学校の七不思議...動く骨格標本や人体模型ー人体模型だって立ってる仕事も疲れるんです!!そりゃあ動きたくもなります!
ここ、マル小学校にはこんな噂がある。理科室の骨格標本や人体模型が、夜な夜な動き出すのだと言う。骨格標本は一体、何故動き出すのか...。
「あー肩こったー!まあ凝る肩なんてないんだけど」
夜も中頃となった頃。骨格標本はそう言いながら肩を回す、少し疲れた様子ではあ、とため息をつく。それもそのはずこの骨格標本はずっと立っていたのだから。
「はーなんで立って無きゃいけねえんだよ!」
「しょうがないさ。人の前で動くわけにはいかないからな」
隣の人体模型がそう話しかけてくる。人の姿で右半分が腸や内臓が丸出しになっているオーソドックスなやつだ。
「でも夜に動き出すってこの学校で噂になってるんだぜ?」
「まじかよ」
確かに、この学校の七不思議のようなものの一つになっている。全く迷惑な話だ。
もちろん人前で動くなんてことはしてはいけないのでずっと立ってなければならない辛い仕事だ。授業でも稀にという程度でしか使わないというのに。
「くそう、誰だよそんな噂を流した奴は...!」
「まあしょうがないさ..で、今日生徒が話してたんだが、もうそろそろここに来るらしい」
「マジでか!?」
子供というのは好奇心旺盛だ。そう言う噂が流れれば、実際に見に来ようとする奴が現れる。
ここ前だってとある市にみちの生物が来たという噂が立つとその噂は簡単に広まった。
それは円盤のようなものに乗ってやってきて未知の言語を話すとか。握手をしよとするととても怒ったんだとか何とか。
「おい!来たぞ!」
「くそーまた立って無きゃいけないのか」
そう言いながら定位置につく。すぐに子供が2人、懐中電灯を持って理科室に入ってきた。片方は黄色い服の眼鏡の男子。なんだか弱々しそうに入ってくる。もう一人は坊主の少し大き目の少し小太りの青い服の男子。おそらくこの青い方の子供が話を持ちかけたのだろう。黄色い子供は気が弱そうだ。それに比べて青い服の子はなんだか肝が座ってそうだ。
「ねえ、やめない?怖いよ」
「バーカ!それじゃあわざわざ見にくる意味ないじゃねーかよ!!面白そうだしよ!!」
「で、でも...」
「解決して明日自慢してやるんだよ!」
その時何かが落ちる音がする。それは骨格標本の隣にある灰色の机に赤いペンが置いてあったのだが、それが転がってしまったのだ。
もちろん一人でに落ちたのではなく、骨格標本の腕が誤って机に当たって丸い形状の赤ペンが転がってしまったのだった。
「おい!何やってんだ!」
すこい遠くにいた人体模型が聞こえない程度の声で囁いてくる。もちろん人体模型の方も脅かすつもりは全くない不意の事故でやってしなたので仕方がない。
「おい!なんか落ちたぞ?」
「なんだろう?ペン?」
案の定というべきか2人の子供が気づいて近づいてきてしまった。体が疲れてくる。朝からずっと立っていたということもあって、人体模型の疲れはまだ残ったままだ。
「何で...ペンが」
目の前に気が弱そうな子が来る。動いちゃダメだと人体模型は自分にそう言い聞かせるにだがつい腕が動いてしまう。
「え?今動い...た?」
しまった!動いてしまった。人間の前で動くのはご法度のはずなのに。これではまた「人体模型や骨格標本が動く」という噂に信憑性が増してしまうじゃないか。
「おいどうした?」
もう一人の気がつよい方の子も来てしまったこれはまずい...
足も何もかもが限界になってきた。動きたくても子供がいて動けない。
「あれ?今度はあっちの人体模型が...」
すると人体模型から何かに音が聞こえて視線がそっちに行く。もしかして助け舟を出しくれたのか。
子供が人体模型の方へ向かう。「動いたの見たのか?」などと話し合っている。今なら....!
「あれ!?今動いた??」
人体模型が少し楽な姿勢を取ろうとしたところ気の弱い方が偶々こっちを向いていたようで変化に気づく。こうなったら...!と骨格標本は行動に移した。
「おい!カタカタなってるぞ!」
カタカタ鳴らしながら子供に近づく。子供の前で動くなどご法度というのは前にも言ったがこの際動いてしまおうという魂胆だ。なぜそのような行動を取ったかというと、こんな子供2人程度が「動いた!!」などと騒ぎ立てても信じる人がいるだろうか。
また噂になって新たに来る人がいるだろうが、その子供前で動かなければ「噂は嘘だった」と信じてそれを言うだろう。
噂で来れば来るほどその人たちが「嘘だったのか」と思い込んで帰ってくれればそれこそ好都合だ。
カタカタと鳴らしながら近づくと骨格標本に驚いて逃げて行く。2人とも一目散に逃げてゆく。
「よし、逃げて行ったぞ」
「大丈夫なのか?」
「ああ。噂は少し広がるだろうがそれが嘘だとわかれば熱りも収まるだろう。そうなるまで人間の前で動かないようにすればいいんじゃないか?」
「そ、それもそうか」
だが、その予想は全く外れ、噂すら立ってられなかった。反応はおろか、動く人体模型の噂を検証するものもめっきりいなくなってしまった。なぜあれだけやっ
て全くの反応がなかったのか、それはすぐにわかった。
「どうやらもう一つ上の階の女子トイレにトイレの花子さんってのが現れたようで人間共はそっちに夢中だ」
「人間って..薄情だな」
「ああ」
そう言いながら、無人の理科室を眺めた。