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第10話 あおいピンチ!封じられたブレザー ジャージはエモくありません! B、Cパート

 若泉公園にたどり着いたわたし。お花見シーズンは終わり、緑の木々が立ち並んでいる。


『デモは迷惑ー!社会のルールを守るべきー!』

 抑揚のない大音量。

 エモバグはすでに暴れている。


「子バートンに連絡して替えの制服を手配してるベェ」

 とミムベェ。

「とにかくジャージでやるだけやってみるよ!」

 今から取り寄せて、どのくらいかかるのか予想が付かない。


「キュレーティン!」

 わたし達は両腕をクロスし、スマホを正面に向けて変身した。


 どうなる事かと思っていたが、EPMのプロジェクターからちゃんと光が照射された。


 羽の髪飾りと胸元のブローチは現れて襟首と手足の袖口にフリルが付いている。

 一応髪の毛とかも青くなっている。


 変身できた!

 スカートじゃないし、美里中って書いてあるし、明らかにジャージだけど。


「ソーダ、待っていたわ……、ってジャージ?!」

「ソーダちゃん、なんでジャージ?!」

 すでにバトルしていたサクラとペアーも驚いている。


「制服は洗濯中なんだ」

「制服のエモーションで変身できるんじゃなかったっけ?」

 ももが心配しているのもやはりそれだ。


「ジャージのエモーションを試してみるよ!」


「ジャージは全然エモくないよ!」

 いろちゃんがいつになく、語気を荒げる。


「お姫様のような衣装がかっこいいのに。ジャージなんて……」

 ヒーロー大好きのいろちゃんにとってはこだわりポイントだったみたい。


「でもほら、カリヴァリ君カラーだよ」

「カリヴァリ君が別にエモくないし……」

 カリヴァリ君までディスられた。


「青が一番かっこいいのに……。わたしなんてまっ黄色なんだよ」


 わたしは青の髪や唇はキモいと思っていたので、意外な反応だった。

 隣の芝は青く見えるとはよく言ったものだ、本当に。


「でもジャージとしては破壊的なエモさだよね?」

 と言ってみたが、

「ヒーローとしては壊滅的なダサさだよー」

 いろちゃんは頭を抱えている。


「とにかく頑張る……!」

 言ってみたものの、

「とうっ!」

 ジャンプでサクラの隣に着地。

「何?」

 不思議がるサクラ。


「エモバグのとこまで飛ぶつもりでした」

 ジャンプ力が低下している。

 やはり、ジャージのエモさは制服には劣るらしい。


「ジャージだっさ!ぞっとするし」

「そんなのでバトルなんか、ぞっとしないし」

 セゾン姉妹の馬鹿にする声が聞こえる。


「本当にぞっとしないダサさだよー……」

 いろちゃんもジャージのダサさを心配している。


「でもこれ結構動きやすいよ!」

 体操するように手足を動かしてみる。


「ガニ股はやめてー!」

 ジャージはどうしてもペアーの美意識には耐え難いようだった。


 しかし、キレキレ攻撃できれば何とかなるはず。


『人に迷惑かけてまでデモをするなー!』

 木々にパンチするエモバグの方に向かうわたし。


「もう!お花見スポットの若泉公園桜を傷付けないでよ!」


「千本桜の方がきれいだしー!ぞっとしないしー」

 セゾン(右)の発言だった。


「千本桜?児玉の?」

「あんた達、もしかして児玉の人間?」

 わたしとももは思わず突っ込んでしまった。


 埼北市で千本桜と言ったら、ボーカロイドの歌の事でも、ラスボスの事でもない。

 千本桜と言ったら「児玉千本桜」の事なのだ。


 児玉千本桜とは、埼北市の小山川の両脇、およそ5キロメートルに渡る桜並木の事。

 その本数は約1100本!

 比喩ではなく、千本桜なのだ!

 お花見シーズンには多数の模擬店も出店。

 今年からはライトアップも行われ、大盛況だった。

 来年も盛り上がるといいな。


 それはさておき、

「余計な事言っちゃダメ!ぞっとするし」

 セゾン(左)も動揺している。


「べ、別に児玉関係ないし。ぞっとしないし」


 慌てて繕うセゾン(右)。

 そう言えば、児玉工業団地に恨みがあるとも言ってたなあ。

 とは言え、今はわたしはエモバグの相手をしなければ。


『デモは迷惑ー!社会のルールを守るべきー!』


「結社の自由、集会の自由は国民の権利だよ!」


 わたしは脇腹蹴りでエモバグを木から引き剥がす。


 やはり威力は低いが、エモバグはよろめいた。

 キレキレ攻撃は成立した!


「何とかやってみる!」

 態勢を立て直したエモバグがこちらを狙って来る。


『人に迷惑かけてまでデモをするなー!』


「労働争議やストライキだって迷惑する要素がない訳じゃない!」

 わたしのブラジリアンキックが命中。


 しかし、エモバグは怯まない。

 やはりジャージの攻撃力はブレザーには敵わない。しかし、


「自分は強い側の気分になって、弱い立場の人を叩く露悪趣味は、卑しいんだからーっ!」

 間髪入れずアッパーカット!

 今度はエモバグをダウンさせた!



 ブローチが輝く。

「いけそうね、あおい」

「任せて、もももも!」

「ももももって言うな」

 あとは必殺技を出すだけ。案外楽勝だ。

 わたしは両手を突き出し、ソーダスプラッシュの態勢に入る。


「ジャージのくせにー!ぞっとするし」

「結局いつも通りじゃん。ぞっとしないしー」

 セゾン姉妹も捨て台詞を言って帰ろうとしていた。ところが……


「ソーダスプラッシュ……ゥ?」

 ブローチから発射されたわたしのエモーショナルなソーダは、突き出した両手を越えた辺りで勢いを失ってしまった。


 そもそもかなり水っぽかった。まるで気の抜けたソーダのようだ。

 これがジャージのエモさの限界だったようだ。


「届かないでやんの!だっさ!」

「やっちゃえ!エモバグ」


「うう……、これじゃこぼれるキュレーターだよー」

 ペアーがまた頭を抱えている。


 エモバグが調子付いて突進してくる。

 それをかわして、なんとかやりすごすし、反撃。


 その後何度かキレキレ攻撃を当て、ブローチがもう一度輝いた。


「うええ……」

 でもジャージのエモさでは動きも悪く、さすがに疲れてきた。


「まずいわね」

「あおいちゃん、やっぱりわたし達が……」


 ももといろちゃんがフォローに入ろうとするが、

「そうはいかないよ」

「これはチャンスじゃん」


 セゾン姉妹に逆にマークされてしまう。


「あたし達のエモバグ活動だって権利だしー」

「迷惑のレベルが違うでしょ。こんなのは権利じゃない!」

 ももといろちゃんがセゾン姉妹を振り切るのは難しそうだ。


「あおい、どうするベェ?」

 それに二人が必殺技を出すには50回くらい攻撃しなければならないという。

 青バグはやはりわたしが倒さなければ。


 エモバグの青い巨体が近づいてくる。

「ソーダスプラッシュの威力が足りないとは困ったベェ……」

 ミムベェがつぶやく。


 何かいい突破口はないかなあ。


 うーん、ソーダスプラッシュの威力が足りない。

 ソーダスプラッシュの威力が上がれば。


 ソーダの威力……、

 ソーダの炭酸の威力……、

 ソーダの勢い……!


 そうだ……!


「メントヌッ!!」

 わたしは叫んだ。

「こんな時に何叫んでるベェ」

「メントヌ!そうだよ、メントヌだよ!」

「はあ?大体そのメントヌのおかげでこんな事に……」


「イノベーーーション!」


 両手をもう一度突き出すわたし。

 今朝浴びた、あのメントヌソーダの勢いを思い出すのだ。


 わたしの胸元のブローチが輝き、エモーショナルなソーダが発射されるが、さっきと同じで水っぽい。


 しかし、今度は突き出した両手の先にその手と同じくらいの大きさの白い錠剤のようなものが現れる。

 エモーショナルなメントヌだ。


「エモーショナルなソーダが出せるなら、エモーショナルなメントヌだって、出せる!」


「エモーショナルなメントヌ?!何言ってるべぇ?」


「わたしはこぼれるキュレーターじゃないっ!はじけるキュレーターだよ!」

 わたしはソーダを発射した。


「ブーストソーダスプラッシュ!」


 エモーショナルなメントヌに触れたエモーショナルなソーダは勢いを増してエモバグに命中する。


 まさに怒涛の勢い。普段と同じかそれ以上かも知れなかった。


 エモバグは消えさり、青く輝くサイスフィアが、さいたまが残された。


「やられちゃったの?ぞっとするし!」

「何なの、あの技?ぞっとしないし!」

 セゾン姉妹は退却した。


「サイスフィアゲットだベェ」

 ミムベェはさいたまをサイストレージにしまった。


「やったね!」

 イノベーションを達成し、勝利したわたし。


「これって制服で出したらさらに威力上がるって事?」

「パワーアップ!すごい!かっこいい!」

 サクラとペアーも驚いている。


 ピンチをチャンスに変えたわたしの大勝利なのだ。


「そう言えばなんで今日は洗濯しちゃった訳?」

「そうそう、なんでジャージに?」

 わたしは二人に事情を説明した。


「なるほど。メントヌソーダの実験ね、それなら仕方ない……」

 ももももは納得してくれた。

「って!要はあんたの不注意でしょ!」

 そんな訳なかった。


 ちなみに今回のような不測の事態に備えて、小バートンがもう一着制服を手配してくれることになりました!


 ☆☆☆


 これは後から聞いた話なんだけど。


 埼北市某所の廃倉庫。

 バトルの後、セゾン姉妹は帰還した。

「何だよ、また負けたのかよ」

 黄緑色に染めた長髪がヘルメットからはみ出すのは長身のキュレーショナー、エキセントリック

 。

「わたしが代わるから引っ込んでれば」

 ボブカットの小柄なキュレーショナーはディスコード。


「うっさい!うっさい!ぞっとするし」

「誰が代わるか!ぞっとしないし」


 とは言ったもののセゾン姉妹自身も連戦連敗の現状には、行き詰まりを感じていた。

「ジャージの癖して!ぞっとするし」

「弱そうだったのにパワーアップなんて、ぞっとしないし」


「ならお主らもパワーアップするかのう」


 倉庫の奥にプロジェクションマッピングのキャラクターが現れる。

 白髪の長いひげとスキンヘッド。灰色の衣の仙人のような姿。


 マジョリティの首領、ゴッドGだ。


「できんの?!パワーアップ?!」

 セゾン姉妹は揃って叫んだ。


「これを使うのじゃ」

 ゴッドGの目の前の机にはすでに置かれているものがあった。


 それは二個のバイザーのようなものだった。


 それはえんじ色をしていて、キュレーショナーの服装と同じく、鋭角的なデザインだった。


「キュレーションサイトじゃ」

 ゴッドGは杖でバイザーを指さした。


「キュレーションサイト……」


「これはお主達のエモーションを高め、エモバグを強化できるのじゃ。いわばキュレーショナーの必殺技じゃな」


「必殺技……!いいじゃん、いいじゃん!ぞっとしないし!」

「これで勝てれば……、ぞっとするし!」


 セゾン姉妹はキュレーションサイトを手に取った。

「キャハハハ!見てろっての、埼北プリジェクションキュレーター、()()()()()()()()()()


 なんだかすごいね!


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