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ゲームオーバー


ガリガリ…


ボリボリ…



イモムーってクイシンボウ…。

もうちょっと大きくなったら大きい壷に換えないと。

結構何でも食べる。


花でしょ?

枝でしょ?

観察日記つけようとしたらペンも食べちゃったし。

あ、そう、そう。ブーツも食べてたな。

陶器は苦手みたいだから壷に入れといたら大丈夫かな。


明日、頑張ってゲームに勝ったら人間界に帰る…

イモムーどうなっちゃうかな。

銀髪クンに即捨てられそうだな…。

むむぅ。いい方法は無いものか…。

壷にすら近づけないリラさんに預けるのは無理だし…。

あ、そうか、ユリウスだったら飼ってくれるかも!

帰るとき頼もう。




今日も一緒に寝るのかな…。だんだん諦めるのが早くなってきた…ちゃんと寝れてる自分も怖いし。

ああ、乙女失格…




コツン




??




コツン




何だ?

窓から?


分厚いカーテンを開けると真っ白い鳥モドキがくちばしで窓をツンツンしていた。


鳥モドキ…


爆発的に増えるイモムーがそれほど増えないのはイモムーを主食とする鳥モドキが毎日せっせと食べるからだとユリウスが言っていた…


イモムーのことを嗅ぎ付けてきたのか!?


ムムゥ。イモムーは私が守るのだ!


勢いよくカーテンを閉めると慌てたように窓を叩く鳥モドキ…もう鳥でいいや。


「まて、開けろ、危害は加えないから!」


鳥がしゃべってるぞ…。

イモムーの壷を握る私の手に力が入る。

それでも好奇心に負けた私は少しだけカーテンを開けた。


「お前、ユリウスの嫁なんだってな!」


「!嫁じゃありません。こないだ会ったばっかです!」


「へええ。そうなのか?ユリウスが珍しくご執心で、片時も離さないほど寵愛を受けてるって噂だぜ?」


だれだ、そんなこというヤツは!

ま、もうすぐ帰るからいいけどね~だ!


「あなた、だれ?」

魔界こっちに来てからこの言葉ばかり使ってる気がする。


「ああ?俺様か?部屋に入れてくれるんなら名乗っても良いぜ」


「無理。」

イモムー食べる気でしょ!油断ならん鳥だな。


「用心深いのは良いことだがな。…なんだ、その壷?」


ヤバイ!顔を出しちゃ駄目!イモムー!


「食べちゃ駄目!」


鳥が緋色の瞳を壷に鋭く向けた。

この窓ガラスって丈夫なんだよね?


「おま、お前!俺様がダダを食べると思って警戒してんのか?

 んなキッショイ、イモ虫食うかっての!失礼なヤツだな!」


「騙されませんよ。この子は魔界で唯一の癒しの存在。食べ物なら他所にいってください!」


「…しょうがない。これならいいかよ…。」


その声を聞いてもう一度窓の外をのぞくと、外側の窓枠に一匹のねずみ(?)がいた。


「あれ?鳥は?」


「俺様がねずみになってやったんだ、開けろ。」


確かにこれなら新聞紙丸めて叩けるサイズだ。変身したんだ?


「…そこにあるかごに入るなら話を聞いてもいいよ。」


私はイモムーを入れようとした鉄かご(姿が見えるからやめてくださいとリラさんに泣いて止められた)を指差した。


「ま、いいだろう。」


窓をちょいと開けて緋色の目のねずみを鉄かごに入れようとしたとき、目の前がぐにゃりと曲がって鉄かごごと私は後ろに押された。



…目の前には金色の髪をした青年が立っていた。白い衣服を身に纏ったその容姿はまさに天使であったが緋色の瞳が妖しく、外見とのギャップに余計禍々しく感じた。

心臓の音が危険を知らせるように早鐘を打つ。


なんだこれ!?


どうして開けてしまったのだろう!ここは魔界で、今までの常識なんて何も通じないのに!

素直に鉄かごに入るわけがなかったんだ!

 

自分がしてしまったことを呪ってももう遅い。逃げる??どこへ??こういうときは??


そうだ!


叫ぶんだ!!


「火事だ~~~~~!!!!!!!」


痴漢に襲われたときはこう叫びなさいと良子ちゃんに言われている。普通に叫ぶより効果があるって話だ。


目の前の男がきょとんと呆けた顔で私を見た時…




ゲームオーバー



頭の中に声が響いた。

確認しなくたって聞きなれたセクシーボイスで…


「あっ!」


そだ!

…目の前にいるのは鳥でもなく、ねずみでもない。どう見ても人間ひとに見える。


「ひ、ひどい!変身なんて聞いてないもん!詐欺だ!クーリングオフして!」


「おい、静かにしろ!」


我に返ったらしい妖しい金髪天使が声を出させないように背後から私を抱きかかえた。


ひえ~~っ!!!




バタン!




重厚なドアを荒々しく開ける音がした。



そこにはユリウスがいた。が、いつもと様子が違っていた。



肌がビリビリし、血管が心臓を締め上げるような威圧感。

恐ろしいほどの怒気を身に纏って…。


わきあがる恐怖に訳も無く奥歯が震えてカチカチ鳴った。

これが魔界で恐れられる王の存在なんだと、私は初めて思い知らされた。







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