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第11話  巨大エモバグ大暴れ! キュレーションサイトはダメゼッタイ! B、Cパート

 ショッピングセンターヤバンセで出会った二人の少女は、セゾン姉妹だった!

 ついにわたしがプリジェクションソーダである事が特定されてしまった。


 エモバグを呼び出したセゾン姉妹はさらに謎のバイザー、「キュレーションサイト」をかけて、再度エモバグを召喚。

 二体のエモバグは合体して、巨大エモバグが誕生した!


「ええー…」


「おっきい!強そう!」

「プリジェクションソーダをやっつけろー!」

 大喜びのセゾン姉妹。

「今度こそお前に勝つ!プリジェクションソーダ」


「キュレーティン!」

 わたしも変身した。


「はじけるキュレーター、プリジェクションソーダ!」


『特区なんて利権でできたに決まってるー!』


 巨大エモバグのパンチ!

 かわしたんだけど、風圧がすごい。

 これをくらったらさすがにやばい。


 移動するだけでアスファルトがひび割れている。


 そこにサクラとペアーが到着した。

「大きいわね。何なの、コイツ?」

「ぎょぎょぎょ!巨大エモバグだー」

 ズシンズシンと地響きを立ててヤバンセの駐車場を練り歩くエモバグには二人も恐怖を隠せない。


「セゾン姉妹がエモバグに何かしたみたい」

「とにかくキレキレ攻撃するベェ」

 ミムベェ、はにぷー、こむぎっちゃんのゆるキャラ達も姿を見せる。


 今回は店舗の屋根の上で高みの見物のセゾン姉妹。

 青バグをやっつけられるかどうかはわたしのキレキレ攻撃にかかってる。


『ロボット労働の能率からベーシックインカムを算出するなんて、ウソっぱちだー!』


 手近な車に拳を振り下ろそうとするエモバグに、


「埼北市でその前例を作ろうとしてるんでしょ!」


 横蹴りをしかけるわたし。

 ちゃんとよろめいた。

 よかった。攻撃は通じる!


『どうせ利益は企業に持っていかれるだけだー!』


 巨大エモバグのパンチ。


「埼北市で労働者に還元される前例を作ろうとしてるんでしょ!」


 しかしそこに踏み込んでのクロスカウンター。


『特区なんて利権でできたに決まってるー!』


 こちらに仕返しの踏み付けをしかけてくる巨大エモバグ。


「利権まみれのオリンピック招致計画を蹴って成立したのが、実験都市計画なんだからーっ!」


 わたしの改心の胴回し回転蹴りが炸裂。

 エモバグは転倒した。


 倒れただけでもすごい地響きがする。

 しかし、ここでわたしの胸元のブローチが光輝いた。


「よし!一気に行くベェ、あおい!」


 わたしは両腕を前に突き出し、叫んだ。

「ソーダスプラッシュ!」


 エモーショナルパワーで作られたエモーショナルなソーダがエモバグに向かって行く。が……

 仁王立ちするエモバグに命中したソーダスプラッシュはかき消されてしまった。


「すごーい!ぞっとしないじゃん!」

「やった!これならぞっとするし!」

 はしゃぐセゾン姉妹。


「これはやばいね、ヤバンゼだけに」

 巨大エモバグには必殺技が通用しない。


「つまんない事言ってる場合じゃないでしょ」

「ソーダちゃん。この前のパワーアップ技は?」


 エモーショナルなメントヌで、エモーショナルなソーダの威力を上げる「ブーストソーダスプラッシュ」。

 確かにやってみる価値はある。


 迫り来る巨大エモバグ。


『埼北市なんかダッセエよな!』


「そんな事ない!」


 わたしはそれを迎え撃つ。


「埼北市は風光明媚なる現代のエルドラド!なんだから!」


 エモバグのお腹にひじ打ち。さらに、


「馬鹿にしないで!」


 あごを目掛けてアッパーカット。

 この連携でまたブローチが輝いた。


「またいけるベェ!」

「今度こそ頼んだわよ、ソーダ」


「頑張る!」

 吹っ飛ばしたエモバグとは若干距離があったので、エモーショナルなメントヌの出し方を思い出すわたし。

 ところがその一瞬で、巨大エモバグは予想外の行動に出た。


 エモバグは足元のアスファルトを殴り付けたのだ。

 破壊されたアスファルト辺が付近の車に降り注ぐ。


「なんて事するの!」

 巨大エモバグはその大きな拳で何度もアスファルトを殴り付ける。

 まるで癇癪を起すように。


 これでは容易に近づけない。

 だんだんアスファルト片の飛距離も伸びて店舗にも降り注ぎ始める。


 駐車場からも店舗からも人々がすでに避難している事だけは安心……


 ではなかった!

 店舗の、それも屋根の上にはセゾン姉妹がいた。

 エモバグに声援を送っていた彼女達に、子供一人分くらいの大きさのアスファルト片が、まさに飛来しようとしていた。

 何が起こっているのかも分かっていない、あっけにとられた表情だった。


「危ない!」

 身体が勝手に動いていた。

 わたしはセゾン姉妹とアスファルト片の間に割って入る。


 わたしの身体にドン!と強い衝撃が走る。


 何とか間に合ったけど、肩から全身でぶつかった感じ。

 パンチやキックで打ち返すようにはいかなかった。痛い……。

 セゾン姉妹の目の前で倒れるわたし。


「あわわ……、ぞっと……」

「うう、ぞっと……」

 セゾン姉妹は驚いてうずくまっているが、けがはないみたい。


「ソーダ!大丈夫?!」

 サクラが飛んで来た。

「んー、骨はおれてない気がする……」

「この後、病院行くよ」

「そだね……」


 エモーショナルプロジェクションマッピングの力でダメージがかなり軽減されている。

 とは言え、今回は気持ち悪くなるくらい痛い。


「あんた達、よくもソーダをっ!」

 サクラはセゾン姉妹を睨み付けた。


「あ…、あたし達は人をけがさせるつもりじゃあ……」

「こんな事になるなんて思ってなかったよぉ……」

 二人は泣き出しそうだった。

 ももって怒らせるとちょっと怖いんだよね。


「こういう事をすればこういう事にだってなるでしょ!何で分からないの?!」


「うう、わかんなかったよー」

「みんなが注目して……きっと楽しいよ、って言われただけだし……」

 もはや姉妹はは泣き出していた。


「まったく!なんにも考えてないんだから!」


 サクラの叱る声がする。

 わたしは痛みで身体を動かすのがしんどかったので、うつぶせで聞いてた。


「この子を安全に降ろすけど、邪魔したら、子供だからってただじゃおかないからね」


 そう言うとサクラはわたしをお姫様抱っこで抱きかかえた。

 セゾン姉妹は、ただうなだれていた。


「よっと」

 店舗の屋根から着地するサクラ。

「大丈夫?響かない?」

「ありがとう、サクラ。立てるよ」

 まだ痛いけど、動けなくはない。

 打ち身くらいなのかも。恐るべし、EPM。


「ソーダちゃん!大丈夫?」

 エモバグを食い止めていたペアーも心配そうに声をかけてくる。


「何とかいけそう」

 腕を動かしてみる。

 大丈夫!痛いけど動かせる。


 今回の巨大なエモバグは青。

 わたしが相手をしなければ。


 今度はエモーショナルなメントヌを作り出して、新必殺技を繰り出すのだ。


 ソーダの勢いを増すイメージをエモーションとしてブローチから出す。

 一回やったので今回はスムーズにできた。


 腕を前に突き出すと大きな白い碁石のような形の物体が。

 エモーショナルなメントヌだ。


 そして、ブローチからエモーショナルなソーダを発射する。


「ブーストソーダスプラッシュ!」


 エモーショナルなメントヌに触れたソーダスプラッシュは、勢いを増す。

 ブレザーで変身した万全な状態で放った必殺技だ。

 それはまさに滝のような激流となってエモバグに向かって行く。


 巨大エモバグもその一撃には耐え切れずかき消えた。

「大勝利!……ってイタタ!」

 腕を振り上げたらさすがに痛かった。


「あおいちゃん、無理に動かしちゃダメ!」

「さあ、病院行くよ」

 確かに病院が空いてる内に行かないと。


「あ、保険証は家に戻らないとないなあ」

「その辺はボクがなんとかしておくから急いで病院行くベェ」


 ももといろちゃんと一緒に病院に行くわたし。

 帰る前にちらっとヤバンセの屋根の上を見たが、セゾン姉妹の姿はすでになかった。

 あの二人ももう、こんな危ない事はやめてくれたらいいな、と思った。


 ☆☆☆


 これは後から聞いた話なんだけど。


 埼北市某所の廃倉庫にマジョリティのアジトはあった。

 セゾン姉妹は三度目のヤバンセのバトルの直後、倉庫に入るとまっすぐ奥に向かった。


「ゴッド(じー)!いる?!」

 揃って大声を張り上げる。


「どうした、おチビちゃん達?また負けたのか?」

「うっさい、エキセントリック!!」


「うるさいのはあなた達よ」

「いいからディスコードも黙ってろ!」


 とにかく凄い剣幕だった。

 エキセントリックは肩をすくめ、ディスコードも押し黙った。


「なんじゃ?わしならここじゃよ」


 倉庫の奥のプロジェクターに仙人のような姿が投影される。

 マジョリティの首領、「ゴッドG」だった。


「ゴッドG!このキュレーションサイト!」


 えんじ色の刺々しいゴーグルがゴッドGの目の前の机に叩きつけられる。


 そのゴーグルを受け取った机だった。


「これで作るエモバグ、怖過ぎだよ、ぞっとするし」

「強過ぎ!ぞっとしないし!」


「強いならよいではないか」

 何が気に入らないのか分からない、といった感じだ。


「こんなのケガするよ!死んじゃうかも」


「お主らのエモーションが強力だったのじゃ。わしの目に狂いはなかったようじゃな」

 やはりゴッドGは平然としている。


「エキセントリックとディスコードはどうなの?」

 セゾン姉妹は二人のキュレーショナーに詰め寄る。


「死んだらそれは運がなかっただけさ」

 エキセントリックは事も無げに言った。

「元々そういう事をしてたつもりだぜ?」


「わたしは邪魔をするものは殺しても構わない」

 ディスコードは静かに言った。

「プリジェクションソーダとかプリジェクションサクラだっけ?

 むしろあいつらを早く殺したい」


「ええー…!何なの、こいつら。ぞっとするし」

「なんかギャップ感じちゃう。ぞっとしないし」


「みんなに注目されて楽しい」。

 ゴッドGにそう言われて始めた事だ。

 確かに今まではそうだった。

 しかし、もはやセゾン姉妹は自分達で作り出したエモバグに恐怖していた。


「あ、あたし達はもうやめるから!ぞっとするし」

「こんなのもう終わり!ぞっとしないし」


 姉妹はキュレーションサイトを机に叩き付けた。


「変身アプリも後で消すから!じゃあね!」


 帰宅する姉妹。

 すっかり辺りは暗くなっていた。


「早く帰りたい」

「お父さんとお母さん、帰ってるかな?」


 プリジェクションソーダが一応元気そうだったのは救いだった。

 取り返しのつかない事にならなくてよかった。

 明日からは普通の生活に戻ろう。

 そう思っていた。


 その時、


 道に設置されたEPM用プロジェクターから、不意に一体のキャラクターが現れる。

 さっき分かれたはずのゴッドGだった。


「返事も聞かずに出ていかなくともよいじゃろうに」


「ぞっとさせないでよ。ぞっとするし!」

「そっとしなくてぞっとするし!」

 急に現れた仙人のようなキャラクターにびっくりするセゾン姉妹。


「ホッホッホ……、それはすまんかったのう」

 いつもの温和そうな老人の姿だった。

 そこまでは。


「キュレーショナーをやめるのなぞ、認めんよ」


 ゴッドGの瞳に鋭く、狡猾なまなざしが宿る。

 そして手に持った杖から電撃が放たれた。


「きゃああああああああああっ!」


 電撃が命中した姉妹は強制的にキュレーショナーのまがまがしい姿に変わっていく。


「これこそ『セゾンのコーデ』の真価。まだ働いてもらうのじゃ」


 そして、ゴッドGとセゾン姉妹は夜の闇に姿を消した。


 なんだかすごいね!

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