うたかたのキス
さていよいよ本編が動かせそうです(汗)
…夜
広いベットをもてあますように丸まって寝ていると、シーツが持ち上げられる気配がして…執務を終えたユリウスがベットの中に入ってきた。
ただ、いつものように抱き寄せてはきたが、すぐに眠る様子がなかった。
「ユキ…」
半分寝てしまっていた私はユリウスの言葉が夢見心地で…
その細く長い指で髪を耳にかけられて、くすぐったいのに動けなくって…
気遣うような優しいキスが落ちてきたのが現実だったのか夢だったのか…
わからなかった…。
次の朝は爽快な気分でやってきた。
起きると部屋にユリウスの姿は無く、代わりに黄金色のノコギリクワガタが出てきて肩にちょこんと乗った。
「なんだよ、毎日一緒に寝てんのかよ?」
出来立てホヤホヤの私の使い魔はイモムーの壷と並んで置いてある壷を住処にしている。
…最初は嫌がってたくせに宝石つきの成金っぽい壷にしたら入るんだもんな。現金なヤツめ。
「仕方ないんですよ。ユリウスの魔力が戻るまでなんですから!」
「ふ~ん。淡白魔法族にしちゃすごいイチャイチャぶりだな。」
いちゃいちゃいうな!
久しぶりに昨晩、熟睡&爆睡できてスッキリお目覚めしたのに朝からよくしゃべるね?このクワタンは!
「外見が可愛いのをいいことに、あんまり五月蝿いと…」
「わ、やめろ!わかった!もう茶化さない!」
キン〇ョ-ルジェットを向けて脅すとしゅんとなる金色のノコギリクワガタ…ああ、萌えだ!萌え!
「まあ、捨てられたら俺が姫さんの好みの男に変化して慰めてやってもいいぜ。」
温水〇一さんでよろしくです…。
「…ねえ、なんで姫さんて呼ぶの?」
「なんでって、お后さんには早いだろ?」
…ブルータスお前もか!
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「申し訳ございませんでした、陛下。今回の失態このシュウ=レイシアス、真摯に受け止めております。どのような罰も受ける所存です。」
ようやく目覚めたベットの中で半身を起こし、自分の失態をユリウス陛下に謝ることができた。陛下は私のベットの前にある机に座るとこちらを見た。こうして二人だけになると学友だった頃を思い出す。
「もういい、シュウ。頭をあげろ。人間界は勝手が違う。今回のことは防ぎようもなかった。」
ユリウス陛下は珍しく微笑んでおられた。
ユリウス様は感情に任せて処罰を与えたりはしない。そうであればクレオが元帥のままで居られるわけも無かった。常に状況を分析し、感情を踏まえず判断する、時に非情で冷酷な王。
悪政を行なった父親を公開処刑する際も眉ひとつ動かさなかった。
…それが私の知っている陛下。
「シュウ、テレ二ア探しは終わりだ。」
「え!?」
人間界に渡ったのはつい先日だ。たった半日で有翼族の攻撃にあって、このざま。捜索を打ち切る理由がわからない。
「餌に食らいついたのが有翼族だったのは予想外だったが、成果はあった。」
「どういうことですか?」
「奴は禁忌を犯した。テレ二アの願いを聞いている。」
…有翼族は人間の欲望(願い)をその代償によって叶えることができる。
代償とは血液や性行為による体液、中でも純潔を破った時の血液が比べよう無いほど力となるらしい。
が、それは人間界でのみとされる活動である。…食事は人間界でしろということだ。
「テレ二アは何を…。」
陛下は首を振る。
彼らは血の契約によって一族の戒律を守っている。すなわち、契約の内容は誰にも漏らせない。
…その死を持っても破れないその体内に流れる契約。
「それが「かえらずの石」…か。」
魔界にひとつだけの石がもうひとつ。
テレ二アが望んだと考えるのが自然だろう。
「そうだとして捜索の打ち切りは…。」
「ユキに…ユキの身体に星の痣がある。」
「!?」
「私が転生直前にテレ二アとわかるようつけた印だ。」
「まさか!いくらなんでも似ても似つきません!」
「…私が魔界の記憶が甦ったのは人間界で12歳の時だ。環境によって性格も変わる可能性が無いわけではない。」
「…偶然すぎるのも怪しいと。」
「そういうことだな。」
「もしもユキがテレ二アが転生した者であるならどうされるのですか?」
心石を飲ませ、毎夜その腕に抱えるほどのユキを…。
「…呼び寄せの石の人間を替えねばなるまい。」
そういうと陛下は指でもてあそんでいた小瓶を机の下に落とした。
パリン…
小瓶は高い音をたてて粉々に砕け散った。