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St.ベイべー6


それから数日は何事も無く過ぎた。


美咲ちゃんが藤代さんに何か言うかもしれないけど、本当のことなら私のどうすることでもないし、ユリウスが私の素性を知ったところで関心も無いだろうから放っておく事にした。藤代さんには避けられるかも知れないけど、そうなるのは悲しいけど、最初から分かっていたことだし、私が好きなのはユリウスだから。


美咲ちゃん…良子ちゃんのお兄さんのひとり娘。


湖山病院のお嬢様だ。


中学の時に良子ちゃんが過労で倒れて入院したときに初めて会った。

どうしてあんなに恵まれた人が私を気にするのかまったく理解できないけど、初めて会ったときから私はとっても嫌われていた。実際、出会った次の日には学校で「犯罪者の娘」とうわさが流れていた。まあ確かに犯罪近いことはしていただろうけど、あの男は刺されたのだから「被害者の娘」が本当は妥当だと思うんだけど。…そのおかげか私の周りには未来ちゃん以外近づく人がいなくなった。


「湖山美咲とは知り合いか?」


「へ!?」


夜、ベットに入ってくるユリウスが突然私に言った。


「知り合いというか、親戚です。従妹。…むこうは認めたくないらしいですけど。」


「同じ湖山なら私のほうがお得だと言っていたぞ。」


「…。」


美咲ちゃんが言いそうなことです。


「ユリウスはそれで、どうなんですか?お得なほうがいいですか?」


「突っかかるな、ユキ…。聞いたことをそのまま言ったまでだ。嫉妬してもらうのはうれしいが、あいにく私はユキしかいらん。お前に危害を加えるようなら考えねばならんと思ったからだ。」


「…。関わらなければ大丈夫ですよ。…それより、クワタンをそろそろ箱から出してもいいかな?」


「もう人型にするなよ。まったく、節操ないからな。少しは懲りただろうな。」


先の一件で嘘つき呼ばわれしてそのまま数日帰ってこなかったクワタンだったが、人型に一日戻すという約束でひとまず納得して帰ってきた。本当は家出中も窓辺で私を伺っていたのも知っているのだが、かわいかったので黙っておいた。「クワタンは家族なのに…。」と泣いた振りをしたら次の朝さっそく帰ってきてくれた。ただ、その約束がまずかった。以前の「フォルス」の姿に戻すと速攻、城内で3人、北の森で6人とメイキンラヴして帰ってきてしまった。まあ、同意の上で「食事ぬき」のお楽しみだったのでその時はユリウスも渋々許してくれたのだが、味をしめたクワタンが何だかんだと私を騙しては人型になって悪さ(ナンパ)をしたのでここ数ヶ月はユリウスに鍵つきの箱に入れられていたのだ。


「夜中にうめき声出してるじゃないですか…。知ってるくせに。」


いい加減、横に置いているイモムーが怯えているんです。「姫様眠れません。」って。


「まあ、いいだろう。人間界で守ってもらえ。」


そういってユリウスが鍵をだしてくれた。わたしが受け取ろうとするとヒョイッと鍵を上げて取らせてくれない。


むぅ。


ガバッと鍵目当てに飛びつくと待ってましたとユリウスに抱きしめられた。




「…ユキはユキであれば良い。お前のすべてが愛しいのだ。」



耳元でユリウスが言う。ユリウスの心地よい体温を求めて私は腕を伸ばして抱きしめ返した。



…どうして私の欲しい言葉を知ってるのかな。敵わないなぁ…。



ポンポンと頭を軽く叩いたユリウスが私を抱えたまま当たり前のように横たわる。



単純な私は安心したのか…



その日は悪い夢は見なかった。




*****




オリエンテーションの前日にリラさんにカメの衣装をもらった。

ひとつは私のピンクのリボンつき。ひとつは愁子ちゃんの水色のリボンつき。


「ありがとうごさいます!リラさん!」


事前に侍女長のコルネさんから、普段は針仕事は任せているリラさんが自ら時間外に作っていたと聞いていた。きっと無理してがんばってくれたに違いない…。


「着てみてください!姫様!」


リラさんとイモムー(人型)の前でいそいそと袖を通す。


あれ?


カメって水かきあったっけ?


顔になる部分のフードをかぶる…。


頭の部分にスパンコールがびっちりと…。


仕上げに黄色のくちばし??



鏡にうつるそれは、どう見ても…







カッパだった。



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