第28話 AI少女あかね、学校に行く! あおいとあかねの新学期! Bパート
「キュレーティン!」
わたしは昇降口で変身して外へ。
校庭に出ると校舎の中から歓声が。
応援してくれるのは嬉しいけど、できれば避難して欲しいかなあ。
とは言え、実は何とかできる自信はあった。
この前のビバークホームもそうだけど、相手は巨大エモバグではないし、キュレーショナーのような存在もいないからだ。
「サクラもペアーも向かってるベェ」
ミムベェは言ってくれたけど、わたしだけでやっつけちゃうつもり。
ズシンズシンと音を立てて迫る青い巨人に突進するわたし。
『ロボットが反乱したら危険だー!』
雄叫びを上げるエモバグにわたしから近づき、
「それは人間の関わり方次第でしょ!」
お腹を狙った飛び膝蹴り!
「しっかりガイドラインを作る事が大事なんだからー!」
からの、ももを狙った下段蹴り。
相手はひるんだが、すぐさま殴りかかって来る。
『ロボットの中身は単に機械が動いているだけだー!』
しかし、わたしはよけない
アッパーとフックの中間の軌道でパンチを放つ。
「そんなの人間だって一緒でしょ!」
ガゼルパンチ!
「世界に自分で触れて、社会と周りとの関係性を学んで、人間になっていくんでしょ!」
さらにローリングソバットが炸裂。
『ロボットに魂はなーい!』
エモバグの踏み付け攻撃!
しかし、わたしはそんなものは腕で、むしろ片腕で押し返す。
「魂はあるよ!わたしはエモーションを分けてもらったから分かる!」
そう。メタAI化したAI達のエモーションを受け取った時、わたしは確かに彼らのエモーションを魂を感じたんだ。
「AIはただの便利な計算機じゃない。
人間の都合を何でも叶えてくれるものじゃない」
これはちょっとだけ耳が痛いけど。
わたしは左右の下段蹴りの連打を畳みかけ、
「AIは!ロボットは!わたし達の新しい友達なんだからー!」
大技の胴回し回転蹴り!
「エモーショナルパワーが貯まったベェ!」
ミムベェの声が聞こえる。
見ればわたしの胸元のブローチが輝いている。
ブローチの前で手をかざす。
ブローチの光が両手の間に移動する。
そのまま腕を伸ばして……
「ソーダスプラッシュ!」
エモーショナルな炭酸を受けた青バグは消滅していく。
わたしの勝利だ。
「楽勝だったベェ。あおい」
「エモーションが成長してるのかな」
校舎から歓声が上がる。
エモバグのいた場所にはやはりあおいサイスフィアが。
「またブローチに入れておくね」
でも、今度親バートンが現れたらどうするか聞いておこう。
この前ちょっとだけ現れたのに、その後はさっぱりなんだよね。
さて、教室に戻ると、
「わたしはあなたの友達ですか?」
元に戻ったら、あかねが尋ねてきた。
「うーん、どっちかって言うと家族かなあ」
あかねのハードディスクが「ヒュオーン」と音を立てる。
思考を巡らせている時の音だ。
「家族……。親族や肉親関係による共同体の事ですね。
または情緒的な繋がりによる共同体の事ですね。
この場合、後者になりますか?」
「後者になりますね」
あかねは網羅的だ。
その後はあかねだけでなく、わたしまで質問攻めにあって大変だった。
そんなこんなで一日が終わる。
あかねの学校一日目は、エモバグに遭遇するトラブルはあったものの、無事に終了した。
その夜。
わたしはあかねと一緒のベッドで寝ている。
あかねは寂しがったりしないし、横にならないと疲れるなんて事もない。
でも、なんかほったらかして寝るのは嫌なのでこうしてるんだ。
普段のあかねは横になるとスリープモードに入って、ハードディスクも静かになる。
でも、今日は特別。
初めての学校にあかねは大興奮。
頭のハードディスクもずっとキュンキュンいってる。
「学校にはあんなに子供達がいるんですね!
あれだけの人数の幸魂係数を上昇させたら、すごいイノベーションだと思います!」
「集団生活のデータも労働している仲間達に、早くフィードバックしたいです!」
「あおいが変身していた時に観測したエモーションはすごいです!」
こんな感じでしゃべりっぱなし。
「ふふ、学校が楽しいならよかった……、ふあ~ぁ……」
大きなあくびが出てしまう。
楽しそうなあかねを見てるのは楽しいんだけどね。
「そろそろ眠くなってきちゃったみたい……」
「もう23時です。あおいはそろそろ就寝するべきです………………、
!……わたくしのせいですね、ごめんなさい」
ハードディスクが「シューン」と鳴って落ち込むのも、なんだかかわいい。
「明日もあさってもいっぱいお話聞かせてね。おやすみ……」
「おやすみなさい、あおい」
わたしはとっても幸せな気分。
あかねにもっとたくさん、楽しい事を経験させたい。
あかねに魂を与えられて本当によかった。
あかねさえいてくれれば、それだけでわたしは幸せになれるんだ。
わたしは気持ちよく眠りについた。
次の日、朝ごはんの時、お父さんが改まった感じでわたし達に言った。
「これはすぐじゃないけど、お母さんの望みを果たしたいと思うんだ」
夏休み中にお母さんのお墓参りに行った。
そして、その時にわたしもそうしたいと思った。
お母さんが果たせなかった願い。
それがもしかしたら果たせるかも知れない。
「あかねちゃんもいいかい?」
「はい、わたくしも同じ思いです。世界の幸魂係数が大きく上昇するでしょう」
そう、鍵を握るのはあかねなのだ。
あかねの成長こそが鍵なのだ。
「頑張ろうね、あかね!」
「はい、頑張ります。あおい」
わたし達の新しいイノベーションが始まろうとしていた。




