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第3話 上里のキュレーター、プリジェクションペアーはサブカル系? Aパート

 この前はわたし以外のプリジェクションキュレーター二人に出会った。

 そして、若泉公園でプリジェクションサクラこと梅桃ももちゃんの活躍を見た。

 エモバグとバトルするのがわたし一人ではない事が分かって、何となく不安な気持ちが和らいだところだった。

 ところが、家に帰るとお父さんの元気がなかった。


「どうしたの、お父さん?」

「また怪物が出たんだよ。今度は若泉公園」

 見たから知ってる、とは言わなかった。

 うちのお父さんは公務員、実験都市アドバイザー。

 そう言えば昨日はヤバンセ美里店のエモバグの件で役場へ急行したんだった。


「3ヵ年計画にその怪物の原因究明が追加されてしまったんだ」

 それが元気がない理由だった。

 3ヵ年計画とは実験都市埼北市の特区しての計画の事だ。


 今まではの3ヵ年計画は、


 ・AI導入による特区の総能率50%アップ(半日で仕事が終わる計算)

 ・自立型AIの開発及び作業と運用のデータを取る


 この二つだった。


「新たにエモーショナルバグの原因究明と撲滅、が追加されてしまったんだ」

「やっぱり3年で?」

「いや、1年目で一つも達成してないので、2年目でどれか一つでも達成しないと特区計画は中止さ」


 1年後には中止?!

 でもこれは考え方を変えれば、エモバグの原因究明と撲滅を1年間で達成すれば実験都市計画は3年目に突入できるという事だ。

 わたしのプリジェクションキュレーターとしての頑張りで実験都市計画の命運が決まる。

 これは気合いを入れなきゃいけない理由ができたって事。

 でもエモバグの原因って何だろう?

「お父さん、エモバグってどうして出現するの?」

「分からない。ただ、」

「ただ?」

「自然に発生するものではないみたいだね」

 自然に発生しない、という事は誰かが故意に出現させているという事なの?

 なんだか怖い。どうしてそんな事がしたいのか想像が付かない。


「行ってきます、お母さん」

「行ってらっしゃい、あおいちゃん」


 さて次の日は土曜日。

 わたしは今、バスで上里町方面に向かっている。


 埼北市上里町は埼玉県の最北端で群馬県との県境に当たる。

 その隣が本庄でその隣が美里町。

 つまり、美里からは結構離れている。

 だからわたしはあまり上里町に行った事がない。

 もっとも最近の埼北市はバスが多いから行こうと思えば意外と簡単に行けるけどね。


 目的地は全国チェーンのショッピングモール、アイオン。

 二階立てながらファッションとフードショップを中心に様々な店舗が入っている。

 ペットショップや電気店もあり、広い敷地面積を活かして別館にはボーリング場とゲームセンター。

 さらにその隣にはカラオケ屋さんまである。


 わたしはここで梅桃ももちゃんと松木いろちゃんと三人で会う事になっていた。

 いろちゃんの呼び掛けでアイオンに集合する事になったのだ。


 今日は食事とショッピングをして、カラオケに行く予定。

 わたしはカラオケで歌った事はあまりないし、歌うのは苦手なのだが、個室の中でカッコいい変身ポーズを教えてくれるとの事なのでOKしたのだった。

 スマホを前に構えたまま「キュレーティン!」なアレの事だ。

 わたしだけ画面見ながらポチポチってのも様にならない。


 アイオンの正面入口前のバス停を降りるとそこには、背の高いポニーテールの、ブレザーの制服の、伊達眼鏡をかけた女の子がいた。

 人目を引かずに置かないカッコよさは梅桃ももちゃんだ。


 ちなみにわたしもブレザーだった。休日ながら、いつエモバグが現れてもいいようにだった。


「おまたせー!」

 背の小さい、おかっぱ頭の、目がくりっとした、セーラー服の女の子。松木いろちゃんだ。

 紙袋を抱えている。

「あんた、この前もなんか買ってたよね」

 とももちゃん。

「マンガとゲーム。ここに来るとつい買っちゃうんだよね」

 いろちゃんはそういうのが好きみたいだ。

「欲しいゲームが安くなってて。他のハードでリメイク出たら安くなったんだー、ラッキー!」

 中古屋さんで購入したのだろう。


 わたしは小学校くらいまではゲームやってたけど、今はやってないなあ。


「いろはもう回って来たんだ。今日はどこ行く?」

「二人は?」

「服とアクセサリーは見たいかな。あおいは?」

「わたしは二人に任せるよ」

 何しろアイオンには詳しくないのだ。

「今日の目玉はカラオケだけど、午後からかな。ご飯が先がいいよね?」

 といろちゃん。この目配せはやはり変身ポーズの件かな?彼女が考えたと言う。


 ももちゃん、いろちゃんとショッピングに向かう。

 こういうの久しぶり。そう言えばイノベーションに興味を持ってから友達と遊ぶ事はめっきり減ったなあ。


 と思っていたら外が何やら騒がしい。

 さらに警報音が聞こえてきた。

 聞き覚えのある音。

 わたしがヤバンセ美里店で初めてエモバグに遭遇した時と同じ音。


「エモバグが出たっち!」

 近くのプロジェクターからこむぎっちゃんが現れる。

 続いてミムベェとはにぷーも。


 この音はエモバグ警報だったみたい。

 わたし達は外に出た。


 アイオンの敷地は広い。

 アイオンの建物の隣にはボーリング場とゲームセンターがあり、その隣はカラオケ屋。


 その建物の壁を殴りつける巨大な姿は今度は黄色だった。

 黄色いエモバグだった。

 音声合成した抑揚のない大声がする。


『移植したゲームに追加要素を満載するなー!』


<つづく>

【あおいちゃんのイノベーティブ現代用語講座】

・キュレーター

 図書館、博物館、公文書館の職員に使われる言葉。

 日本語では学芸員という言葉に相当するの。

 動物園、分子生物学、インターネットでもキュレーターという言葉はあるよ。

 どれも管理者、監督者と言った意味合いで使われてるみたい。

 プリジェクションキュレーターもエモーショナルプロジェクションマッピングの管理者と言う意味なんだ!

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