敗者のスクールライフ2
「お前なぁ。普通は俺様の姿を見たら、天使さま~とかうっとりなるんだぜ?」
妖しい金髪天使は緋色の目をこちらに向けて不満そうに言った。
でも、もともと鳥だったよね?今背中に生えているのは鳥の翼だし。
それより、いきなり愁子ちゃん失神させちゃだめでしょ!コラ!
「なにか用ですか?」
取り合えず聞いてみるけど。
「…ユリウスが気に入るのもわかる気がするなぁ。魔力に当てられない人間がいるなんて。」
「意味わかんないし、鳥人間はうそつきだから関わりたくない。」
銀髪も金髪もかかわるとろくな事が無いのは実証済みだ。
おかげでゲームにも負けて散々な目に!赤面もんダヨ!
「まてまて、危害は加えないって前にも言っただろ?お前、名前は?」
「名乗らない人に名乗らない。」
「相変わらず用心深いな。俺の名はフォルス。魔界の有翼族だ。人間は俺のこと天使とか悪魔とか吸血鬼とか好き勝手呼んでるがな。」
お前は?って顔してフォルスが私を見つめる。
…名前ってそんなにすぐ教えていいものなのかな。
悩んでるとフォルスの手が伸びてきた。思わず後ずさりすると上履きが滑った。
「ワカメ…。」
下に落としちゃったんだ、お弁当箱。不気味だけどもったいない。
「ワカメ…。可愛い名前だな。」
な、なんか勘違いしてますけど…。サザ〇さんの妹じゃないし!
「なあ、ワカメ、このままユリウスの嫁になんのか?俺ならお前の望むようにしてやれるぜ?」
だから違うって。ま、いっか。訂正すんのが面倒そうな人だし。
「お前、まだ処女だろ?魔法族は草食クンで助かるぜ。…俺様にお前の純潔捧げろ。そうしたらお前の望みをなんでも叶えてやるぜ?」
万年欲情しているような瞳で言われても…。ゆきはカブトムシよりクワガタ派ですからねえ。
連れ添っていく人でなきゃ、子孫を残す行動は拒否したいです。
そう思える好きな人と…。
あれ、今、ユリウスの顔が浮かんだ??
「…ユリウス」
なんとなく口からユリウスの名前がこぼれた。
「あ、こら、呼ぶな! クソッ!!」
??呼ぶ???
そう思った瞬間胸が熱くなった。
熱い!
片手で胸の辺りの制服を集め、握りしめる。
なに、この感覚…
身体がビリビリして膨らむ感覚が体内から押し寄せる。
内臓が爆発する!!!!!!!
ぎゅっと目を瞑って感覚を何とかやり過ごすと私の頭を撫でる手が…。
私はこの手を知っている。
「ユリウス?」
目の前にはニッコリ笑う美形クン。私の頭に手を置いたままフォルスに向かい合う。
「干渉嫌いの有翼族がなに用だ?」
途端に酸素が薄くなるようなユリウスの威圧感があたりを包む。
「私の弱みを握っておく算段か?」
「…魔界でお前に敵うやつはいないだろうが 人間界は有翼族の庭なんだぜ?」
「どうかな?やってみろ。」
面白がるようにユリウスは言った。フォルスがその挑戦を受けるとは思えない。恐怖に足が震えているからだ。
「…ッ!!!ワカメ!来い!!!!!」
片手を出してフォルスが下に落ちたワカメを呼ぶ????
その手にはワカメが集まった。
…
…
一同、ポカ~ンとなった。
フォルスは手のひらに集まったワカメと私を見比べる。
…
「騙したな!」
緋色の目を見開いてフォルスが私を睨んだ。頭から湯気が…
…え、勘違いしたの、わたしのせい!?
ユリウスはちらりと私をみてポケットから手のひらに収まる小さな瓶をだした。
コルクを開けるとフォルスに向ける。
「!!!!」
フォルスがそれに気付いたときにはすでに遅く、彼は小瓶に吸い込まれていってしまった。
…ユリウスは蓋を閉め、愉快そうにそれを眺める。
そして、ひととおり眺め終わると満足げに小瓶をポケットにしまって私のほうに向いた。
「 … 」
ユリウスは私のほうに向き直った途端さっきまでの上機嫌はどこへやら、不機嫌そうに私を見た。
なんか、怖いんですケド…
「ど、どうかした?」
視線は気絶している愁子ちゃんに…
「え、と。怒らないであげて?」
不意打ちだったし、ね?ほら、結果的には私は大丈夫だし。
「他の男になつくなと言ったろう?」
え、男って愁子のことですか?
愁子ちゃんは気絶して私に膝枕されていますが…。
ユリウスはイライラした様子で愁子ちゃんを私の膝からどかす。
あ、そんな。足蹴にしなくても…。
完全にのびてる愁子ちゃんはされるがまま転がった。
マゾっぽいからいいか…。
「お仕置きだな?」
微笑むユリウスに固まる私…
肩をつかまれホールド状態。
近づくユリウスに思わず目を閉じると…
なまめかしく湿った感触が私の唇を啄ばむように落ちてきた。
ゆきの全神経…ショート…。
注:ゆきちゃんはカブトムシは死ぬまでエッチする格闘派、クワガタムシはラブラブエッチ派だと思っています。あくまでゆきちゃん視点です。
私事ですが3、4日ほど更新空けます。日参して頂いている方が(もしも)居られたら申し訳ないので…。楽しんでもらえてたらうれしいです。