…ちょっとくらいいでしょ!ケチ悠里。ゆきちゃん、この子はねぇ。12歳の時からお年玉で株を始めて今ではちょっとしたグループ傘下の株主さんなの。名前は太一が貸してあげてるんだけどね。だから、私よりもお小遣い多いのよ?」



にっこりと笑うあかり母。




…魔王様恐るべし…。





それから尻込みする私を引きずる様にホテルの階にあるブティックに連れ込むあかりさん…。



「早速着てくれないかな!本当は作ってあげたいけどそういうのはウザイって桜に言われてるから…。モチロンサイズ直しはバッチリするからね!」


並べられた数十枚のドレス…。


む、無理無理無理無理無理!


「これ。」


ドレスを目の前に蒼白となった私に悠里クンが指差した。


オフホワイトの膝丈のワンピース。全身に同色で繊細なビーズ刺繍が施されている。派手すぎず、綺麗。


え、と。あの。もしかして!?


もしかして!


ユリウスが選んでくれたの?


うそ!


恋人みたい!!


「着て見て。」


ええ!ええ!着ますとも!

過度のスキンシップは毎日なれど、こういう恋人扱いは皆無なんですよ!私たち!デートもまともにしたことないし!映画館何ぞ行ったら暗闇に任せて何されるかわかんないし、遊園地なんて行ってくれそうにもないし、そもそも魔界仕事も沢山あるのに私のために時間を割いて人間界に来てくれてるから誘えないし!


「似合ってる。」


試着室から出てきた私にユリウスが言う。続けて長い指で私の顔にかかっていた髪をひと房掴むと耳にかけながら「脱がせたいくらい…。」と囁かれた。当然私は卒倒しそうで…ああ、倒れなかった私を褒めてやりたい。



…魔王様恐るべし。




悠里クン…ユリウスはストールと靴(これまたおそろいのローヒールでかわいいのだ!)それに合わせて髪留めも買ってくれた。もう一枚とあかりさんに勧められたけど、ユリウスが選んでくれたうれしさで私の胸が一杯になってしまった。


よっ!プラチナカード一括払い!





大事にするからね。




~~~~~



そうこうしているうちに誕生日が近づいてくる。


お誕生日会にはクラスの皆がこぞって来てくれることになった。


良子ちゃんは家を売ろうか考えたらしいがまさかの保険(ヒドイ)といっておばあちゃんがくれたこの家は残すことにした。まあ、クレジット上限まで使って魔界に逃げるってのは留まってくれて良かった。いくらなんでも犯罪だし…。


そして、お誕生日会まで1週間と迫ったその日の朝。


私は生活指導室に呼ばれることとなった。


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