優しい犯罪者
「……はぁ……はぁ、逃げなきゃ……。」
少女は逃げる、ただひたすらに。
「待てよぉお嬢ちゃん。俺は国の法律に従ってんだぜ?そんな俺から逃げたらお嬢ちゃんが犯罪者だぜ?」
逃げる少女に1人の男が下卑た笑みを浮かべながらおっている。
「私は……あんな貴族の所なんか行きたくない!」
この国は初夜権が法律で定められている国。
初夜権とは文字通りの意味で、16歳になった女は16歳になったその日に貴族の元へいき性交を行わなければならないという法律だ。
そして少女の初夜権は平民の女を乱暴に扱い無事には返さず殺すことすらあると言われている貴族が持っている。
少女は16とはいえ所詮は女、持久力で男に勝てるはずもなく路地裏に入ったところで男に追いつかれた。
「はやく貴族様のところに行こうぜぇ。まぁ、生きて帰って来れるかは分からんがなぁ、っハッハッハ!
……んあぁ?てめぇ誰だ?」
少女と男の間に黒いローブを着た人が立っていた。
背丈は高いがごつくはなくすらっとしていて仮面を付けていて分からないが多分男だろう、ローブで分からりずらいがかなり引き締まった体をしている。
この国では平民は痩せ細っており、兵隊はごつく、貴族はだらしない体をしているのでこの国で引き締まった体をしているのはかなり珍しい。
「……何故この子をおっている?」
「んぁ? なんでかって? そりゃおめえ、そいつは今日は初夜の日だからな!
貴族の馬車がわざわざ家まで迎えに行ったのにそいつは逃げ出しやがったんだ!そいつは大罪人だ。庇うならてめぇも容赦しねぇ!」
「……初夜権を逃げ出したものはその場で殺すものでは何故貴様は捕まえようとしているのだ?」
「そりゃおめぇ、そいつの顔見てみろよ。
平民にしては有り得ねえほど綺麗な顔してんだろ? ここなへんじゃかなり有名でな? 貴族様が気に入ったってンで殺さずに連れて来いってさ。
その貴族様はこいつを奴隷にしたいんだとよ。
良かったなぁ女。 死なずに一生貴族様に遊んで貰えるってよ。
……まぁ、何日耐えられるか知らんがな! っハッハッハ!」
「……で、貴様はその貴族様とやらの飼い犬か?
……まったく、品のなってない犬だな……。」
「ってめぇ! ……俺とその女の間に立ってるってことは俺の邪魔をしてるってことだ。なら、殺すしかねぇよなぁ?」
男はそう言いながら剣をぬいた。
「……っ! 私に構わず逃げてください!」
「大丈夫ですよ。貴方は私が守りましょう。」
今まで男に対して使っていた口調とはまったく違う優しい口調でローブの男は少女に語りかけた。
「んぁ? まさかお前この俺とやるってか? おいおい舐められたもんだぜ!
そのヒョロい体で俺の剣を受けられるのかよ!」
「……はぁ、品がない上に頭まで足りないのか。
貴様の剣など受ける必要すらない。そもそも不思議に思わないのか? 何故こんな人気のない場所にこんなローブを着た男がいるのか?」
「はぁ?なんだと?……ってうぉ!なんだテメェら!」
いつの間にか男の後ろにローブの男と同じ格好をした者が3人ナイフを持ちながら待ち構えていた。
「なんなんだテメェら! ……まさかここ最近貴族や貴族の兵を殺して回ってるっつう犯罪卿ってやつか!」
「……はぁ、今更きずいたのか? こんな真夜中にこんな怪しい格好をしてたら他に思い当たらないだろ……。まったく……この国の兵は何故ここまで酷いんだ。」
そう呟きながらローブの男は少女を追っていた男に瞬く間に近ずきナイフを取りだし心臓を貫いた。
「……っく、てめぇこんなことをして許されると思うなよ!」
「我らは犯罪卿。この国を変えるため権力者を恐怖のどん底に落とすもの達だ。」
その次の日、少女が行くはずだった貴族の屋敷から貴族の死体が発見された。