使い魔誕生
風呂場でダウンした私はユリウスの寝室の隣の部屋に移されていた。
「姫様、大丈夫ですか?」
リラさんが冷たいタオルを額に載せてくれた。
ぶっ倒れて、恥ずかしい思いもしましたが、ゆきは貞操を守れたのです!
それで…よしとしよう…この際…ウン。
「シュウ様がお目覚めになるまで魔界に留まるようにと、ユリウス様が。」
どうでもいいけど、愁子ちゃんの格好のまんま帰ってきたのかな。
「ああ、ユリウス様が姫様をそれはそれは大事そうに抱えて来た時リラは心躍りましたよ!」
スキップしそうな足取りでリラさんが水差しの水を差し出してくれた。
なんとでも言ってください。穴があったら入りたいです。いや、掘れというなら掘らせていただきますよ!ワンワン!!
コンコン
「誰かしら?」
リラさんがドアの方へ見に行ってくれた。もう、あの岩風呂はいかないぞ…。
「あらあら、まあ。 姫様、ユリウス様ですよ?」
その声にシーツを頭まで被った。なんで来るの~~!!
「大丈夫か?」
…まあ、心配してくれたのだよね…。運んでくれたのだし。
「リラ、さがっていい。」
「は~~~い。」
え、嘘!?
ドアが閉まる音がしてリラさんが出て行ったのがわかる…。なに?再びピンチ?
「ユキ、座って話ができるか?」
話?はい!話なら!
ガバッと起き上がってユリウスに向き合った…が、恥ずかしくて俯いた。
「フォルスをお前の使い魔にしようと思う。魔力に当てられない体質のようだから、使いこなせるだろう。新しく名前を与え、主従関係を結ぶがいい。」
そういうとユリウスは小瓶の蓋を開けた。
瞬く間に現れたフォルスはユリウスを伺いながら私の前に立った。
え~っ。この人私の処女ねらってた人だよ!私がなんで主人に?
「ユリウスが使えばいいでしょう?私はズルイ人といる自信ないし。」
「…ユキがいらぬなら…」
ユリウスが無表情でフォルスを見た。フォルスが真っ青になって震えている。
「た、頼む!何でもするから!俺を使い魔にしてくれ!」
フォルスが床に這いつくばって懇願した。そういえば始末するって言ってなかったか?
「…解かりました。フォルスさんがそれでいいなら。で、使い魔ってなんですか?」
「主人が死ぬまで仕える忠実な僕だ。」
「私が死んじゃったら自由になるんですかね?」
「主人が死んだら僕も死ぬ。ゆえにお前が死なぬよう全力で守るだろう。」
ふふっとユリウスが笑う。確かに危険が身近にあるのなら守ってくれるものが必要だよね。愁子ちゃんが一撃で何日も起き上がれなくなるんだからそれなりに力もあるんだろう。
あ、でも!ご飯はどうするんだ!毎回変なことするのはさすがに嫌だ!
「し、食事は?」
微笑みながらユリウスは私の顎に手をやり、視線を合わさせる。そのまま美しい顔を近づけると耳元で
「わたしがお前を他の男に触れさせるわけがないだろう?少しお前の血液を与えればいい。…おかげで私は当分お預けだがな…。」
…なにが、とは聞かなかった。役に立つではないか!使い魔、万歳!!
チャチャチャ チャ~チャチャ~!
ゆきはレベルが上がった!
ユリウスの明るい家族計画が先延ばしになった!
今晩から安心して寝れるようになった!
さよなら、手書きのドラ〇もんパンツにブラ!
「ユキの好きな姿にすればよい。名前をつければユキの命令が無い限りはその姿に留まる。」
「好きな…」
じっと、イモムーの壷を見る。オスのイモムー欲しかったんだよね。
「おい、忠告しとくが、人間界で活動してもおかしくない姿がいいんだぞ!お前、今、ダダにしようかと思ってないか!?」
焦ってフォルスが口を開いた。
「私のユキだ。お前と呼ぶな、フォルス。」
おいおい、自分はお前って言うくせに…。
フォルスは青くなってコクコク頷いている。
「イモムーもお婿さんを選ぶ権利があるかもね…。」
爆発的に増えるところ見てみたかったけど。
「鳥はどうだ?白い鳥はかわいいだろ?あと、蝶とか、カッコイイだろ?コウモリとか、フクロウもスタンダードだし!」
「なるほど。飛べる方が便利そうですね。よし、決めた!」
フォルスの瞳に安堵の色が浮かんだ…
「黄金のノコギリクワガタ!名前はクワタンです!!」
…が、消えた。
ユリウスが手渡してくれた針が出し入れできる指輪で針を押し出し、人差し指を刺した。
チクンとして小さな血の粒ができる。フォルスが落胆顔でそれに触れるとその身体は金色に輝くノコギリクワガタとなった。
め、めちゃくちゃ可愛いんですけど!?
「よろしく、クワタン。」
ブーンと羽音をたてて私の手のひらに乗ったクワガタは
「…わかったよ、姫さん」
と言葉をこぼした。
ユリウスお預けプレイ…(笑)です。