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St.ベイべー1<人間界編>

さてはてどうなる事やら。

タンバリンを片手にカラオケやさんの一室でたたずむ魔王様…



あ、ありえん。


その横顔からは何の表情も伺えない。


みんなが代わる代わる歌う中、持っているタンバリンを動かすでもなく、マイクを握ることもなく、ただ、恋人つなぎした指で私の手の甲をくすぐっている。



どうしてこうなったかというと先日我が親友未来ちゃんに「彼氏」ができた(正確には彼氏になったといった方が正しいのかも)と報告したことが発端で。

彼女の強いご要望で「ゆきちゃんの彼氏のお友達と合コン!」となって…

日頃お世話になりまくりの私が断れるわけもなく、ユリウスに試しに「お願い」してみれば、何と「いいだろう」と鶴の一声でメンバーが集められ、今に至るわけです。ハイ。


メンバーは未来ちゃん、愁子ちゃん、私。

牛込千宗うしごめちひろクン…茶髪のチャラ男風

熊谷正樹くまがいまさきクン…色白眼鏡

藤代悠里ふじしろゆうりクン…ユリウスだ。


私は彼氏持ち、愁子ちゃんは男。実質未来ちゃん頑張れ!な状況なのですが、「愁子ちゃんに持ってかれそう…」とつぶやく未来ちゃんの為に愁子ちゃんに色々吹きこんでおいたから大丈夫です!

初っぱなから「おふくろさん」を熱唱して男子に引かれています!

後が怖いけど考えない!考えない!いい仕事しました!ふう~。



ああ、しかしユリウスに「お願い」するとろくなことがないというのも事実…

夜が来るのが怖い…。

最近、なんだかユリウスがエロイのだ…

寝るときだってなにげに胸を揉んでみたりとか…

サモンさんはあと1ヶ月は大丈夫だって言ってたけど…。


はあぁ。


いや、別に恋人同士なんだからソウイウことするのは普通かもしれませんよ?でもねぇ。ちょっと気にかかることが…。


「ゆきちゃん、歌う?」


分厚い曲の本を差し出して演歌を歌い終わった未来ちゃんが清々しい顔で言う。


「あ、イヤ、そのう。」


隣の人が私が立つのも阻むので…。

いったいナニしに来たのだ…。


ちらりと隣を見上げる。


「ん~もう!熱々じゃない!そうだ、悠里クンは歌わないの?いい声だなぁ~って思ってたんだけど!」


未来ちゃん!魔王様相手にそんなこというなんて強者です!案の定愁子ちゃんの目が点に。ちなみに愁子ちゃんは悠里クンの従姉妹いとこって事になっている。



「……ユキがおねだりすればね。」


にっこり。


う。


正面の未来ちゃんは期待満面「ゆきちゃん、おねだりして!」と言っている。

…正直、興味はあります。これでユリウスが音痴だったら私にも救いようが有るってもんだけど。今更ながら、顔良し、家柄良し、頭良し…ではあまりに私と釣り合いが取れないではないですか。


…でも「おねだり」って言葉の響きが卑猥に感じるのは間違いでは無いはずデス…。うう゛。

おさまれ!私の好奇心!!!危険を回避するのだ!


「どうする?ユキ…。」


挑戦的に私を見下ろすユリウス…ああ。


「お願いします。」


ふっと笑ったユリウスはきっとみんなには王子様のように見えたに違いない。私には「ニヤリ」だけど。曲を選曲してマイクを持つユリウスにその場にいた全員が息を呑んだ。




結論からいえばユリウスの歌はとっても上手かった。

…みんながうっとりして終わったときに静まりかえるくらい。

流行のラブソングをさらっと歌い終わるとユリウスは私を見てにっこり微笑んだ。

気づいた私は我に返り、歌わせなきゃ良かったと自己嫌悪に陥った…。あうぅ。

そこでユリウスの胸が震えた。


ヴ~

ヴ~


携帯電話を取り出したユリウスが着信画面を見る。


「ちょっと電話してくる。」


そういうと部屋から退出していった。

いつもはフンと鼻を鳴らして切っているのだから大事な相手からなのだろう。


「ね、君、ゆきちゃんだっけ、悠里とどこで知り合ったの?」


ウッシー(牛込クン)がユリウスが部屋から出るのを見届けてから隣に座った。


「え、と。公園かな?」


「ナンパされたんだよね~。」


未来ちゃんもやってきた。


「うそ!すげっ!あの悠里が!!」


その声で向こうにいたクマッチ(熊谷クン)も来てしまった。愁子ちゃんは「岸壁の母」を熱唱中。いい加減気づけ。KYクンめ。


「俺と熊谷は悠里と幼なじみなんだ。昔からあんまりしゃべんない奴だったんだけど…もう、さあ。合コンって言い出すだけでも天地がひっくり返ったかと思ったのに、マイクもって歌うか~!?最近表情豊かになったし、恋するって凄いね~!はああ。」


「そうなの?だけど、彼、もてそうだね~。どうなのよ?学校では。」


あ、それは非常に気になります。魔王様のスクールライフ。ナイス質問、未来ちゃん。


「あはは。藤代であの顔でうちの学年トップだよ?もてるなんてレベルじゃないよ!けど、あの背筋も凍える微笑みですごまれるとほとんどがビビッて遠くで見てるだけになるんだ。なあ?」


「う、うん。」


「彼女できたって聞いたのも合コンの話しと一緒だったし、ほんと、ひょうでも降るんじゃないかって熊谷とビクビクしてたんだ。」


バシバシとクマッチをたたくウッシー。二人ともいい人のようだ。


「しっかし、ゆきちゃんカワイイなぁ~。お人形さんみたいだね!」


ウッシーが私の髪にふれようとした。


「死にたくなければ離れろ…。」


いつの間にか歌い終わっていた愁子ちゃんが地獄の声で言う。


キュィ~~~


マイクでこっちを指さないでください。愁子ちゃん!ビックリした!


ビクッとしたウッシーが手を引っ込めたときユリウスが帰ってきた。

眉がチョット上がって…。私とウッシーの間にスッと割って入って座る。

ウッシーを完全に無視してユリウスは私に言った。


「母親がユキに会いたいそうだ。今から行くぞ。」


は?


いま、なんて???



ワタシニホンゴワカリマセン……



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