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第32話 ありえなーい!?赤いエモバグ出現! 誕生!プリジェクションケラサス! Aパート

 朝起きたら窓の外が明るくて目覚めたわたし。


 寝過ごした訳じゃない。

 それは朝焼けだった。

 眩しく、真っ赤に空が染まっていた。


「あかね!見て、きれいだよ」


 せっかくなのであかねを起こす。


 無言で窓の外に釘付けになるあかね。


「あかねは景色をきれいだと思ったりするの?」


「人間の情緒を正確に再現はできません。

 ですが、一年に一、二回の現象を観測できた事には意義があります。

 それに、あおいの幸魂(さきみたま)係数が上昇している事には達成感を感じます」


 変わった言い方だけど、見せた甲斐はあったと思う。

 わたしもあかねと一緒に見られて嬉しいよ。


「茜色の空、あかねみたいだね」


 赤を基調にしたあかねのヘッドパーツに茜差す風景は幻想的だ。

 日の出のペースに合わせるようにゆっくりこちらを向くあかねも。

 そして、


「それはだじゃれですね」


「違います」


 もう!すぐ雰囲気を壊しちゃうんだから。


 さて、それはさておき、今日は学校に行く支度をする前に事がある。

 お父さんが昨日、ロボットの研究所からあかねのヘッドパーツをもらって来てくれたのだ。

 研究所にあったものを赤に塗装してもらったのが昨日なんだよね。


「これ!かわいいでしょ」


 ツインテール型のヘッドパーツ。

 レジン樹脂製の柔らか素材のテールが肩の高さまで降りている。


 長髪型のヘッドパーツと入れ替えた。


「んー、似合ってるよー!」


 拍手して喜んじゃうわたし。


「あおいの幸魂係数が上昇すればわたくしは問題ありません」


「すっごい上昇してるよー、幸魂!」


 今日もいい一日になりそう!


 朝ごはんを食べて学校へ向かう。


 玄関を開け外に出ると、そこには小人さんや妖精さんが楽しそうに踊っている。


「おはよう!あおいちゃん、あかねちゃん」


「おはよう!小人さん!」


「今日はいい天気ね、あおいちゃん!あかねちゃん」


「そうだね、妖精さん!」


 みんなに挨拶しながら徒歩で学校を目指す。


「これらはプログラムです」


「いいのよ。その方が楽しいでしょ」


 小人さんと妖精さんはプロジェクションマッピングだ。

 美里町はメルヘンをスローガンにしているので、小人や妖精をテーマにしたプロジェクションマッピングが街中に投影されている。


「うわー、あおいちゃん。まだそういうのに声かけてたんだー」


 と、わたし達に話しかけてきたのはクラスメートで幼なじみの編木(あみき)あみちゃん。


「真似する事ないよ、あかねちゃん」


 実は徒歩通学は久しぶり。

 と、言うかあかねにとっては今日が初めての徒歩通学。


 脚部の改良が進んで毎日の通学にも耐えられるようになったのだ。

 そのデータもあかねから取ったんだけどね。


「あかねちゃん、おはよー!」

「皆さん、おはようございます」


 さすがにあかねは有名人。

 通学するみんなに話しかけられる。


「あ、あかねさん、ちぃーっす!」


 元気に駆けながら挨拶してきたのは以前、中学受験の失敗を苦に飛び降り自殺しそうになった少年。

 あかねによって救出されたのだ(飛び降りはしたのだけど)。


 あの後、クラスの友達と遊園地に行ったりしてる内に悩みは吹っ飛んだみたい。


 そんな感じであかねは学校のみんなと打ち解けてきている。

 わたしも鼻が高い。

 きっと人間とのコミュニケーションのデータのサンプルの役目を立派に果たしてくれるだろう。


 と、思っていた放課後の帰り道だった。


「あおい、エモバグだベェ!」


 ミムベェが現れる。

 これがなければ最高の一日だったのに。


「埼北市庁舎だベェ!」


「またなの!」


 マジョリティも市庁を狙ってきた事があったっけ。

 操られたセゾン姉妹を「サイスフィア(さいたま)・リベレーション・ストリーム」で救出した時だ。


「ちゃちゃっとやっつけちゃうからね」


 とは言え、レボリューショナーのエモバグはそれほど強敵ではない。

 今回もそう厄介な事にはならないだろうと思っていた。


 が、それは甘かった。


「色は?」


「それが……、赤いベェ」


「赤……?」


 エモバグとのバトルは色を合わせるのが基本だ。

 色の合ったプリジェクションキュレーターの攻撃でキレキレ攻撃は成立する。


 わたしは青。

 ももはピンク

 いろちゃんは黄色。


 赤はわたし達三人の誰とも色が合ってない。

 誰もキレキレ攻撃ができない。


「それは聞いていた話と違うじゃない!」


「ボクも分からないベェ!」


 どうやら原理原則にそぐわない想定外の事態が起こってるみたい。


 とにかく市庁に向かうしかない。


「わたくしも行きます」


「そうだね」


 見ているものを逐一録画しているあかねを連れて行くのは意味のある事の気がする。


 わたし達は本庄行きのバスに乗り込んだ。


 埼北市の中心、元小山川沿いの緩やかな丘陵地帯。

 城山稲荷神社と本庄城跡の近くに埼北市庁舎はある。

 五階建て、2300メートルの堂々たる姿。


 川から市庁舎に迫るのは初めて見る赤いエモバグだった。


「お待たせ―!」


 すでにももといろちゃんがいた。


「赤いエモバグなんて」


「ジャンルは何だろう?」


 そうなのだ。

 ネットワークのアンダーグラウンドのネガティブな書き込みのエモーションから創り出されるエモバグは色によってジャンルが違う。

 青いエモバグは政治経済、社会問題。

 ピンクなら芸能。

 黄色ならサブカルチャー、つまり漫画、アニメ、ゲーム、特撮。


 だったらこの赤いエモバグのジャンルは何だろう。


「とにかく行くわよ」


 サクラがわたし達の肩を叩いて、スマホを取りだす。

 そう。とにかく何とかしなければ。


「キュレーティン!」


 わたし達は変身した。


「咲き誇るキュレーター、プリジェクションサクラ!」

「実りのキュレーター、プリジェクションペアー!」

「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」


 市庁に迫ろうとするエモバグに向かって行くわたし達。


 そこでエモバグの抑揚のない大音量の雄叫びが。


『危険な紛争地域に行って取材するのを非難するなー』


「これは……?」


「社会問題じゃないの?」


「じゃあソーダちゃんの相手?」


 これは社会問題なんだろうけど、わたしにはこのエモバグへの反論が思い付かない。

 キレキレの反論をしながらのキレキレ攻撃はできそうにない。


 わたし達はただただ困惑するばかりだった。


「どうかね?プリジェクションキュレーターの諸君」


 わたし達を見下ろす声に気付いた。


「わたしの赤いエモバグは」


 市庁舎に向かう通路の雨避けの屋根の上にいたのは、やはり、仮面と金の刺繍の施された礼服の姿、エボリューショナーだ。

 ちなみに髪は短髪で、礼服の色は銀。


「初めまして。ガールズルールのレボリューショナー、アンダーだ」


 特徴的なのは筋肉質な事。背も高い。

 男の人みたいだが、声の高さから女性であると判断できる。

 ガールズルールだしね。


「また新しいのが出てきたの?」


 ウンザリするサクラ。

 これで五人目だしね。


「赤いエモバグなんてどうやって倒せば……」


 ペアーも狼狽している。


「レボリューショナーのみが操れる赤い社会問題のエモバグだ」


 両手を広げて宣言するアンダー。


「赤い社会問題……」


 やはり別ジャンルか。


「だったら50回攻撃してエモーショナルパワーをためるだけよ」


 サクラは一歩前に出る。


「ソーダ、ペアー。あいつは任せたわ」


「うん」


「オッケー、サクラちゃん!」


 強そうだけど、ペアーと二人掛かりだし、何とかできるかな、と思ったがそうはいかなかった。


「ぶっちゃけた話、そうはいかないじゃん」


「ここだけの話、そうはいかないじゃん」


 サクラの前に白い礼服のシンクロニシティ姉妹が。


 これではサクラもエモバグに近付けない。


「君達に我々の革命をはばむ事はできない」


 不敵にほほ笑むアンダー。


「今こそレボリューションの狼煙が上がる時が来た」


 三人のレボリューショナーに未知の赤いエモバグ。


 いきなりの大ピンチが到来したのだった。

【あおいちゃんのイノベーティブ現代用語講座】

・ぶっちゃけた話

何も隠し立てせずに、さらけ出した話。

「本当のところを言えば」といったニュアンスで使われるよ。

「ぶちまける」と「打ち明ける」の2つの言葉が語源みたい。

割と新しい言葉。


・ここだけの話

漏れない秘密はいつも筒抜けで、口の固い奴なんていない。

って事は、ここだけの話もぶっちゃけた話も大差ない事になるよね!

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