敗者のスクールライフ1
夜はユリウスのベットに入り、朝は自分の部屋で仕度するという奇妙な生活が始まった。
魔界のヒラヒラネグリジェとはオサラバなので良いですけどね…。
ユリウスに変な気起こされたら困るし。
イモムーもユリウス部屋で飼えるし。
あ、朝ごはんの仕度が出来たと良子ちゃんの呼ぶ声。
ああ、この匂い…!
これですよ!
私はこの家に帰ってきたこと痛感させる匂いの元に急いだ。
「う~ん! 不味い! もう1杯!」
良子ちゃんの得意( ?)の不味い味噌汁を飲んで私の1日が始まる。
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「灰上愁子です。よろしく」
転校生は呪いの言葉を吐くように短くその名を告げると気だるそうにしていた。お約束になっている私への睨み付きで…。
もちろん転校生は銀髪クンだ。
最初からそう仕向けるようにしているのであろう私の隣の席につく。
当然先生は愁子ちゃんのお守りを私に任命した。仲良く教科書読めるかな…。トホホ…。
私のことを苛めつくすだろうと構えていたのだけど愁子ちゃんはとっても真面目に授業を受けていた。
宰相だけあって勉強好きかな?時折私が教科書に書いていた先生の似顔絵や写真の落書き(ヒゲとか書いてた)を見て眉を顰めてたけど、辞書の端に書いてたパラパラ漫画は気に入ったようで私に見えないように何度もパラパラやってた。力作ですからな!ウォッホン!
お昼時間になって、私は未来ちゃんと愁子ちゃんと3人でお弁当を広げることになった。
「ゆきちゃん、昨日のウルトラ美形の彼とはどうなったのよ!報告は?」
あ、そうか。昨日になるんだ。それでか、朝からみんなの視線がキツかったのは。
「昨日の彼って?」
愁子ちゃんがそれとなく聞いている。わかってるくせに。
「昨日すっごい美形の男の子がゆきちゃんのこと校門で出待ちしてたんだよ~。」
「へえ。そうなんだ。すごいね。」
「すごいのよ!で、どうだったのよ!」
「 … 」
どうだったのって…。
「ヤッちゃった??」
ブッーーーーー
牛乳吹いちゃったよ!未来ちゃん!何てこと聞くのよ!
「ヤルわけ無いでしょ!会ったばっかりなのに!」
「へえ、そうなんだ」
小さな声で愁子ちゃんがつぶやく。…あんな姿みてるから無理も無いけどゆきはエキストラバージンです!バカにしたように下向いてニヤニヤされても平気ですよ~だ。
未来ちゃんが変なこと言い出す前にお弁当食べよ!っていってもイチゴクリームパンだけどもさ。
「あ!?」
声を上げて立ち上がる私を未来ちゃんが不思議そうに仰ぎ見た。
それとなく愁子ちゃんのお弁当の蓋を閉める。
「なによ、ゆきちゃん。」
エビフライを口に運んでいた未来ちゃんが抗議する。
「愁子ちゃんに食堂を案内する約束してた!」
「ええ!?もうお弁当広げちゃってるよ。明日にしようよ。」
「駄目!駄目!ね、愁子ちゃん!そうだ!パン買おう!すぐ帰ってくるから!」
…そういい残して不思議そうにしている愁子ちゃんをお弁当ごと教室から連れ出す。
ふう。
中庭には幸い人気が無かった。
「なんだ?落ち着きの無い。」
つまらんことで私に触るなと目で冷たくいう愁子ちゃん。
「お、お弁当に魔界食もってきたら駄目です!なんですか!女子高校生らしからぬそのお弁当は!」
「? 私がそんな間抜けな真似をするわけがないだろう?」
「じゃあ、その黒い物体はなんですか!」
そう、お弁当をあけたら真っ黒だったので驚いて教室を連れ出したのだ!
「わかめだ!」
お前はバカじゃないのかって顔で思いっきり言われても…。ピンクのお弁当箱に一面わかめ入れてる人なんていないよ!
「流行ってるんだろう?」
…今月の月刊スモモセブンティーン(雑誌)はわかめダイエット特集だったらしい。
勉強しすぎでおかしいわ!
…頭イタイ…。
なんとか、わかめ弁当は止めるように説得して教室に帰ろうとしたとき…。
頭上から閃光がはしった。
光は愁子ちゃんに向かって放たれたようで…
「愁子ちゃん!!」
気を失ってる美少女もなかなかいいものだが今はそんな場合じゃない。
「無理、無理、起きないぜ。」
愁子ちゃんを抱える私にそう言い放ちながら光るその方向から現れたのは…
「鳥人間!!!」
お約束のずっこけポーズをした妖しい金髪天使だった。
金髪クン再び。ちょっと話が進むかな?