結界石と魔界の創造
5つの結界石を用いて魔界は時の狭間に存在する。
東西南北に1つずつ、中央に1つ。
東西南北の結界石は魔界の居住空間を保つために。
中央の城にある結界石は「呼び寄せの石」と「かえらずの石」を守るために。
魔界の祖と呼ばれる7人は自らの命を石に変えてそれらの石となったという。
8人目の「王」に自分たちの未来を預けて。
歴代の魔王は心石の製法を受け継ぎ、石の守人となる。
「かえらずの石」は差別されてもなお故郷を想う人間界への執着だったのか。
「呼び寄せの石」は傷ついた魂を救う魔界への希望だったのか。
それを知るものは今はもういない。
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目の前でユリウスを救出すべく討議が行なわれている。
「私も参加します!」
「断る!」
即座に銀髪クンに断られた。ヒドイ!
好きな男ひとり助けられなくては女が廃るのだ!
「シュウ、いい加減にしろ。ユキ様、気にしないでください。」
うう、優しいな。クレオさん。
アルダさんが睨んでいる手前、私を無下にも出来ない銀髪クンは怒りの形相だ。
でも、そんなのウ〇コくらえ!です。
『突入部隊のうちウーゴだけが城へ入れたのはジリルが招き入れた可能性もあるな。』
「一分一秒も惜しい。あの女が陛下に何をしでかすかわからん。それこそ…。」
「あの女ってさっきから、誰なんですか?」
当然、銀髪クンをスルーしてクレオさんに聞いてみる。
「ジリル殿下の母君です。我々は今回の首謀者は彼女であると思っています。危険思考の持ち主でしてね。」
クレオさんがちらりと獣王をみた。
『…魔法族第一主義者。魔界にきた人間の中でもっとも獣族を蔑んだ女だ。前魔王と共に残虐の限りを尽くした。北の森、さきほどのジリルの城があった辺りで処刑されたはずなのだが、レイシアスの情報によると生きている可能性があるらしい。』
「もともと黒魔術に精通していたようですしね。生きていればちょっとやっかいな人です。ユリウス陛下の母君が魔界に連れてこられたくらいから言動がおかしくなってしまいまして。」
「正面から行ってピンポーンってな訪問の仕方はだめなんですか?」
「お前、黙れ…。」
行ってみなきゃわからんだろう!お前こそ黙れ!銀髪クン!
まあ、まあと間に入るクレオさん。
「ジリル殿下は母親が処刑されたあの地に城を建て、こもりきりで出てこないのです。誰一人受け付けないのですよ。ユリウス様を人間界に飛ばしてから各重臣に寝返りの打診はしてきていましたがね。」
「結界石の結界は破れないんですか?」
クレオさんは苦い顔した。
「原始鳥…なら時々破るんですが、城に突入するように野生の鳥を使うのは無理でしょうね。それこそ何百羽連れてきてつつかないといけませんし、魔法も効かない鳥ですから。」
ムムッ だったら!
「地下を掘るとか!」
「お前、ホント、黙れ!」
銀髪くんの頭から湯気が。
『…ユキ、少しでも何とかしたいお前の気持ちはわかるが、少し、部屋に戻って休むがいい。』
「ユキ様、大丈夫ですよ。ユリウス様はお強い人です。ここは私たちに任せてください。ただ、ユリウス様のお名前は呼ばないように。あなたが捕まればせっかくの陛下の行動が無駄になってしまいますからね。」
「…はい。」
ボスッ
仕方なく部屋に帰ってベットに突っ伏した。
本当は銀髪クンの言うことが痛いほどわかる。私は何にもできないんだもん。しかし、なんであんなに陰険なんだ…。
ふ~。
ああ、でも。
せっかく会えたのに…。
こんなことって…。
「姫さん、悪かった、オレ、勘違いして…。」
うなだれる金色のノコギリクワガタ。
「済んだことドウコウ言っても仕方ないよ。それより……助けるの手伝ってくれる?」
「もちろん…でも助けたら俺のこと殺さないよう言ってくれよ?」
…ちゃっかり者め!まあ、クワタンらしいけど。
「働きによりますね。」
「…それでこそ姫さんだな。」
「姫様、ミルク温めましたよ?少し休まれた方がいいです。」
イモムー(人型)が良い香りをさせたホットミルクを持ってきてくれた。
うう。イモムーは気が利くなあ。おんなじ顔でも短い髪のヤツとは大違いです!
そっと肩に手を置いたイモムー(人型)が背中から優しく抱きしめてくれた。
「泣いてもいいですよ?姫様。」
ううん。
ユリウスを…
「助けてうれし泣きするまで泣かないの。」
どうか、無事でいて。ユリウス。
あなたに大好きって言いたいよ。
ああ、ポカミスしてしまいました。先程修正…気付かれた方は忘れてください。すいません。




