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St.ベイべー2

あれよあれよと黒塗りの車に押し込められて高級住宅地に到着…。

門から家までがなにやら遠くありませんかってお家に連れられて来られてしまいました。

そして、私の目の前には……。


多分、あれが藤代母…。でもあとの4人は?

10の瞳が私を見据えている。い、息が苦しいです。

取り合えず自己紹介を…


「え、と、初めまして。湖山ゆきれ…ぅ。」


イタッ!!

わわ、し、舌かんじゃった!!ウ八ツ涙でそう。


「ユキ、あんまり緊張するな。…舌を噛んだのか?見せてみろ。」


ユリウス…悠里クンが口の中を覗くために長い指で私の顎を引く…

いつもだったら「舐めたら治る」とか何とか言われてそのまま濃厚なキスが…


わ~~~~~っ!!!!!


駄目駄目駄目!!!!


力いっぱい悠里クンを引き離すと心底不満げな顔が目の前に…。


いま、絶対キスしようとしてたでしょ!!


「だ、大丈夫だから…。」


こんなにギャラリーいるんですよ!ここは魔界じゃないんです!いつも思ってたんですが少しは周り気にしてください!ダイタイいつもアウトオブ眼中過ぎます!!ハアハア。




なんだかさっきよりも視線が痛くなっています。

皆さん、私をガン見です。固まってます。フリーズ状態です。

私、帰っちゃいけないでしょうか…。くすん。



「で、どうして兄貴たちまでここにいるの?仕事は?」


おお、ユリウスの高校生口調が新鮮です。


我に返った悠里母が口を開いた。


「ああ、私は一人で会うつもりだったのよ?でも、バレちゃって。あ、ゆきちゃん。初めまして。私は悠里の母のあかりです。で、こっちから長男の太一、次男の高貴と三男の大貴、最後が長女の桜。悠里のお兄ちゃんお姉ちゃんです。」


にっこり。


母は笑うと悠里クンと似ています。うう、皆さんの視線で息が出来そうもありませんが。


「だから、なんで勢ぞろいなんだよ。」


不満げに悠里クンがいう。


「そりゃあ、なあ。」


「ねえ。」


「うんうん。」


皆さん頷きあっています…。


「ごめんね、ゆきちゃん。悠里の未来のお嫁さんには会っておかないとって、みんなが。」


ブーッ


緊張で乾いた喉を潤したところ噴出しちゃいましたよ!ゲホゲホ。


お、お嫁さんは飛躍しすぎです!


あ~~もう、また悠里クンが過保護に背中をさするではないですか!


すると…


「プーッ!なにあれ、母さん、アレが悠里??信じられないよ!」


「あはははは。ゆきちゃん可愛すぎ!」


「はあ~。会社サボってきてよかった~。」


「お父さんにバレないようにしてよ。飛んできちゃうから。太一は会議があるんでしょ?」


「わ、やべぇ。俺、行くわ。ゆきちゃん、またね!」


スーツ姿の長男退場。太一さんは悠里クンとあんまり似ていない。少し茶色がかったくせ毛で背が高くとっても優しそうな人だ。高貴さんと大貴さんは…双子だな。この2人は目元が似ている。


「俺と大貴はK大の4回生なんだ。よろしくゆきちゃん。」


「よろしくね!」


4男1女…。残るお姉さんは…。


「私はM女子大の2回生なんだよ!はあ~。悠里が選んだだけあるわ。なんて可愛いの!私、妹欲しかったんだぁ~。よろしくね、ゆきちゃん。」


「よ、よろしくです。」


藤代家の皆さんは美男美女揃いでとってもいい人たちだった。あの藤代グループの本家だというのにツンケンしたところもなく、私を悠里クンの彼女として受け入れてくれているようだった。 私の素性も知らないのに「悠里が選んだのなら間違いない」といって喜んでいた。少し場慣れしてきた頃にお父さんが帰ってきて夕飯にお鍋をご馳走になった。


連れてこられた黒塗りの車で悠里クンが家まで送ってくれた。


「じゃあ。」


「うん。ご馳走様でした。また。」


後でね。ユリウス。


チュッ


で、で、デコチュウしなくたって!

軽く手を振って悠里クンが去っていった…。




ああ、疲れた。




「よ・し・こちゃ~ん、ゆきが帰りましたよ!」


家に入ると台所の電気がついていて良子ちゃんがテーブルにうつぶせて眠っていた。


…。


賑やかだった藤代家。


良子ちゃんは一人で晩御飯食べたのかな。


楽しかった分なんだかいっそう寂しく感じた。


わたしがいなくなったら…。



…。



…その日はユリウスに断りを入れてから良子ちゃんのベットで眠った。



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