ずっとそばにいたい
「ねぇ、翔ちゃん。クレープ食べよっか。」
「いいけど、俺は甘いのがそんなに好きじゃないんだが・・・」
「ふふ、しょっぱいクレープだってあるでしょ。」
「それもそうだな。」
俺と加奈は付き合ってもう3年になる。
遠距離恋愛中でいつもは少し寂しいけれど、こうやって会えたときはとても幸せだ。
でも、もうそろそろ結婚をしようかと考えているところなんだがあと一歩が踏み出せないんだよなあ。
「おーい早く早く。」
「今行くよ。」
それから俺らは日が暮れるまで色々なアトラクションに乗った。
「私もう大満足だよ。そろそろ帰ろうか。」
「それもそうだな。もう遅いし。」
「あーでも私はもっと翔ちゃんと一緒にいたいな。」
ふと気付くと深い深い闇の中に俺はいる。
昔から暗いところは何か怖いものがいそうで嫌いだった。
もしかしたら自分から大切なものを奪って行ってしまうかもしれないから。
さっきまで加奈と一緒に居たのに加奈はどこに行ったんだろうか。
遊園地に行って、その後の記憶がない。
おかしいな、なにをしていたんだろうか。
そう思った矢先に闇が少しずつはれていった。
そうか、俺は加奈と・・・
気づいたら目の前に加奈がいた。
俺は少し寝ていたのか?
『今日の遊園地は楽しかったなあ。』
「そうだな次はどこがいいかな?」
加奈の顔はニコニコしている。俺は彼女の笑顔が好きだ。
『次は水族館に一緒に行きたいなあ。』
「お前、イルカ好きだもんな。」
加奈はずっとニコニコしている。
『でも翔さんはお魚好きかな?』
「食べるのは好きだぞ。へへ。」
『あ、じゃあその後は海鮮丼食べに行けばいいや!』
「お、やったぜ」
海鮮丼か、加奈と一緒ならなんでも美味しんだけどなあ。
『あーあ、このままずっと一緒に居られたらいいのになあ。帰りたくないよ。』
「そうだな。しばらく会えないなんて悲しいよ。」
『次はいつ会えるのかな?』
「すぐに会えるさ。今度は俺の方から行くからな。」
『でも次に会えることを考えたら悲しまずに北海道に帰れるよ。』
「俺はもう既に早く会いたいよ」
「今行くよ。」
俺は加奈が笑顔で写っている遺影の横に彼女が最期までつけていた日記を置いて部屋を出た。