勝手に召喚
トントンとドアが叩かれた。
ホットミルクを飲んでウトウトとしていた私がドアを開けるとそこには…
「つ、ついに目覚めたんですか!」
「あほか!何に、だ!」
女装した銀髪クン…愁子ちゃんがいた。
ユリウスが捕まって気でも狂ったか!?なぜに今その制服姿でいるのでしょう?スカート短いし。
「人間界からのルートを作ってジリルの城に侵入することにしたんだ。いちかばちかだがな。サモンが今入り込めそうな場所を探っている。私は人間界に行くからこの格好しているだけだ!」
そうですか…で、何用で?
「…その。獣王やクレオに言われて…。」
ほうほう。言われなかったら言いに来なかったと…
「ちょっと、言い過ぎた。(わるかった…)」
消え入るような小声で愁子ちゃんが言う。しかもそっぽ向いて嫌々そうに。
「…最後の方聞こえなかったのですが。」
男ならビシッと!ですよ!ほとんど聞いちゃいませんでしたが、ゆきの人生でナンバー5に入れるようなひどい罵り様だったんですからね!まさに泣きっ面にスズメバチでしたよ!
「謝っただろう?二回も言うか!!バカもの!」
「あ、バカって言った!ついでにいいますけど、バカ娘ってのもやめてくださいよ!」
「バカをバカって言ってなにが悪いんだ!バ~カ!」
むう~~~!!!
「バカって言った人がバカなんです!愁子ちゃんのほうがバカバカです!」
「!!シュウコっていうな!胸くそ悪い!このバカバカバカ娘!」
ムキ~~!!!
「バカバカバカバカバカ愁子!」
「こんのバカバカバカバカバカバカ娘め!陛下が后だなんていわなけりゃ!」
にゃにを~~!!!
「だ・か・ら!ユリウスは関係ないでしょ!」
思わず叫んだ私を見て驚いた愁子ちゃん顔が見える。
あ…
ああ! 口を押さえたってもう遅い!!
言っちゃった!!!!!
む、胸が…
熱い!!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビリビリとする体の感覚をやり過ごしたら身体に嫌な空気がまとわりついてきた。
いつもならここでユリウスのナデナデがくるのだが…
勝手に来ちゃったからか…こない。不味いときに来ちゃったから当たり前か…。
どうやら膝にはのっているようなんだけど…暗くて…。
「陛下!」
ハレ!?愁子ちゃん!?どうやら一緒に召喚された模様…。
すると…ああ、胸にもエロクワガタが…。なんというか…人間界ルート壊滅…。チ-ン…。
「ユリウス…。いるよね?」
手で探ると生暖かいものがヌルっとした。
な…に…?
やっと暗闇に目がなれて…
…
…
服のまま胸の辺りをえぐられているユリウスの周りには血だまりが広がっていた。
い、息ができない…。
こんな…ひどい…。
「…ねぇ、死んでないよね?ユリウスは死なないんだよね?」
蒼白な顔でその傷口を見つめる愁子ちゃんに声を絞り出して聞いてみる。
「ここは魔法封じされている牢獄のようだ…。が、この中では魔法が使える。」
愁子ちゃんの手が白く光りだす。ユリウスの傷を治癒しているようだ。
気を失っているだけ…。大丈夫。大丈夫だよね…。
「命は落とすことはない。しかし傷を塞いでも大量に血を失っているから、いくら陛下でも動かす事はできない。お前は陛下の傍にいろ。魔力が増幅されるからな。」
「どうしよう。私。来ちゃいけなかったんだよね。」
「……。」
さすがの愁子ちゃんも頭の中が真っ白なようだ。
「来ちまったモンはしょうがねえだろ?姫さんはあんなに頑張ってユリウスの名前を言わないようにしていたのに…こいつが悪いんだよ!」
フン、とクワタンが鼻(?)を鳴らした。
「誰が悪いのなんの言ってる場合じゃないです。これからどうしたらいいか考えなきゃ。外からの侵入は無理でも中からの脱走はできますか?クワタン?」
「中から…はな。結界石の守りならユリウスの城と同じだから多分…。」
「それなら!」
皆で逃げれば解決です!
「ちょっとまて、ユリウスやそっちの姉ちゃん連れて行くのは無理だからな!結界石の守りは魔力に敏感なんだ。しかも、この魔法封じの牢獄から出なくちゃいけねえし。今、柵の間から出れるのは俺だけだぜ。」
「ネエチャンイウナ…。」
愁子ちゃんがなんか言ったけど無視…。
「なんとか結界が破れなくちゃいけないんだよね。」
最後の手段はこれしか浮かばない…。
「あの…私がクワタンにお願い事すればなんとかなる?」
初体験がクワガタ(メス)姿で…なんてシャレにならんくらい嫌だけど、ユリウスを助けなくちゃ!
「姫さん…それは多分ユリウスが助かっても確実に俺は死ぬ…」
だ、駄目かな?
「最初の白い鳥姿で逃がしてあげるから!」
「…こんな色気のない誘われ方初めてだぜ…。そもそも結界石の結界ってのは魔力の膜みたいなもんなんだ。魔力を使っても吸収されちまう。願ったところで使うのが魔力なら駄目だろうよ。」
そうなのか。だから原始鳥は破れるのか…
鳥…鳥…鳥…
…
ポクポクポク…チーン
!
!!
そうか!その手がある!
シュウが絡むといつもこうなんです。