第15話 カリヴァリ君食べ放題!? あおい達のわくわくアイス工場見学! B、Cパート
『生活保護でパチンコに行くなんて許せないー!』
カリヴァリ君の総本山、「赤域乳業本庄千本さくら『5S』工場」へ見学に来たわたし達。
あろう事か30分の試食タイム目前でエモバグの襲撃を受けてしまう。
「キュレーティン!」
物陰で変身するわたし達。
近くのEPM用のプロジェクターから光が照射され、わたし達の制服が変化していく。
色はももはピンク、いろちゃんは黄色、わたしは青に変わる。
胸元のリボンやスカーフの位置には大きな宝石型のブローチが。
服の袖と、スカートの裾には白いフリルが付く。
髪の毛、まつ毛、眉毛、唇もそれぞれの色にチェンジ。
髪の毛もなんとなくフワッとチェンジ。
ただし、もものポニーテールは腰に届くくらい長くなった。
三人ともお揃いの羽飾りのようなカチューシャが装着される。
袖は夏服仕様の半袖だよ。
「咲き誇るキュレーター、プリジェクションサクラ!」
「実りのキュレーター、プリジェクションペアー!」
「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」
初のプリジェクションキュレーター(夏服)の揃い踏みだ。
前回はバラバラに変身したからね。
「もう来やがったのか!プリジェクションキュレーター」
エモバグとエキセントリックを迎え撃つわたし達。
「いつもいつも邪魔な連中だぜ」
「邪魔はそっちだよ!試食タイムまでにやっつけちゃうからね!」
一歩前に出るわたし。
青いエモバグが相手なら、わたしが頑張らないと始まらない!
試食タイムも始まらない!!
「まあ、そうあせんなよ」
エキセントリックはそう言うとふところから何か取り出した。
それは黄緑色のバイザーだった。
キュレーショナーの衣装同様、刺々しいデザインの。
「あたし用のキュレーションサイトが完成したんだ」
エキセントリックはバイザーを仮面に取り付けた。そして、叫んだ
「うんざりなんだよマジョリティー!」
地面からもう一体の青バグが。
それは何も叫ばず、最初の一体と合体する。
エモバグは二倍以上の大きさになった。
セゾン姉妹とのバトルでも猛威を振るった、キュレーションサイトによるエモバグの巨大化だ。
『自立した大人は何事も自己責任!それが資本主義のルールだー!』
エモバグは工場の庭に生えているヤシの木を蹴飛ばした。
軽くヤシの木は薙ぎ払われぶっ飛ばされてしまう。
ちなみにこの工場のヤシの木はフルーツフレーバーにちなんで、わざわざ九州から取り寄せられている。
「やっぱりすごい力ね」
巨大エモバグのパワーにサクラは驚いている。
「あのバイザーがキュレーションサイトなんだね」
ペアーも同様で、ショックを受けていた。
それはもちろんわたしも同じ。
わたしはセゾン姉妹の時はちょっとけがを負う事になったし。
でも、今回のわたしは全くひるんでいない。
「一回勝ってるもん。さっさとやっつけちゃうよ」
『生活保護費が国や自治体の財政を圧迫しているー!』
巨体から繰り出される風圧を感じるほどのパワフルなパンチ。
しかし、わたしはそれを上半身をそらして、素早くかわし、
「全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を持っているんだよ!」
そのまま横蹴りを繰り出した。
軽い攻撃なので、巨大エモバグはよろけただけだった。
『生活保護でパチンコに行くなんて許せないー!』
すぐさまその巨体で踏み付けて来る。
その踏み付けも地響きがするようなパワフルさだったが、その分隙も大きかった。
「その問題と本当に困ってる人もいっしょくたにして、みんな一律に生活保護費を減額するのは話が違うでしょ!」
エモバグのふところに飛び込んでボディブロー。
『自立した大人は何事も自己責任!それが資本主義のルールだー!』
すぐに相手は接近したわたしを掴みかかって来る。
わたしは横にかわすとすぐさまジャンプ。そして、
「あなただって社会保障は利用してるんでしょ!」
エモバグの顔面に掌底打ち。
「ゲスの勘繰りは貧困強制社会を生んで、自分達の首をしめる事になるだけなんだからー!」
そして、さらに空中でかかと落とし!
「必殺技いけるベェ!」
ミムベェの叫ぶ声がした。
ここでわたしの胸元のブローチが光輝く。
少し多めにエモバグとの距離を取る。
通常のソーダスプラッシュは巨大エモバグには通用しない事は前回学習した。
「ちぃっ!させるかよ!」
エキセントリックはそう言うとエモーショナルなギターを出した。
わたしから必殺技の気配を感じ、邪魔しに来る。が、
「あんたの相手はわたし達よ」
「ソーダちゃんの邪魔はさせないよっ!」
サクラとペアーがカットに入る。
2対1の攻防が始まった。
わたしはこの間に必殺技を完成させる。
ソーダの勢いを増すイメージをエモーションとしてブローチから出す。
腕を前に突き出すと、エモーショナルなメントヌが現れた。
そして、ブローチからエモーショナルなソーダを発射する。
「ブーストソーダスプラッシュ!」
エモーショナルなメントヌに触れたソーダスプラッシュは、勢いを増す。
滝のような激流が巨大エモバグに向かって行く。
それを受けた巨大エモバグは雲散霧消する。
「カリヴァリ君の恨みは恐ろしいのだ!」
後には青い光の玉、サイスフィアが残される。
「キュレーションサイトでもダメか!」
エキセントリックは飛び去って行った。
「サイスフィアゲットだベェ!」
ミムベェはサイスフィアをサイストレージにしまった。
「やったね!さあ早く戻ろうよ!」
わたしは試食タイムが待ち遠しくて仕方がない。
でも、サクラとペアーは神妙な面持ちだった。
「どうしたの?」
「今回は青いエモバグだったからよかったけど、他の色の巨大エモバグを出されていたらどうなっていたか…」
「そうだね。あたし達の必殺技は多分通用しないよー」
二人は必殺技の威力を気にしているのだった。
通常のソーダスプラッシュが巨大エモバグに効かなかったのなら、サクラブリザードとペアークラッシャーも確かに効果がないのかも知れない。
「二人も必殺技をパワーアップしちゃえばいいんだよ」
わたしは言ってみたものの、
「どうやって?わたし達がメントヌ出したってしょうがないでしょ」
サクラの意見に反論できなかった。
「それはエモーショナルな成長が鍵になるベェ」
ミムベェだった。
「あおいは炭酸をパワーアップさせるイメージをエモーショナルなメントヌにしたベェ」
「それはソーダがエモーショナルな成長を成し遂げたという事ぷー」
はにぷーも現れた。
「大丈夫。二人もきっとできるっち」
これはこむぎっちゃん。
「さあ早く元の姿に戻るんだ」
そして、最後は子バートン、ではなくお父さんだった。
エモバグが倒された事で工場の人達も集まり始めた。
声援を送ってくれたりしてくれてるけど、長居は無用だ。
元の姿に戻り、待合室に戻るとお父さんや実験都市計画スタッフがいた。
「じゃあ30分の試食タイムを始めましょう」
工場の案内の人に付いていき、試食コーナーである「カリヴァリ君広場」ヘ。
お父さんやももやいろちゃんと話しながらだから、せいぜい三本くらいしか食べられなかったけど、とっても楽しい時間だった。
ロボットのPRも成功したみたい。10体置いてもらえる事になった。
でも二人の必殺技のパワーアップは確かに急務だ。
わたしにも何か協力できる事があればいいけど。
気を引き締めなければ!
☆☆☆
「オレ宇宙をさまようローングヘアーのあおいちゃん♪」
その日の夜、わたしはコンビニでカリヴァリ君を買い、上機嫌で家に帰ろうとしていた。
結局試食タイムではリッチシリーズを優先したのでソーダ味が食べたくなったって訳。
ところがそこに飛びかかってくる黒い影。
間一髪で交わすが、影は着地後、素早い身のこなしで付近の電柱の上に跳躍した。
この前と同じパターン。
刺々しいデザインの黒い仮面とコスチュームの。小柄なキュレーショナー。
ディスコードだった。
「もう一度言うわ。わたし達の邪魔をしないで」
「イノベーションの中止なんかさせないよ」
これだけはきっぱり言うしかない。
イノベーションはわたしの命だ。
「次は生身でも構わず攻撃するとも言ったわ」
飛びかかって来るディスコード。
「キュレーティン!」
わたしも止むを得ず変身した。
「絶対にこの街のイノベーションを破壊する」
「そんなのダメだよ!」
ディスコードのパンチとキックを防ぐわたし。
実際のところは彼女よりエキセントリックの方が強い。年上だし。
しかし、気迫はこっちの方がこもっていた。
「この街でイノベーションが続いてるなんて許せない!」
本気でイノベーションを憎んでいるようだ。
「邪魔をするなら殺してやる!」
「そんな事軽く言っちゃダメだよ」
一体何がこの子にこうまで言わせるのか。
「この前も言ったけど、わたしは誰も傷つけたくないよ」
「セゾン姉妹は倒したじゃない」
「あの子達はちゃんと分かってくれた。最後のバトルだって操られてただけみたいだし」
「操られてた!?」
ここで攻撃の手が止まる。
「そうだよ。『ゴッドG』とか言う人に」
「ゴッドG……」
「あなた達のリーダーなんでしょ」
しばらく思案するディスコード。
「確認する」
電柱の上まで飛び退いてディスコードは言った。
「でもこの街のイノベーションは破壊するわ」
そう言うとディスコードは飛び退いて、去って行った。
「あおい!エモバグの気配はないのに、変身したのかベェ?」
ミムベェだった。
キュレーショナーの気配は察知できないようだ。
まあ、それができたらマジョリティのアジトが分かってるか。
「ディスコードに出会ったの」
「もう一人のキュレーショナーかベェ?」
この前は実際はバトルしなかったし、みんなには黙ってた。
わたしが戦いたくないって言ったのを、分かってくれるかもって思ってたんだ。
でもそれは難しいみたい。
本当に気を引き締めなければ。
マジョリティとのバトルは激化していくのだった。




