魔王様との出会い2
ドキリ。
声のするほうに首だけ回してみた。あれれ。いない。
「どこみてるんだ。」
はえ?
今度こそと首を戻して見るとどこかの制服を着た同じ高校生と見受けられるセクシーボイスの持ち主様が居た。
ごくり。
いま、私、息するのをわすれたよ!だって、超がつく美形が!キングの称号がつく美形が!
あぅあぅ。
「で、なにしてる。」
更に質問されて目が泳ぐ。私は中腰になっていて公園の長いすから何とかスカートを剥がそうと両手で空中をつかみながらもがいているところで…
いやん。そんなに見つめないで下さい!
どうする? 乙女心を優先させて何にも無かったように座りなおしてやり過ごす?
こんなみっともない時にどうしてカッコイイ男の子が通りかかるのよん。くすん。
大根持ったおばちゃんだったら素直に助けを求められるのに!
しかしすでに私は猫のお化けに身体を乗っ取られて空中の虫を取るがごとくに両手を動かしていた変な女…
見栄を張ったところで今の状態の打開策はない…。取りあえずはいったん座りなおして…
「その…。ちょっと休憩しようと座ったら…。」
「座ったら?」
「えと…」
「なんだ?」
「スカートがくっついてしまいました!!!」
はあ、はあ。
言った。言ったぞ。恥を忍んで…。
「ふうん」
笑われたり、呆れられると思っていたのに彼はそれだけいうと…。
と、隣に座っちゃいましたよ!!!!
あわ、あわ、あわ。
な、な、な、なんてことを!
「どうした?」
あわてる私を見て肩にさらさらと流れるうらやましすぎるストレートの黒髪がゆれ、困惑した漆黒の瞳が私を捕らえている。
どうした?どうしたもこうしたも~~!!!!!!
「あ、あなた、私の話聞いたんですよね?どうして!座るんですか!!!
あなたまでお尻がくっついたら、端から見ればとんだバカップルじゃないですか!
二人して公園のベンチにお尻くっつけて!!!!
ミイラ取りがミイラです!!
バカピラミッドに超美形スフィンクスです!!
この状態でさらに目立つこと請け合いです!!!
助けてもらおうと恥を忍んで、思い切って打ち明けたのに~~~~!!!」
ぜい、ぜい。
一気に言った…。燃え尽きた…。
のに…
「問題ない」
涙目になってる私の訴えを他所に、彼はそう呟くと優雅なその長い指で私の瞼をなぞり…
その指を…
な、な、な、な、な、舐めた!!!!!
へ、変態だ。美形のへんたいだ!
叫ぶ??
お尻くっついてんのに?
逃げれる??
ぐるぐると効率の悪い頭で思考をめぐらす。あ~~ん。答えが出るわけないよう。
固まる私を更に無視してつま先から頭の先までじっくりと見つめていた瞳が私の視線へと戻ってきた。
もうわけわかんないけど吸い込まれそうです。その瞳…。
「名前は?」
なまえ?
湖山ゆきです!…って教えていいかっての!
「 … 」
黙る私をみて、ニヤリ。
カバンについている良子ちゃんお手製のネームプレートを裏返される。
プチ不運な娘がカバンをなくさないようにとの配慮ですけど、今はなんだかまずい気がします。マイマザー。
「ユキ…」
その整った唇から私の名前がこぼれる。ギャ~~即バレ。
「俺のものになれ。」
はあ???????
オレノモノ???
何語ですか?解析不可能。脳みその回線が今ショートしました。ツーーーーーっ。
「印をつける」
状況が理解できずに呆けている私にさらに彼が近づく…両肩を押さえつけられて、その美しい顔が沈む。
チクン…
「痛っ!!」
え、ええ~~~~~!!!!思わず痛みがはしった首を押さえる。
このひと、
このひと、
私の首かんだ!!!
「明日、呼ぶ。」
呆けている私に彼はそういうと…
優雅に立ち上がった。
へ???
くっついてるの私だけ?
ますます混乱…
勝手なことしまくって、私を置き去り??
そう思って透き無く美しい後姿を恨みがましく見つめていると私の心の声が届いたのか彼が振り向いた。
「特別に助けてやろう」
言葉と同時にスカートが離れた…
わ、やった!!なにして取れたの??
と、思うもつかの間。
後ろを見たらその答えは明白で。
彼が何をどうしたかは知らないけれど…
スカートにぽっかり穴が開き…
私は長いすから解放されていた。
バカ、バカ、バカ~~~!!!!
…その後
どうにかカバンでスカートのお尻の穴を隠しながら家路に着いた私は良子ちゃんに大目玉をくらった。