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切ない夜の脱出劇


シュウ=レイシアスの部屋の前でその会話を盗み聞きしているものがいた。

金色に光るそれは小さな使い魔であった。


…やばいぞ、今の会話…。テレ二アの生まれ変わりが姫さんでないのを知っているのは俺だけだ。

しかし、俺は血の契約があるためそれを知らせることはできない。

勘違いしたユリウスは姫さんを殺すに違いない!

どんなに寵愛してようが、あの、ユリウスだ。昨日あいつが俺にどんなことして拷問したか思い出すだけでも身の毛がよだつ!




姫さんを逃がさなくては!







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「今晩、ユリウス様はお忙しくて来られないそうです。残念ですね、姫様。」


リラさんがしょんぼり顔で私に言った。



「今日は大の字で寝ちゃいます。おやすみなさい、リラさん。」



私がそういうとリラさんは少し困ったように笑って明かりを消して部屋をでていった。






とは言え、今日は夕食も一人だったし、なんだか寂しい。

魔界に来て初めてじゃないかな。一人ぼっちって。

ユリウスの膝召喚もなかったし。



すこし冷たく感じるシーツに包まって目を閉じる。





一人で寝たいってあんなに思ってたじゃん、私!ヤタ~!





ものめずらしいのも飽きちゃったりして?願ったり叶ったり?






いつもユリウスがそうするように両腕が後ろから伸びてくるのを想像してみる。










ユリウス





寂しいよ。





いつの間にか一緒にいるのが当然になってる。


バカだな。慣れちゃいけないって言い聞かせてたのに…


いつかユリウスの魔力がもどったら…


こんな夜が毎日続くのかな…。







い、



いたっ!



痛い!痛い!


私は猛烈な右手の痛みにビックリしてもぐっていたシーツの中から顔をだした。


あ、なんだ!クワタンじゃないか!指を挟むなんて痛いじゃない!



「姫さん、逃げるぞ!」


「はあ?」


「ユリウスが姫さんのこと殺すことに決めたんだ!今しかチャンスはない!」


???????


「待って、話についていけないんだけど?」


「今、ユリウスたちが相談していてたのを聞いたんだよ!間違いねぇ!今朝からユリウスに避けられてんじゃないか!?」



た、確かに…。


「奴ら、まだこっちが気付いた事をしらねぇからな!早く、用意しろ!結界の抜け道がまだあるうちに!」


いまいちクワタンは信用ならんのだけど…?


「お前が死んだら俺様も死ぬんだよ!わかってんのか?」


は、ハイ。そうでした…。


な、何だかわかんないけど、ちょっとユリウスのこと好きだって自覚したら私、殺されちゃうの?


ひえ~~っ。


即失恋?????


早過ぎない?



「詳しいことは後で、だ!いそげ!」



クワタンの迫力に押されて取り合えずイモムーの壷と制服を抱えて部屋を出た。

後はがむしゃらにクワタンについて行った。


城から出ると私の血液を吸ったクワタンは大きな鳥になって私を暗闇へと運んだ。


バサバサと闇の中に翼で風を切る音だけが聞こえる。



ああ、


昨日までのぬくもりは幻だったんだな…



ユリウス…



ほんのちょっとは好きでいてくれてるのかなって思ってた。


頭を撫ぜてもらうのが大事にされてるみたいで…


抱きしめられて眠るのも特別みたいで…


石のせいだってわかってても…


本当はうれしかったんだ…。




頬に伝う涙は留まることを知らず…



風に冷やされながら落ちていった…









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