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第6話 明かされるプリジェクションキュレーターの秘密!あおい達埼北市庁へ、あとファッションセンター  Aパート

「お母さん、行ってきます」

「行ってらっしゃい、あおいちゃん」


 梅桃ももと険悪になって、反省して、お互いの事を知って、和解して。

 その次の週の土曜日、わたし達三人のプリジェクションキュレーターは、埼北市庁舎に呼び出されたんだ。


 目的はある重要人物と会談するため。

 それはミムベェ、はにぷー、こむぎっちゃんの上司に当たる人物で、プリジェクションキュレーターシステムの責任者だと言う。


 わたし達三人はバスで市庁へ到着した。

 受付の女性に用件を伝える。


「あの…ミムベェとはにぷーとこむぎっちゃんの紹介なんですけど!」


 わたしだってこんな馬鹿な話があるかっておもう。

 でもミムベェから、受付にこう言うよう言われたのだ。


「あ、はい。そちらに掛けてお待ち下さい」

 女性は一瞬驚いた顔をしたが、事務的な対応の後、どこかに電話を掛けた。

「よかった。話は伝わってるみたい」

「変な顔されるんじゃないかドキドキしたわ」

「なんか面白いね」


 わたし達がそんな話をしているとすぐに一人の職員が現れた。

「あ、こっちっスー。どうぞー」

 その職員はおそらく二十代前半の若い男の人で、金髪ガングロでおよそ公務員らしくなかった。

「エレベーターへどうぞ。案内するっス」

 わたし達はエレベーターに乗ったっス。


「こちらっスー!」

 市庁舎五階の特別室に案内される。

 その人物はそこにいた。


 プロジェクションマッピングに照らされたその人物は、埼玉県のゆるキャラ、「子バートン」だった。

 まん丸な目が特徴の鳥のようなキャラクターだ。色は紫がかった灰色、要は鳩のような感じ。

 また、程なくしてミムベェ、はにぷー、こむぎっちゃんも現れた。


「葵上あおい君と梅桃もも君と松木いろ君だね、トン」

 無理やりな語尾だったが、渋い大人の男の人の声だった。

「今までよく戦ってくれたね、トン」

 そして、語尾のトンがイマイチ小慣れていなかった。


「子バートンって事はあなたはさいたま市の人ですか?」

 素朴な疑問をぶつけてみた。

 子バートンが埼玉県のゆるキャラだ。ならば県庁の職員なのかと思ったのだ。

「それはどうだろうね、トン」

 この質問は残念ながらお茶を濁された。


「ちょっとあおい、そんな事より聞かなきゃいけない事があるでしょ!」

 ももももだった。


「敵の正体は何なんですか?」

 ももは単刀直入に言った。

 確かにそっちの方が大事だ。

「なんでエモバグなんかが暴れてるんです?」


 お父さんは自然発生はしないって言ってた。

 だったら発生させている「誰か」がいるはず。


「実はそれは分かっていない。残念ながらトン」

 本当に残念だった。

 でも語尾のトンは小慣れてきた。


「プリジェクションキュレーターシステムはわたし達が作り出したものではないトン。

 何者かからシステムとサイストレージのデータとマニュアルが贈られてきただけなんだトン」

「そのマニュアルとやらを鵜呑みにして公務員がこんなものを税金で作ったの?」

 詰め寄るもも。

「言い返す言葉もないが、マニュアル通りにその日の内にエモバグは現れたトン。本庄市商店街にね、トン」

「商店街……!」

 ももは驚いた顔をした。

「そう、もも君。君が初めて変身してエモバグを倒した日だトン」


 ももの初めての変身とバトル。そして、その日に市役所に届いたキュレーターシステム。

「わたし達はこのシステムを信じる事にしたトン。エモバグはプリジェクションキュレーターにしか攻撃できないからだトン」


「ではサイストレージ、って言うかサイスフィアは?敵を倒すと毎回出てくるけど」

 エモバグを倒すと出現する光の塊サイスフィア。確かに不思議。


「敵の正体を突き止める手掛かりかも知れないトン。そしてこれはネガティブとは言え、人々のエモーションの塊だ。『自律型AIの研究』に重要な役割を果たすのだそうだトン」

 自律型AI!!

 3ヵ年計画の目標の一つにして、最重要課題だ。


「これは3ヵ年計画の達成のためにも無下にはできない事なんだトン」

 子バートンは言ったが、ももはまだ不満そうだった。

「それがわたし達が危険な目に遭ってバトルする理由になんの?」

 と詰めよろうとしたが、


「はい!頑張ります!!」


 わたしだった。

 自律型AI!それこそ最高のイノベーションだ。キュレーターとしてバトルする事でそれが実現できるなら、こんなに嬉しい事はない。

「わたし、やります!」

「ちょっとあおい!」

「急にスイッチ入ったね」

 いろちゃんも驚いている。


「ちょっとあおい、本気?」

「何で?自律型AIはこの実験都市の本来の目的だよ」

「それはそうだけど……」

 ももはまだ不満そう。誰が作ったか分からない謎のシステムで戦わされ、しかも街を平和にする以外の、研究のための目的もあると言うのだ。

 うさん臭いと思うのは無理もない。しかし、


「あたしもやります。だってエモバグを倒せるのはあたし達だけだし」

 いろちゃんは文句を言うつもりはないようだ。


「わたしだって街の平和を守りたいのは変わらないわ。それにEPMはわたしのアイドル活動にも関係あるし」

 彼女の所属するアイドルグループSAH40はEPMを演出に使っているのだ。

「やらないなんて言ってない」


「ありがとう!ももももー」握手を求めるわたし。

「ももももって言うな」怒られるわたし。

 でも、みんなで夢を叶えるために頑張りたいな。


「そう言えばあおいちゃん」

 いろちゃんだった。

「あおいちゃんの夢って何なの?」

「そう言えばそうね。あおい、イノベーションとかよく言ってるけど」

「わたしの夢……」確かに話していなかった。


「わたしの夢、それは一日に100イノベーション起こすと言われている、スーパーイノベーターになる事です!」

「は?」

「スーパー何?」

 みんなあっけに取られている。


「何なの、それ?真面目に答えなさいよ」

「真面目だよー。西海岸では常識だよー」

「あはは、あおいちゃん、面白いー」

「訳が分からないベェ」

「ミムベェ、すごい子見つけたぷー」

「前から思ってたけど、変わった子っち」

 みんなには分かってもらえなかった。


「ももはアイドルだよね」

「そうね」

「いろちゃんは将来の夢ってあるの?」

「わたしは漫画家になりたいんだ。今年中には投稿できる作品を作る予定だよ」


 それはとてもらしい感じがした。

「ヒーローの漫画が描きたいから、キュレーター活動は参考になるって思ってるよ」


 三人それぞれにキュレーター活動へのモチベーションはある事が確認できた。


「そうそう、大事な話を忘れていたトン」

「君達の正体が知られてしまうといろいろ面倒トン。変身中はキュレーターの名前で呼び合うトン」


「キュレーターの名前?」

「君達が名付けた、それぞれのモチーフの事トン」


 わたしがソーダ。

 ももがサクラ。

 いろちゃんがペアー。

 こうなるのかな。


「なんか秘密のヒーローみたいでカッコいいね!」

 いろちゃんは気に入ったみたい。


「それと変身は人に見られないようにトン」

 今まではみんなが避難してたからたまたま(多分)目撃されてないけど、確かに気にした方がいいよね。


「EPMプロジェクターの数と性能はアップするトン」

 物陰などはプロジェクターの光の届かない場所も多いけど、それも改善されるのかも知れない。


「埼北市は君達プリジェクションキュレーターを全面的にバックアップするので、力を貸して欲しい。この実験都市の成功と平和のために、トン」

 子バートンからの話は以上だった。


「なんかまだ分からない事だらけだけどね」

 市庁舎を出た所でももが言う。

 プリジェクションキュレーターのシステムの生い立ちは分かった。でも敵の事はまだ分かってない。

 エモバグの事件の解決はまだ先になりそうだった。


「ご飯食べて帰ろっか?」

 いろちゃんだった。

「そうね、どこがいい?国道沿いはいろいろあるけど」

 市庁は国道からほど近い。

 そして、国道沿いはレストランが多いのだ。

 ガールズトークに華を咲かせるならファミレスだろうか、と思っていたら……


「エモバグが出たベェ!」

「エモバグが出たぷー!」

「エモバグが出たっち!」


 近くのEPMに照らされた地面からからゆるキャラ達が姿を現す。

「ファッションセンターしまむうにエモバグが出たベェ!」


 ファッションセンターしまむう。

 埼玉に本社を持つ、埼玉を代表するアパレルショップだ。


 バスでしまむう方向へ向かうわたし達。

 市庁舎からは距離があるが、埼北市の自動運転バスは本数が多いので、すぐにしまむうに着くだろう。


「あ、あおい……」

 バスの中でミムベェが話しかけて来た。

「この前はボクの説明不足で済まなかったベェ。ごめんなさいベェ」

「もう気にしてないよー。それにミムベェがももに事情を話してくれたから仲直りできたんだし」

 あの時、行かない判断をしたのはわたしだし、責めるつもりはない。

「講演会の内容を調べて、お父さんのだって気付いてくれたんでしょ」

 葵上って名字は珍しいから分かっても不思議はないが、責任を感じて頑張ってくれたんだと思う。


 バス亭に到着した。しまむうから若干距離があるけど、変身を人に見られない物陰を探すのには、都合がいいとも言えるよね。


「キュレーティン!」


 両腕をクロスさせて、スマートフォンは前に向ける。画面は見ずに変身アプリを起動する。

 練習したカッコいい変身ポーズ、お揃いのそれでわたし達三人はプリジェクションキュレーターに変身した。


 近くのEPM用のプロジェクターから光が照射され、わたし達の制服が変化していく。

 色はももはピンク、いろちゃんは黄色、わたしは青に変わる。

 胸元のリボンやスカーフの位置には大きな宝石型のブローチが。

 服のそでと、スカートのすそには白いフリルが付く。

 髪の毛、まつ毛、眉毛、唇もそれぞれの色にチェンジ。

 髪の毛もなんとなくフワッとチェンジ。

 ただし、もものポニーテールは腰に届くくらい長くなった。

 三人ともお揃いの羽飾りのようなカチューシャが装着される。


「プリジェクションサクラ!」

「プリジェクションペアー!」

「プリジェクションソーダ!」

 カッコいい変身がカッコよく決まった。

 誰も見てないけどね。


「変身中は呼び方に注意して」

 と、もも。わたし達は秘密のヒーロー、その自覚を持たないとね。


 しまむうに向かって行くと、青いエモバグの巨体が。

 そしてネガティブなエモーションの集合体と言われる叫びが。


『タトゥーを認めて欲しいなら日本以外で生活しろー!ここは日本だー!』


<つづく>



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