魔王様とゲーム4
「姫様に何かあったら、リラがユリウス様に殺されますよ!ああ、美しい黒髪も少しこげ落ちて…!!」
部屋に戻った私の顔をみてリラさんが「ひっ」と息を呑んでいた。
ちょっと前髪がちりちりで右の睫毛が無いだけなんだけどね。
私は…。
眉毛まで無かったら、なんて言われるか…。
しかも頭ボンバーだし。
銀髪クン…
かわいそうで想像できない…。
問答無用で両瞼につけ睫毛を植毛されて私のおめめはパッチリンコ。
こうなったらオシャレしましょうと侍女服を脱がされそうになったけど、断固拒否です!
私の身長では子供服仕様しか既製のものは無いらしく、やたらフリフリのピンクやレースで大変なのだ。ペチコート?冗談じゃ有りません!!初日だけは我慢しましたけど、侍女服で十分です!動きやすいし、かわいいし。
ふひぃ~。
後は夕飯食べて、イモムーに餌あげて、寝るだけ。外では口が聞けないから神経磨り減りまくり…。
明日、頑張れば帰れる。
ガンバレ!私!
夕食の時間
銀髪クンは…やっぱり来なかった。
チ~ン…。
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元帥クレオ=モノクレールは目の前にいるのが誰であるか直ぐには認識できなかった。
「どどどど、どうしたんだ!?」
「 … … 。言いたくない。」
宰相シュウ=レイシアスの魔界一美しいと譬えられる銀髪がばっさりさっぱり切り取られている。
「髪を切るなんて何百年以来だ?」
短髪でもその美貌が失われるわけではないが、眼鏡までかけて、怪しすぎる。
当の本人はもう一言もなにも言いたくないのか押し黙って顔を背けているし。
「そういえば夕食にも来なかったし。ユキも心配していたぞ。」
「!!心配???ハッ!」
吐き捨てるように言うとイライラと部屋を動き回る。
…ユキと何かあったらしい。
昨日も…。何年も待ってやっと手に入れたユニコーンの羽を織り込んだブーツをダダ(ユキがイモムーと呼んでいる魔界の虫)に食べられたと言う。手を尽くして探させた貴重な羽が材料なだけにショックを受けていた。まあ、事のあらましを他の従者から聞けば、自業自得でしかないのだが。
しかし、ユキとは不思議な娘だ。永遠の命も美貌もいらないと言う。ここにいれば贅沢な暮らしが約束されるのに人間界に帰りたいと言い、侍女の服で充分と言って着ている。なによりユリウス様の魔力に当てられても平気でいるのが不思議なのだ。
…シュウはユキのことを気に入らないようだが、初めて夕食を共にした夜のユキはまるで魔界で一番の職人に作らせた人形のように愛らしかった。黒のリボンのついたドレスは白い磁器のような肌をいっそう浮き立たせ、少し茶色にみえる大きな瞳は宝石のように揺らめいていた。腰まである黒髪はつやつやと肩からながれ、その繊細さを語っていたし、ぷっくりとした唇は赤い果実のようで、みずみずしさを称えていた。
はじめて見た時は年端もいかない子供にしか見えなかったが、陛下もまだ16歳の外見であるし、陛下が気に入っているのであれば后としても問題なく思う。ユキももう少し経てばずっと女らしくなるだろう。
ガチャリ…
「待たせたな。」
「「いえ。」」
「明日、ユキを連れて人間界に戻る。」
「テレニアを探すのですね。どうするおつもりで?」
「無論、始末する。」
「テレニアは陛下を…。」
本当に殺そうとしたのでしょうか…。
言いかけてその言葉を飲み込む。言ってどうするのだ。どうであろうと反逆者でしかないのに。
握っているこぶしが汗を吹く。
何度も想像して、何度も納得していることではないか…。
それでも…
せめて…。
「最後は私の手で…。」
「クレオ!」
たしなめるシュウの声が低い。判っているさ。充分なくらい。
私がこの地位を追われていないだけでも奇跡なのだから。
「クレオ、私は王であって、お前の友人ではない。」
漆黒の瞳が問いかける。お前がその命を捧げたのは私ではないかと。
…もちろんです、陛下。私も軍を司り、魔界の民を守る身です。
だが…
もしも叶うなら…
お前の最後のときが少しでも安らかであるように…
浅はかで…
愛しい…
わが娘テレニア…。
なんだかシリアスチックな展開に…(汗)