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大嫌い

このお話で一番残虐なシーンが出てきます。

暗くて痛いお話です。

読まずとも次へつながるかと思われますがそれでもジリル殿下に会ってくださる方はお読みください。

目の前には昔から大嫌いな男がいる。

この男のせいで僕はいつも嫌な思いをしていた。


5歳の時に父様がこの男の母親を連れてきた。1年もたたずに生まれたこの男は何もかも腹立たしい存在だった。父様は母様や僕のところに滅多にこなくなったし、それまでちやほやしていた取り巻き連中も手のひらを返した態度をとった。


魔力も、勉強も、運動も、何一つ勝てるものなどなかった。

周囲には常に比べられ、自分がいらない存在なのだと教えられた。


僕には母様しかいなかったし、母様には僕しかいなかった。


強大な魔力を持ち、その王たる威厳まで待ち合わせて生まれてきた忌々しい男のせいで。


「久しぶりだね、ユリウス。随分若くなったようだけど。」


「お前ほどではないがな。ジリル。」


まあ、以前の容姿だとお前の母親そっくりで僕の母様がおかしくなっちゃうから今の方がいいけどね。


「こんなところから僕の城に入ってくるなんてお行儀悪いね?」


「正面から来たところで入れる気はないのだろう?」


牢獄に入っているというのにこの男は堂々たる態度だ。ああ、嫌なヤツ。


「人間界に転生したのではなかったの?帰ってくるなんてね。やっぱりあの子、殺しとけば良かった。」


「…やはりテレ二アが呼び寄せの石になったんだな。城に有ったものはどうせお前が使えなくしていたのだろう?」


「あはは。相変わらず鋭いね。でも、気付いてなかったでしょ?僕の計画を知ったあの子が犠牲になってせっかく自分の心臓を呼び寄せの石にしたのに皆そろってかえらずの石でお前を人間界に飛ばしたと思ってたじゃない。かわいそうにねえ。」


祝賀式典のお祝品に紛れ込ませた「かえらずの石」を発動させた瞬間に飛び込んだんだよ、あの子。命を張って助けたっていうのに皆で犯人扱いでさぁ。あれには笑っちゃったよ。


「さあて。おしゃべりは終わり。僕ほしいものがあるんだ。」


母様の肉体を手に入れたいからね。母様は魔力のある入れ物じゃ駄目なんだもの。


「人間の女の子を連れて帰ったでしょ?魔界に。随分可愛がってるじゃない?ははは、お前がなりふりかまわず、ちっぽけな女の子のために罠に落ちたんだもんね。ちょうどいいや。母様も喜ぶよ。」


想像しただけでも愉快だな。お前のお気に入りの女の中に大嫌いな母様が入るんだよ?


「あの女の子ちょうだいよ。そしたらここから出してあげるよ?」


「…断る。」


「はあ?聞き間違いかな?それとも気でも狂ったの?」


「どうせ渡したところで約束なんて守るつもりもないんだろう。」


「…まあ、そうだねぇ。お前と交渉しても仕方ないね。これも欲しかったし。」


ヤツの胸に鋭い刃物に変えた指を突き刺してやる。ズブズブと入っていく感触はたまらないね。

肉を切りながら目的のものをとるために手首まで沈める。


「ぐぉっ…」


さすがに声は立てたみたいだけど、その目が気に入らない。


「命乞いする?まあ、心臓とっちゃえばもうお前もいらない。」


特別にゆっくりじっくり内蔵をかき回してやるよ。いつもすましたお前のゆがんだ顔をみられる日が来るなんて。ああ愉快だな。

つっこんだ穴から血がドボドボと落ちる。


けど…


「!無い!どうして?」


ヤツの口の端が微かに上がる…。ムカつく!ムカつく!ムカつく!!!


「母様!どうしよう!母様!」


母様なら何とかしてくれる!そう思ってシャツの前ボタンをはずした。

処刑されてこの場所でさらし首になっていた母様をこの身体に取り込んだけど心臓を共有するためには胸に母様をくっつけるしかなかったんだ。


「ジ…リル。ど…うした…の?」


母様眠っていたのかな?無理矢理取り込んだから1日10分ほどしか起きれないからな。早く身体を作ってあげないと…


「ユリウスが心臓を持ってきてなかったんだ。」


「……呼び寄せの石が…無いユリウスは…お前よりは…力が無い。恐れる…ことは…ない。先に…私の…肉体を…。ユリウスを…使って…交渉して…。」


「わかったよ。」


「かえらずの…石の…生成は…ウーゴ…も捕まえて…いるから…心配ない…。」


「うん。」


そうだね。殺せなくっても今度また転生させたら帰って来れないから大丈夫だものね。

きっとユリウスが大事なんだから人間の女なんてすぐに差し出すだろう。



はやく母様に抱きしめてもらいたいよ。



大好きな母様。



もうすぐだから待ってて。



僕は母様が目を閉じたのを確認してシャツのボタンを戻した。






ジリル殿下はマザコン過ぎてある姿をしています。

うう、ご拝読ありがとうございます。

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