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第15話 カリヴァリ君食べ放題!? あおい達のわくわくアイス工場見学! Aパート

「カ~リヴァ~リくカ~リヴァ~リく、カ~リヴァ~リ君~♪」


 赤域乳業とは埼玉を代表する企業である。

 埼玉県深谷市で創業された。


 かき氷をカップに入れて駄菓子屋などで食べられるようにしたカップアイスのパイオニアだ。


 その後、赤域乳業は片手でも食べられる棒アイスを発案した。


 凍らせたアイスキャンディーの内側にかき氷を封入。

 外は固まっていて手に溶けないけど、中のかき氷のシャキシャキした触感は楽しめる。


 それが超絶大ヒット商品、「カリヴァリ君」である!


 後に工場は本庄市(現埼北市)に移転、本庄、児玉、そして美里の各地域に雇用を創出。

 アイス業界低迷の時期においてすら業績を伸ばし、今なお躍進を続けている。


「出ましたズビャっとカリヴァリ君♪心にズビャっとカリヴァリ君♪」


「カリヴァリ行こうぜ♪カリヴァリだもの♪」


「カリヴァリ全開 ミラクルパワー♪」


「あおい、うるさい」

「大はしゃぎだね、あおいちゃん」

 メンバーに数人の空きがあったのでももといろちゃんも誘ったのだった。


 ももは黒のベスト。

 いろちゃんは白い夏服セーラー。

 もうみんな、衣替えだよね。


 埼北市庁で集合したわたし達は、お父さんの車で工場へ向かっていた。

 小山川沿いの美しい田園風景。

 本庄、児玉、美里の境目とも言うべき位置にそれはあった。


「赤域乳業本庄千本さくら『5S』工場」である。


 赤域乳業の工場見学は大人気で平均3か月待ちだ。

 お父さんが実験都市計画スタッフ一堂として、半年前から申し込んでいた見学に同行させてもらえる事になったのだ。


 わたしこの日を待ちに待っていた。

 カリヴァリ君の総本山に遂にわたしはやって来たのだ!


 工場の入り口には大きなオブジェが。

 坊主頭の棒アイスを持った、大きく口を開けた半袖半ズボンの少年。

 マスコットキャラクターであるカリヴァリ君、その人だ。


「君何ヴァリくーん♪」

 感動の余りオブジェに抱き着くわたし。


 工場の壁面の随所にも様々なカリヴァリ君が描かれている。

 エレベータで2階の待合室へ。

 他の見学者の実験都市計画スタッフを待つ。


 待合室の椅子もカリヴァリ君カラーのソーダ色でテンションが上がる。

 いろちゃんはカリヴァリ君の漫画が置かれている事に気付き、目を輝かせている。

 わたしとももは設置されていた製造工程を示したパネルで見学の予習。


 そうしている内に一人の若い男の人がお父さんに話しかけて来た。

 スポーツ刈りのスーツ姿の男性は実験都市計画スタッフだった。

 他のスタッフの人達も到着したみたい。


「じゃあ君達も行くべ」


 わたし達にも気さくに話しかけてきた。フレンドリーな感じのお兄さんだ。

 他の実験都市スタッフも続々待合室に入って来る。


 いよいよ工場見学が始まった。


 まずは会議室でカリヴァリ君の歴史を学ぶ。

 1981年の発売からの変遷についてだ。


 元々、かき氷を原型にしたアイスを作っていたが故の、かき氷とアイスキャンディーの二層構造。

 またソーダ色であっても合成着色料を使用しないヘルシーさへのこだわりなどを学んだ。


 そして展示室へ。

 壁には赤域乳業の歴史のパネルがか掛けられていた。

 ショーケースの中には年代別のアイスのパッケージや、当たり棒を作るための焼き印などが並べられている。


 展示室の後は製造ライン。

 ここでお父さん達実験都市計画スタッフの雰囲気が変わり、真剣な表情に。

 今回の見学はただの観光ではない。

 人型ロボットの売り込みのためなのだ。


 どんな作業がロボットに可能か、また今後対応させる事ができるのか見定めているのだ。

 かき氷とアイスキャンディーの二層構造のアイスを作るのは元々機械が行っているけどね。


 ここで工場の案内スタッフにも年配の管理職らしき人が。

 お父さんとビジネスの話をしているようだった。


 工場を一通り回った後も、まだお父さんと工場の人の会話は続いていた。


 もちろん工場の見学は興味深く説明されていて楽しかった。

 しかし、さすがに大人の話が始まると手持無沙汰になってしまう。

 お父さん達の仕事の邪魔はできないが、うずうずしてきてしまう事実もある。


 工場見学の後が、最大のお楽しみの30分間のアイス試食コーナーなのだ。


 最初はソーダ味から行くセオリーは外せないが、わたしがこの機会に狙っているのはリッチシリーズだ。

 高級感が売りのこれらを30分で何本いけるだろうか。

 アイス1本で5分と考えるなら5本だが、リッチシリーズも10本近くある。

 3分で食べれば10本はいけるか、いや、しかしさすがにそれは……


「ちょっとあおい!」

「あおいちゃん!」

 ももといろちゃんの呼び声に我に返る。


 気が付くとベストの中のスマホが振動している。

 ミムベェからだった。


「エモバグが出たベェ!この近くベェ!早く外に出るベェ!」


「でも次は30分試食タイム…」


「あおい!そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」

「コーンポタージュ味…、ナポリタン味…」

「早く!」

 ももに引っ掴まれ、泣く泣く外に出るわたし。


『生活保護費が国や自治体の財政を圧迫しているー!』

 抑揚のない大音量の叫びが聞こえる。


「あはははは!、暴れろ、エモバグ!」


 外には工場に迫る青いエモバグが。

 そして、エキセントリックが。


「全くもう!行く先行く先よく現れるわね」

 もものうんざりする声。


「バニラバニラ味…、チョコチップチョコチップ味…イチゴミルク味…、コーヒーゼリーミルク味…」

「あおいちゃん?」


「夕張メロンミルク味…、シチュー味」

「ほら、あおい。変身するわよ」


 あとちょっとで試食タイムだったのに……

 楽しみにしていた工場見学だったのに……


『生活保護でパチンコに行くなんて許せないー!』


「許せないはこっちのセリフです!」

 あおいちゃんの怒りが爆発した。


<つづく>

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