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St.ベイべー10

いつまでも逃げてちゃいけない。


私の場合は好きな人の腕を掴むには片手じゃ駄目。良子ちゃんや今の生活を手放して両手で掴まないと…。


人を好きになるって不思議。好きになればなるほど怖くなる。


ずっと傍にいたい…ユリウス。


こんな私に命を惜しげなく預けてくれている。いつでも私を守ってくれる大切な人。


でも、守られてばかりじゃ嫌なの。


だから、強くなりたい。



強くなりたいの。





その夜。決死の覚悟で良子ちゃんに告白した。



「…と言うことでお嫁にいきます。」


食卓のお向かいに座った良子ちゃんが瞬きを忘れて私を見ている。ドライアイになっちゃうよ?


「…いくらなんでもゆきちゃん…。」


そうだよね。イキナリ信じろって言うほうが可笑しいよ。


「17歳では早すぎるんじゃない?」


!!そこか!!


「え、良子ちゃん信じたの?」


「悠里くんが魔王様だって?うん。なんか、只者じゃないんだもん、あの子。それに、ゆきちゃんの想像力そんなに豊かじゃないし。」


…恐るべし。


「でも、孫見るのが夢だしな。私も行っちゃだめかな?」


「へっ!?人間界には二度と帰れないんだよ?」


「だってぇ。私の楽しみ、ゆきちゃんだけなのに。魔王様ってお金持ちなんでしょ?一人くらい増えたって大丈夫でしょ。義理の母くらい養ってくれなきゃ。聞くだけ聞いてみてよ。そのほうがゆきちゃんも心強いでしょ?」


「……うん。」


なんだかえらいことになって来ました…。


あれよあれよでユリウスからも承諾をとって、私は親子で魔界入り…。いいのかな?

でも、今まで(人間界の)人に相談できなくて辛かった分、気持ちが楽になって、私の気持ちは急浮上した。ええ、ナンとでも言ってください。そういうのって大事じゃないですか!





~~~~~~~~




「ゆきちゃん!こっち!気に入ったのがあれば買っちゃいな!ええい!値札なんか見るんじゃないの!」


私が見ていた髪留めを奪い取ってレジに行くよしこちゃん。


いつもウィンドウショッピングが基本だったのでイキナリなんでも買ってくれるって言われても長年染み付いた貧乏性がそうはさせてくれないんですよ!


今まで私の学費にとコツコツ貯めていたお金を使い果たす勢いで買い物三昧。ひょえ~!!我が母ながら思い切りが良すぎます…ドキドキ…。ああ、知覚過敏の歯磨き粉を在るだけカートに入れてる…サモンさんに言えば魔界でも作ってくれるのに…。昨日も尋常じゃないほどの味噌と梅干を…。


「ねえ、ゆきちゃん。人間界に返される事があっても慰謝料ぐらいはポーンとでるよね?」


「なっ!大金使って不安になったからって不吉なこと言わないで下さいよ!も~!」


気にしているデリケートな問題なのにぃ!


だいたい今日発覚したこと多すぎるんですけど!?


旧ソビエト連邦の書記長の名前だって言ってたのが高級チョコレートの名前だったり…


仕事明けに良子ちゃんがいつも食べてる蟹の缶詰が四千円もしてた事とか…


もう、怒ったって仕方ないんだけどね!コラ!




「ねえねえ、こういうの買っといたら?やっぱり白かな?悠里くんっていきなり赤とかオッケーな人?」


「え、なんですか?」


振り向くと白のレース付きのとスケスケ真っ赤な下着を差し出す良子ちゃん。


だ~~~!!!


私の愛用はグン〇のへそまでパンツです!そんな面積少ないのはおなか壊しますよ!


「知ってるんですよ!良子ちゃんが私のお手製下着をこっそり捨てたの!駄目じゃないですか!」


「ゆきちゃん。あんなキモいドラ〇もんの書かれた下着付けてたら呪われるわよ、間違えなく…。」


呪われるとは失礼な!


「下着はグン〇が一番です!」


私がそう言うと


「…悠里くんはそういう方がムラムラするタイプなのかな…。」


フムフムと勝手に納得する良子ちゃん…もう、知らない!


…後々聞くと良子ちゃんは最近恋人に振られたそうで(ほんとはコソコソ編集さんと付き合ってるの知ってましたけどね)渡りに船で私の魔界行きに乗ったらしい。て、なんていうか投げやりな感じもしますが。


「よし、帰りはヒルズで食事して帰るぞ!」


「ヤタ~~!!」


右手の握りコブシが輝いて見えます!良子ちゃん!


散財バンザイ!!


とまあ、私達が買い物していると一本の電話が。思わず正座したくなる人からだった。



「もしもし、ゆきちゃん?私、あかりです。悠里に聞いたのだけど悠里とゆきちゃんって誕生日が同じなんだってね!で、相談なんだけど、悠里のも兼ねて悪いんだけど一緒にお誕生日会してもらえないかしら?悠里のお誕生日会っていつも断られてちゃんとしたことないのよ。」


魔王さまはお誕生日会はお嫌いらしい。顔を見合わせると良子ちゃんがウンウン頷いていた。…良子ちゃんはそういうのが大好きだもんね。


「いいですよ。一緒に祝ってもらえたらうれしいです。」


人間界最後の日にふさわしいかもしれないなあ。


そんなこと思いながら返事をした。



…だって、お誕生日会ってささやかな響きだったんだもん。


その電話の後、一流ホテルの会場が貸しきられ、「ご婚約おめでとう」の垂れ幕も注文されていた事を私は知る由もなかった。





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