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第27話 それでもわたしは立ち上がる イノベーションは終わらない! C、D、Eパート

 変身を解除したわたし、葵上あおい。


 ももとあの子のところへ。

 屋上から位置は分かってたんだ。


「あおいちゃん……」


 そこには松木いろちゃんもいた。


「こむぎっちゃんから聞いたよ」


 いろちゃんはこむぎっちゃんから事のあらましを聞いていたようだ。


 わたしを見つけて泣き出すいろちゃん。


「ふえぇぇぇん、元気そうでよかった。心配したよぉ……」


 泣き出すいろちゃんを抱きしめるわたし。


「もう大丈夫。心配かけてごめんね」


 さて、わたしはあの子の前に立った。

 気まずい。

 覚悟を決めて来たんだけど、やっぱり緊張する。


「わたしの身勝手であなたを創ってごめんなさい」


 頭を下げて謝る。


「あなたはあなた。

 わたしのお母さんじゃない。

 それはちゃんとわきまえるから」


 あの子は言葉を発しないが、頭から「ウィーン」と激しい音がする。

 ハードディスクの駆動音だ。

 これは思考を巡らせている音かな。


「了解しました。わたくしは問題ありません」


 しばらくすると返事が返ってきた。

 思ったよりすんなりな感じがする。


「これからわたくしはどうするべきですか?」


「あなたが決めて。あなたは何がしたい?」


 この子は作業用のロボットと違って目的を与えられていない。

 仮に何もしたくないと言われたらそれを尊重するつもり。


「わたくしは与えられた本能に従います」


 ここで茜の頭から「ギュイーン」と大きな音がした。


「わたくしの本能は、この世界の幸魂係数を増加させる事です」


「幸魂……係数?」


 何を言っているのか、分からなかった。


「わたくしが目覚めた時、声が聞こえました。

『幸魂は、さいたまは誰の心の中にもある。世界中にさいたまはあるんだよ!』と」


 それは確かにわたしの言った事だ。

 幸せになろうとする本能を与えたのだ。


「わたくしの生きる目的は、世界の幸魂係数を増加させる事です」


 幸魂が本能とは言ったけど、変な言い方するなあ。

 とにかく茜には活動する意志があるようだ。


「そのために何をすればいいのかな?」


 世界を幸せにするためにやる事なんてパッと思い付かない。


「わたくしは、あなたと一緒にいたいです」


「えっ……?」


 これは予想してない答えだった。


「わたしはキモいんでしょ?」


「はい」


 うう……。


「でもキモいけどスゴい、ももがそう言いました」


 思わずももの方を見ると、赤面して目をそらした。


「今日、あなたのエモーションの輝きを見て、そうなのかも知れないと思いました。

 わたくし達に命を与えたあなたの事をもっと知りたいです」


 頭のハードディスクから「キューン」と音がする。


「わたくしはあなたの家にいてもいいですか?」


「お父さん……。この子と一緒にいてもいい?」


「もちろんさ」

 笑顔で答えてくれるお父さん。


「よかったじゃない」

 ともも。


「うん」

 涙が出てきちゃう。


 でも、あともう一つ、茜に確認しなけばならない事があった。


「あなたには自分の好きな名前を名乗って欲しい」


「わたくしの……、名前ですか?」


「あなたは新しい名前で新しい人生を歩んでいいんだよ」


 ロボットだけどこういうのは人生でいいよね。


「わたくしは茜で問題ありません」


「ダメだよ。これはけじめだよ。無責任にあなたに命を与えちゃったわたしの」


「あなたにとってわたしがお母さんの名前を名乗る事は不快ですか?」


「そういう訳じゃないよ」


「あなたにとって必要がなければ、わたくしは名前を変更しません」


「何があるでしょ。名乗りたい名前」


「特にありません」


「えー」


「これじゃらちが明かないじゃない」

 ももだった。


「いろ、なんかアイデアない?名前考えるの得意でしょ」


「んー」


 いろちゃんはちょっとの間、難しい顔で悩んでいた。

 そしてわたしと茜の手を取って言った。


「ひらがなで『あかね』でどうかな?」


 きょとんとするわたし達。

 茜の頭からは「ヒュオーン」と聞きなれない音がした。

 多分混乱しているのだろう。


「あおいちゃんのお母さんと区別できて、せっかく付けてもらった名前を大事にできる名前。

 どうかな?」


「あ・か・ね……」


「ほら。同じでしょ?」


「同じですね……。同じですが区別できます」


「いいね!すごくいいよ。いろちゃん!」


 やっぱりネーミングと言ったらいろちゃんだ。


「じゃああなたの名前は今日から『あかね』ね」


「はい。わたくしの名前は『あかね』です」


 こうして自律型AI少女、あかねがわたしの家に住む事になった。

 あおいちゃんのイノベーティブな毎日はまだまだ続くのだ。


 ☆☆☆


 わたしは梅桃もも。

 結局あおいによってエモバグは倒され、わたし達が変身する必要はなかった。


 いろは一旦、千葉に戻った。

 エモバグが現れたのだから、また近い内に埼北市に戻ると告げて。


 わたしはあかねと一緒にあおいの家へ。


 その時、あおいの部屋に入る機会を得た。


 ロボットの部品だろうか、機械の部品が部屋中にあった。

 分厚い本もそこら中にあり、女の子の部屋らしくはない。


 座布団を渡され腰を降ろす。


「あかねが行ってたんだね。

 迷惑かけてごめんね」


 ベッドに腰かけたあおいに気まずそう言われた。


「別に、楽しかったよ」


 らしくないあおい。

 普段通りとはいかない。


「わたし、間違ってたよね」


「そうね」


 思い詰めた表情。

 状況は受け入れたが、今度は罪の意識を感じているようだ。


「お母さんのお墓参りにも行かなかったし……、

 お父さんにも心配かけたし……、

 あかねだってわたしのわがままで…………」


「そうね」


 すすり泣くあおい。


「わたし……、キモいよね……」


「そうね」


 両手で顔を覆って涙をぬぐっている。


「わたし、わたし……、ヤバい奴だよね……、えっ?」


 あおいを抱きしめるわたし。


「もういいって」


 見てられなかった。


「もも……?」


「今回ばっかりは青バグを引き受けてやる気だったのに。

 無理ばっかりするんだから」


 きょとんとしているあおい。


「わたしの事なんかいいから、ちゃんと泣いていいんだよ」


 お母さんの死を受け止め、あかねをあかねとして認める。


 そう決心したのは嘘じゃないだろう。

 でも、心の底ではそんなにきれいに納得してないはずだ。


「お母さんのためにちゃんと泣いていいんだよ」


 これはわたしにしかできないと思った。


「いいじゃない。わたし達、友達でしょ?」


「友達……」


「友達じゃなかった?」


「ううん…………。友達……」


 あおいは止まらない涙を拭きながら言った。


 崩れるように寄りかかってくるあおい。


「ううぅ……、お母さん。お母さん」


 背丈はわたしとそんなに変わらないのに、あおいの身体は華奢で小さく感じた。

 あおいはこの小さな身体で、たくさんの事を抱え込んできたんだ。


「うわあああーん…………!お母さーーーん!」


 この日、あおいはお母さんのためにちゃんと泣いた。

 自分の悲しみをちゃんと外に出した。


 希望が絶望に変わっても、また新しい希望は生まれる。

 絶望が希望に変わる事だって、またある。


「ありがとうね、もももも」


「ももももってゆーな……」


 あおいはわたしの友達。

 ちょっと変だけど、ちょっとスゴい、わたしの友達。


 ☆☆☆


 最後はあおいちゃんだよ。


 次の日、朝日がすがすがしい、いい天気。


 結局、あの後あかねはメンテナンスで研究所に送る事になった。

 今日、帰って来る予定。


 出かけるお父さんを見送って、家に戻ろうとしたら、ももから電話。


「ちょっとあおい!あんたが正体バラしたから、わたし達までバレちゃったじゃない!」


 どうやらわたし達三人が、学校が違うのに頻繁に会ってた事は、一部で有名だったみたい。


「なんで名乗った訳?」


「いやー、テンション上がっちゃって」


「ふざけるな!ライブハウスにも問い合わせ来てるって」


 有名だったのはやはりアイドルのももが注目されていたからだろう。

 ライブ中抜けの件から、梅桃さくらがプリジェクションサクラなのが特定されたようだ。


 比較的騒がれてはいないけど、ペアーがいろちゃんなのも特定されているみたい。


「ごめーん!許して、もももも。友達でしょ」


「それとこれとは話が別!

 あとももももって言うな!」


 とにかく、いろいろあったけど、ついに自律型AIの時代は訪れた。


 しかし、エモバグが現れた事は捨て置けない。


 震災から8年目の2019年。

 こうして、実験都市2年目の下半期は始まろうとしていた。

「空の青さを知る人よ」の予告を見て戦慄しました><

名前については偶然なんです無関係なんです

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