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第18話 明かされるエキセントリックの過去! だけど深まるディスコードの謎!? Aパート

 キュレーショナー、エキセントリックの正体が判明した。

 それはライブハウス、レッドサインのオーナーであるリョウさんの昔のバンドメンバーだった。


 名前は芽崎(めさき)みどり、今は18歳との事だった。


 わたし達は営業前の劇場でリョウさんの話を聞いていた。

 ミムベェ、はにぷー、こむぎっちゃん、子バートン(わたしのお父さん)もいる。


「バンド時代に知り合ったファンの女の子だったが、バンドに入りたいって言ってきたんだよ」

 懐かしそうに語るリョウさん。


「ロックの大好きな子で、いい声を持ってた」

 わたし達は歌ってるところを見た事はないが、言われてみると低音のよく響く声なのかも。


「俺達はちょうど解散する時期だった。でも、俺がライブハウスを作ると言ったらそこでロックをやりたいって言ってね。

 でもちょうどその頃、埼北市の実験都市計画の話が持ち上がった。エモーショナルプロジェクションマッピングを利用したアイドルプロジェクトの話を聞かされた」


 実験都市計画はエンターテイメントの分野にも及んでいた。

 プロジェクションマッピングと相性のいい分野だよね。


「二択陽一博士や、葵上さんの話を聞いて、やってみたいと思った。俺は音楽が好きなのであって、ロックだけにこだわってる訳じゃあない」


「でも芽崎には理解してもらえなかった。連絡がつかなくなったと思ったら、親もどこへ行ったの分からないって話だったから、心配してた」

 そんな事があったんだ。

 エキセントリックがこの街のイノベーションを憎む理由はこれだったんだ。


『プリジェクションキュレーターの諸君』


 その時、男の人の低い声が聞こえてきた。


『親バートン……?』

 セゾン姉妹とのバトルの最中、話しかけてきた謎の声。

 お父さんは二択陽一博士かも知れないって言ってたけど。


「いつでも話しかける事ができるの?」

 変身してる時だけだと思ってた。


『EPMのプロジェクターのある場所だけだ』


 この部屋にはSAH40のライブ演出用のプロジェクターがある。

 現在はライブ用ではなく、リラックス用の星空の映像だ。


「今まで何してたの?」

『わたしは姿を隠していなければならない。ネットワーク上ですらね。

 堅牢なプロテクトの中から出るのは本来好ましくない』


「それは大変な事ね。でも今お取り込み中よ」

 ももは苛立ち気味に言った。

 確かに話に割り込まれた訳ではある。


『もちろん、手短に済ませる。用件はエキセントリックのコーデを持つキュレーショナーの事についてだ』


「なんですって……!」

 今まさにわたし達がお取り込み中の案件だった。


「エキセントリックがどうしたって言うの?」

 もちろんももは食いついてきた。


『興味を持ってくれたようだね』

「さっさと言いなさい」


『いいだろう。君達はすでにあのキュレーショナーが創り出したエモバグから、三色のサイスフィアを手に入れている』


 そう、この前ももといろちゃんも新必殺技を編み出して、巨大エモバグを倒したのだ。


『つまり君達はエキセントリックのコーデをディタッチする事が可能になったという事だ』


 そう言えばそうだ。

 ディタッチというのは引き離すとか引きはがすという意味。

 サイスフィア(さいたま)・リベレーション・ストリーム、あの技を使えばキュレーショナーを元に戻す事ができる。


『この事実を伝えるために危険を冒して君達と連絡を取った』


「マジョリティってそんなに危険なの?」

 ネットワーク上でちょっと接触するのもヤバいのだろうか?


『できる限り接触したくない。わたしに近い存在からは、ハッキングをされる危険がある』


 ゴッドGというマジョリティのリーダーらしき人物の事だろうか。

 セゾン姉妹も実体を見た事はないらしい。


『君達のエモーションの成長は著しい』

「そうなの?」

『エモーショナルアーツの成長など、本来機能としては盛り込まれていない』

 そうだったんだ。


「あおいちゃんが特別なんじゃ?」

「そうね。エモーショナルなメントヌなんて、訳の分かんない事を思い付くのはあおいだけよ」

「でも二人だってパワーアップしたよ」


「ペアークラッシャーハーヴェスト」と「サクラブリザード・繚乱」、どっちも巨大エモバグに通用した。

「ブーストソーダスプラッシュ」と同等の技だ。


『影響し合って、高め合う関係なんだろう。君たちは想像以上の力を発揮している』

 実感ないけど、なんか褒められてるみたい。


『君達プリジェクションキュレーターだけが頼りだ。マジョリティの件は宜しく頼む』


 それを最後に、親バートンの声は聞こえなくなった。

 でも、重要な情報をもらった。


「どうしたんだ?三人とも急にぶつぶつ言い出して」

 リョウさんやお父さん達はきょとんとしていた。

 やはり親バートンの声はわたし達にしか聞こえない。


「また親バートンの声が?」

 お父さんは興味津々だが、今はそれどころじゃない。


「聞いて、オーナー。芽崎さんの事を何とかできるかも」


 ももはリョウさんにさいたま・リベレーション・ストリームの事を説明した。

 キュレーショナーとコーデの関係や、サイスフィアについても。

 リョウさんは困惑しながらであるが、なんとか理解してくれた。


「つまり芽崎が使ってるコーデを消滅させる事ができると?」


「はい」

「危険はないのか?」

「タイミングが合わせられず、失敗すると危険があります」


 親バートンの言い方を借りるなら、「身体と精神にダメージを与え命を奪う可能性もある」だ。

 そう、危険はかなりある。


「でもわたし達はすでにこの技を成功させています」


 セゾン姉妹はその後、すぐに退院し、もう学校にも通い始めているという。


「そうか……」

 リョウさんはそれでも心配みたい。

 無理もないけど。


「でもさ」

 ここでいろちゃんが口を開いた。


「コーデを消滅させても芽崎さんの気持ちに整理がつく訳じゃないんじゃないかな」


 確かに。

 セゾン姉妹は最終的には操られていただけで、戦意を喪失していた。


 でも、エキセントリックはコーデを失ったとしても、アイドルとその盛り上げのきっかけとなった実験都市のイノベーションへの敵意を失わないかも。


「うーん、エキセントリックを説得してからにしないとダメかあ」

 わたしは頭を抱えてしまうが、


「あんた達、しっかりしなさい」

 ももだった。


「エキセントリックはテロリストよ。これ以上被害が出る前に無力化させる」

 ももは結構ドライだった。


「危険な行為は絶対に止めさせる。アイツの気持ちなんか関係ない」

 まあ、一利はあるんだけど。


「でもオーナー、一つだけ聞かせて下さい」

「なんだい?さくら」


「ロックミュージシャンを目指してたのに、今アイドルのプロデュースをしてるのはなんでですか?」


 なんだかエキセントリックの代わりに聞いてるみたい。

 ちょっとリョウさんの顔色が変わる。


「最年長のメンバーが三十歳になったからだな。元々そこまでで見切りをつける約束だった。みんな今は他の仕事についてる」


「リョウさんは音楽に関わってます。まだ見切りは付けてないんじゃないですか」

「自分の才能には見切りをつけてるよ……」

 少し言いよどむリョウさん。ももはさらに続けた。


「芽崎みどりのためなんでしょ」

「…………ふぅ」

 リョウさんはうなだれてため息をついた。


「あいつの才能は本物だが、ロックにこだわらない方がチャンスが広がる。ちょうどいいタイミングの実験都市計画だった」


 リョウさんは芽崎みどりにこそSAH40に入ってもらいたかったのだ。


「でもアイツの気持ちを考えるべきだったんだろうな」

 音楽を愛するリョウさんとロックを愛する芽崎みどり。

 想いがすれちがってしまったんだろう。


「オーナーの想いは伝えます。絶対に」

 ももは言った。

「この街の平和を守る事が第一だけど、できるだけの事はします」


「ああ。それでいいさ」


「君は強いな」

 少し元気そうになったリョウさん。


「君達に任せるよ」


 ももはやっぱりしっかりしてるんだよね。

 強くて優しい。


「リョウさん、わたしも頑張ります!ももももと一緒に!」

「あたしも!あたし達はヒーローなんだから!」

わたしといろちゃんも気合い十分!


「しっかりやるわよ」

 わたし達の肩をつかむもも。

 円陣でも組むのだろうか。


「あとあおい」


 ももはそのままこっちに顔を近づけて来る。


「ももももっていうな!」


「ぎゃー!」


 わたしはデコピンされた。


<つづく>

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