決行前夜
あれからシャドウさんはネコ科なのに忠犬ハチ公みたいになついている。
ただし、私だけに…。
「いけ好かないヤツ…」
ヤラレッぱなしのクワタンは敵意丸出しだ…。でも、正直2度目は助けに来てくれるとは思わなかった。ありがと…クワタン。
私のナイトとなったのでシャドウさんは私の隣の部屋をもらった。せっかく戦ってくれた気持ちを無下にしてしまった私はお詫びのつもりでプレゼントを持ってシャドウさんの部屋のドアを叩いた。
とんとん、
部屋には入らずプレゼントを差し出す。
アルダさんみたいに思念で話すことも出来ないシャドウさんだが、こちらの言っていることは理解している。
「よかったら、コレ。」
ひょっこり出てきたシャドウさんはプレゼントを受け取ると、「開けてもいいか?」と聞いているように首を傾け、リボンを少し引きながら私をみた。
どうぞ、どうぞ。
ガサ、ゴソ。
……
しばし沈黙…。
アレ?絶対コレだと思ったんだけどな!?
袋から出てきたピンクのかわいい羽がモフモフとついた棒…
さっき市場でクワタンに買ってきてもらったんだけど、かわいいでしょ?
…私があげたネコじゃらし(?)のオモチャをみてシャドウさんが固まっていた。
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『ほう、おまえか、ウーゴに勝ったのは。映り水晶で見ていたが、なかなかの戦いぶりであった。』
夕方、結果報告を兼ねてアルダさんのところへやってきた。アルダさんはご機嫌だ。
『…ウーゴも情けないのう。せっかく森中に”現れた美少女は前獣王の隠し子か!?”と触れ込みしてやったのに…』
…スポーツ新聞か!!
だからあんなに候補者がいたんだ!も~~!!!!
『近くに来い、私の守りを授けよう。』
そういうとアルダさんのところにシャドウさんが近づいた。
「獣・王だぞ!膝を折・れ!」
ウーゴさんが獣王であると思っていたのかシャドウさんは立ったままだ。
『…そのままでよい。ウーゴ、黙れ。』
アルダさんは金色の目を細めてシャドウさんを見つめた。
『…シャドウと申すか。』
…アルダさんは会話できるのかな?すごい。
数分間アルダさんはシャドウさんと目と目で話をしているようだった。
念力かな?
『…わかった。ユキの安全は保障しよう。わたしもユキのことを気に入っている…娘のようにな。』
アルダさんは私を見て妖艶に微笑む。
ええっ。ちょっと照れます。
会話が終わるとアルダさんの身体が虹色に輝きだした。鱗の一枚一枚が点灯していくように次々と輝きだす。全身が光に包まれるとシャドウさんの右腕に小さな金色の蛇が巻き付き、光がそこに収まるように吸い込まれるととそのままブレスレットになった。
『ウーゴ、皆今日のトーナメントで疲れていよう。明日は休み、明後日ジリルの城へ突入する。準備を整えておけ。』
「承・知しました。」
『ユキ、お前のことはそのシャドウが守ってくれよう。…よほどお前が大事らしいぞ?』
ふふっとアルダさんが笑って、シャドウさんを見た。
『長生きするものだ…今日は面白いものが見れた。では…。』
そういうとアルダさんは水の中に消えていった。
…明後日。
この件が上手く行けば…
私は人間界に帰れるだろうか。
ピンクの羽のオモチャはクワタンの趣味です(笑)
さて次回はいよいよジリルの城へ…