第7話 判明!敵の組織はマジョリティ YESでいいのか、マジョリティ B、Cパート
美里町のスーパー、ヤバンセのピンチに、プリジェクションサクラとプリジェクションペアーが現れる。
遠くからジャンプを繰り返して来たようだ。
「美里は畑ばっかで変身する場所がなかったわ」
とサクラ。
「失礼な!ユメリだってウュルシアだってコンビニだってあるし!」
思い付くだけ、ありったけの美里のお店を挙げるわたし。
「そんな事よりアイツらがエモバグを出したって事?」
「そうだよ。魔女がどうのだって」
「魔女じゃなくてマジョリティだっての、ぞっとするし」
「あたしたちのどこが魔女だっての、ぞっとしないし」
うーん、その黒い衣装はそこそこトリックオアトリートな感じがしますけど。
「そんな事より三人揃ったなら注目ー!」
「はい、ちゅうもーく!」
二人は屋根の上から叫んだ。
「あたし達からの宣戦布告だよ!」
二人はニヤリと笑った。
二人は懐からスマホを取り出すと、何か読み始めた。
「我々はこの街の偽りのイノベーションを認めなーい」
「この実験都市を破壊するー」
二人で交互に読んでるみたい。
「我々はマジョリティ!」
「我々はサイレントマジョリティにはならないー!」
実験都市を破壊する?
物理的な意味なのか、実験都市計画をって事なのか、どっちにしてもイノベーションを認めないって……!
「その目的を邪魔するプリジェクションキュレーターを排除するー!」
「我々、マジョリティのキュレーショナーが、プリジェクションキュレーターに宣戦を布告するものであるー!」
キュレーターに対するキュレーショナーって事か。
何だか難しい言い回し。
あの子達にはそぐわない感じがする。
「読み上げてるって事は、文章を考えたのは、別の誰かかも知れないね」
ペアーもわたしと同じ違和感を持ったようだ。
「あいつらがリーダーには見えないし、ありえるわね」
サクラも同意する。
「ソーダにサクラにペアーなんて、変な名前ー」
少女達は挑発して来た。
「そう言うあなた達はどこのどなた様だっていうの?」
サクラが尋ねる。
「あたし達はセゾン姉妹だけど」
うーん、まあまあ変な名前だった。
「セゾン誰?一人一人名前があるでしょ」
「あたし達はいつも一緒だし。区別する必要なんかないし」
「姉妹だって区別する必要はあるよー。お互いを何て呼ぶの?」
といろちゃん。
「普段は名前だけど」
「それは何て言うの?」
「言う訳ないじゃん。ぞっとするし」
「本名バラすと思ってんの?ぞっとしないし」
本名バレはやっぱりNGだった。
わたし達も最近そうしたんだけどね。
「うむむ、じゃあ何て呼ぼうか?」
よく見ると二人の衣装の頭の角や肩の刺々は左右対象になっている。
「じゃあ、今わたし達から見て左がセゾン(左)、右がセゾン(右)で」
わたしは言った。
「こっちから見たら逆じゃん。ぞっとするし」
「そんなのぞっとしないし」
「呼び方はそれでもいいわ」
サクラだった。
「まずはエモバグを何とかしましょう」
確かにそうだ。
ヤバンセを守らなきゃ。
「ソーダとペアーはあの二人の相手をして」
「分かった!」
「オッケー、サクラちゃん!」
わたしとペアーでセゾン姉妹に攻撃を仕掛ける。
サクラはピンクのエモバグだ。
「ヤバンセはわたしが守る!」
セゾン(左)に攻撃するわたし。
「ぞっとするし」
セゾン(左)とわたしのパンチとキックの応酬。
「やっぱこのコーデ、いいじゃん!」
打ち合いは互角だった。
相手も細腕の少女だという事は、プリジェクションキュレーターとキュレーショナーの戦闘能力は互角って事か。
「悪の組織には負けないよ!」
「悪じゃないし、マジョリティだし」
ペアーもセゾン(右)と一進一退だった。
とは言え、わたし達がセゾン姉妹に勝つ必要はないのだ。
ピンクバグを倒せるサクラがフリーになれば。
『最近は攻めてる発言がすぐクレームで叩かれるー!』
「露悪的な発言を攻めていると思うのは勘違いも甚だしいわ!」
店舗を攻撃するエモバグにサクラの飛び蹴りが炸裂!
エモーションは吹っ飛んだ。
「こいつ!エモバグの邪魔すんなー!」
その様子に狼狽するセゾン(左)。
「そっちこそサクラの邪魔はさせない!」
わたしはセゾン(左)をさくらとエモバグに近付けないようにブロックする。
「今だよ!サクラちゃん」
「どけー、この黄色!」
ペアーもセゾン(右)をしっかりマンマーク。
『攻めてる発言がないと世の中がつまらなくなるやろー!』
起き上がって掴みかかってくるエモバグ。
「暴言やデリカシーに欠けた発言しか楽めない己の卑しさを恥じなさい!」
しかし、さくらの正拳逆突きに突き上げられる。
『今は攻めた企画ができないから、バラエティー番組がつまんないんじゃー!』
一瞬よろけるが、持ち直してさらに襲いかかるエモバグ。
しかし、その一瞬にサクラは膝を曲げ、次の攻撃の動作に入っていた。
「テレビの無意義な部分をネットが真似て!ネットの卑しい部分をテレビが真似て!つまらないのはそれが原因でしょっ!」
サクラの渾身の足刀蹴りが炸裂した。
サクラの胸元のブローチが輝く。
「必殺技いけるぷー」
エモーショナルパワーが貯まったのだ。
「サクラブリザード!」
サクラの周囲にプロジェクションマッピングによるエモーショナルな桜の花びらが舞う。
その桜吹雪はエモーショナルな竜巻になってエモバグに向かって行く。
桜吹雪が散るとエモバグも姿を消す。
「あっさりやられた、ぞっとするし」
「これは小手調べだし。次はこうはいかないからね。ぞっとしないし」
セゾン姉妹はジャンプを繰り返し去って行った。
「サイスフィアゲットぷー」
はにぷーは後に残ったサイスフィアを、さいたまを回収する。
「マジョリティ……か」
変身解除後、ももはつぶやく。
「ついに人間の敵が現れたわね」
「目的は偽りのイノベーションを破壊する事だって」
いろちゃんも敵の目的に思いを巡らす。
エモバグは自然発生しない。
お父さんの話の通りだった。
「マジョリティ」の「キュレーショナー」にはエモバグを作り出す能力がある。
そして、彼女達には明確に、この街のイノベーションを否定する意思があった。
残念な事だけど今後も「マジョリティ」とのバトルは続くのだろう。
わたし達はセゾン姉妹の飛び去って行った方角を、さらに破壊されてしまったヤバンセを見つめていた。
あと、わたしがヤバンセで買ったカリヴァリ君がすっかり溶けていた事に気が付くのはしばらくしてからの事だった。
☆☆☆
これは後で聞いた話なんだけど。
ジャンプを繰り返して逃げたセゾン姉妹は埼北市某所の廃倉庫にたどり着いた。
中には二人の人影があった。
セゾン姉妹と同じ黒装束。
同じように鋭角的な刺々したデザインの衣装で、やはり口元だけが見える仮面を着用している。
「お、戻ってきやがった!具合はどうよ?」
一人は背が高い女性だった。仮面からはみ出た長髪は黄緑色に染められている。
「あたし達は互角だったよ。むしろ押してた」
「エモバグが弱くってやられちゃったけど」
セゾン姉妹が答えると、
「んだよ、勝てねえのかよ!あたいが代わるかあ?」
「うっさい、エキセントリック!ぞっとするし」
「まだ本気出してないだけだし。今、交代なんてぞっとしないし」
「あなた達があいつらを倒せるならそれでいい。無理ならすぐ代わって」
もう一人は小柄な少女だった。
仮面からわずかに襟足がのぞく。ボブカットの様だった。
「倒せるっての!エモバグが弱いだけ。ぞっとするし」
「ディスコードはすっ込んでなよ。ぞっとしないし」
「ふむ、それは結構!」
その時、倉庫の奥にプロジェクションマッピングで描かれたキャラクターが現れた。
頭髪はなく、白いひげを伸ばした老人のような姿をしている。
灰色の布を纏ったような姿は仙人を思わせる。
「ゴッドG!」
四人はその老人のキャラクターに注目する。
「コーデが問題なく機能したなら今はそれでいいのじゃ」
老人のキャラクターはあごひげをさすって言った。
「エモバグを強化する方法はもうじき完成じゃ。その時こそあの目障りなプリジェクションキュレーターを倒し、偽りのイノベーションを破壊するのじゃ」
「偽りのイノベーション……」
ディスコードは怒りをあらわにした。
「そうだ。この街の下らねえイノベーションを……」
エキセントリックは奮い立った。
「ぶっ壊すー!」
「ぶっ壊しちゃえー!」
セゾン姉妹は楽しそうに叫んだ。
四人は必ずしも仲がいい訳ではなかったが、その目的は同じだった。
そして、ゴッドGはその様子を見るとほくそ笑んだ。
「見ておれ、二択陽一。お前のイノベーションなんぞ、わしは認めん。
この実験都市計画を破壊してやるのじゃ」
埼北市のイノベーションを破壊する。
それがマジョリティの目的だった。
なんだかすごいね!
【あおいちゃんのイノベーティブ現代用語講座】
マジョリティ―/サイレントマジョリティ
マジョリティは多数派。サイレントマジョリティーは「物言わぬ多数派」という意味。
アメリカのニクソン大統領の発言が起源だよ。
意思表示をしない大多数は肯定しているのと変わらないよ、という意味。
関係ないんだけど、揃いの軍服みたいな制服で「群れていても始まらない」なんてちゃんちゃらおかしいよね。
あ、でも「自由があるんだ」とか「支配されるな」とか声高に言う連中に限って、同調圧力の塊の兵隊みたいな奴ばっかりだと言う事を皮肉っているのかも。
うーん、深い。




