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第2話 若泉に吹き荒れる桜吹雪!プリジェクションサクラは本庄育ち Bパート

『整形は見れば分かるー!バレバレはイタすぎるー!』

 お花見客でにぎわう若泉公園で、インターネットのアンダーグラウンドの悪意のエモーションの化身、エモバグが暴れていた。


 バスで若泉公園前に降りたわたし達。こんな状況でも自動運転バスは構わず運行する。

 もっとも本当に危険な災害時などは運行を停止するけど。


『親からもらった身体をいじるなんてー!親が泣いてるぞー!』


 巨大な人型の怪物は今回はピンク色だった

 EPMで作られたものでありながら現実に影響を及ぼすそれは、移動するだけで桜の枝をバキバキ折っている。

 桜の木を倒されたりしたら、怪我をする人がいるかも知れない。

 早急に手を打たなければ!


「わたしが行くわ」

 梅桃さんだった。伊達眼鏡を外し、メガネケースをしまったバッグを地面に置く。

「一人で大丈夫?」

「ピンクのエモバグならわたし一人で行くわ」


 梅桃さんはスマートフォンを取り出した。

 そして、両腕をクロスしたポーズから電源オンのスマートフォンを前方に向けて、つまり画面をみないでアプリをタッチした。

 ピンクの丸に黒字でpsyと書かれたアプリを。


「キュレーティン!」


「キュレーティン?!」

 わたしはびっくりした。

「わたしが考えた変身ポーズとかけ声よ。カッコいいでしょ?」

 松木さんが自慢気に言う。

 確かにカッコいい。

 画面を見ながらポチポチやるのとは段違いだ。

「アプリを画面の端っこに持って来るのがポイントなんだ。後で教えてあげるね」

 キュレーターになってキュレーティングするから「キュレーティン」か、ふむふむ。


 そう思ってる間に梅桃さんにプロジェクターから光が降り注ぐ。


 髪と冬服ブレザーがピンク色になり、袖とスカートの裾に白いフリルが現れる。

 胸にピンク色の宝石の付いたブローチが現れるのもわたしとほぼ同じ。

 羽飾りもわたしと同じ。

 違うのはポニーテールが太ももに届くくらい伸びた事。

 ただふわっとしただけのわたしの髪よりゴージャス。


 やっぱり唇や眉毛、まつ毛もピンクだった。


「じゃあ行って来る」

 ジャンプを繰り返し、あっと言う間にエモバグに近づく。


『整形は見れば分かるー!バレバレはイタすぎるー!』


 小枝を巻き込みながらエモバグはパンチをしてきた。枝が次々折られる耳障りな音が響く。

 梅桃さんは瞬間的にエモバグのふところに飛び込んで、相手のお腹に正拳突きを放った。


「どうせパソコンで加工したグラビアアイドルの写真なんか見分けられないのに!整形の痕跡を見つけたくらいで得意になるのは滑稽だわ!」


「ももちゃんは小学生の頃、空手を習ってたんだって」

 と、松木さん。どうりで鋭い正拳だと思った。

 ぐらつくエモバグだが、すぐに体制を立て直して、再度殴りかかってくる。


『親からもらった身体をいじるなんてー!親が泣いてるぞー!』


 ひらりと華麗にジャンプして身をかわした梅桃さん。

 そのまま桜の幹に足を着け、反動で飛びかかりエモバグの顔面にパンチ。


「それはあなたにカンケーない!」


 その攻撃で胸元のブローチが光輝く。

「え、早い!まだ二回しか攻撃してないのに」

「キレキレ攻撃はキレの良さでエモーショナルパワーの溜まりが違うぷー」

 はにぷーも得意気だ。

 梅桃さんの攻撃はキレッキレって事か。


 エモバグが怯むと梅桃さんは右手を高く掲げ、叫んだ。

「サクラブリザード!」

 梅桃さんの周囲にプロジェクションマッピングによるエモーショナルな桜の花びらが舞う。

 その桜吹雪はエモーショナルな竜巻になってエモバグに向かって行き、その全身を覆う。


 桜吹雪が散るとエモバグも姿を消していて、ピンク色に輝く球体が残っただけだった。

「サイスフィア、ゲットぷー」

 はにぷーがそれをサイボックスにしまった。

 エモバグは倒されたのだった。


「鮮やかー!凄いよ、梅桃さん」

「わたしの事はももでいいよ。面倒でしょ」

 実にさばさばしていた。

「じゃあわたしもいろで」

 と松木さん。

 とにかく梅桃ももちゃんはかっこよくて美人で全てにおいて完璧だった。

「さて、ちょっとお花見して帰ろっか」

 そう言うももちゃんはまた伊達眼鏡をかけた。

「そうだね、行こうよ。あおいちゃん」

 松木いろちゃんが手を引っ張ってくる。

「うん!」笑顔で答えるわたし。


 正直エモバグとの戦いなんて不安でいっぱいだったけど、こんなに強い仲間がいればきっと大丈夫。

 満開の桜がとっても気持ちいい。若泉公園の坂道を下りながらわたしはそう思った。

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