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ウタカタ~見えてなかった世界と僕と~  作者: スイカヤ サンタ
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第1話 黒い影現る

本作の主人公 大仏 侑17歳高校2年 

憂鬱な気持ちでゴールデンウィークを迎えた彼を癒すのは飼い猫のナッツ。

ほのぼのとした”ナッツとのふれあい”と”布団干し”彼の予定はこれだけのはずだった。


しかし平和な日常から一変、彼は見えない世界への入口へ入り込むことになる。







 ”ニャーオ ニャーーオ ニャアーー” 飼い猫のナッツの声が遠くに聞こえてうっすらと目を開ける。

遮光カーテン越しの光の強さで今日が快晴であることを寝起きの僕は感じとった。

1人と1匹では広すぎてガランとした家に猫の声が響く。


「ふぁーあ」とあくびをしてぼんやりと天井を眺める。ゴールデンウィークで学校がしばらく休みという解放感に浸っていると再び ”ニャーーオ ニャーオ”と声がする。さっきより大きめの声である。これは”ご機嫌をとらないといけないパターン”だな。そう感じて起きる決心がようやくついた。今の状態を放っておくと普段は所定の場所にある爪とぎ板でしかやらない必殺高速爪とぎをふすまや畳で披露し始めるのだ。


僕はのっそりと起き上がり8畳の和室から廊下に出る。

すると白地に薄茶色の斑模様がしっぽを立てて居間の方からトテトテとやって来た。

「どうしたナッツ?」と声をかける。すぐにくるっと寝こっろび腹を出してクネクネする。ワシャワシャと顔からしっぽまで充分に撫でてやると満足そうにゴロゴロと喉を鳴らした。

とりあえずご機嫌とりは成功したので家の傷をこれ以上増やさないで済みそうだ。


ご機嫌ナッツを撫でながらふと、昨夜母に布団干しを命じられたことを思い出した。

仕方なく「これにてマッサージは終了です」とナッツの腰をポンと叩いた。

もう終わり?とでも言いたげな顔でナッツは僕を見る。


「さてと・・・」

横目にナッツの視線を感じつつ立ち上がる。

布団干しめんどくさいな・・・と思いながら部屋に戻り、起き抜けのしわしわシーツを剥いで、洗濯機がある風呂場の方へ持っていく。


築40年4LDKの平屋建て。広めの玄関と歩くたびにキシキシと音がする幅広の廊下。風呂場は青いタイル張りである。平成に生まれた僕でもなんとなく昭和という時代を懐かしいと思えるのはこの家の影響が大きいだろう。ボロいといえばそれまでだが、僕はけっこう気に入っている。


シーツを洗濯機へ放り込んでから隣の洗面台で歯を磨く。歯ブラシをくわえた自分の姿を見て「はぁ」とため息が出た。


僕の名前は大仏おさらぎ ゆう17歳高校2年 165cm70㎏ 言わずもがなのぽっちゃり系。色白で丸顔、髪はきつめの天然パーマ。毛量が多くて普通に伸ばそうものならゴワゴワして手に負えないので人生の大半はほぼ坊主にしている。けして自分で風体を大仏様に寄せていってるわけではないのだが、自然体でいたらこうなってしまった。そして偶然にも家は寺である。


そんな僕は当然周囲から少し浮いていてクラスメイトの一部がよく絡んでくる。そういった事がこの慢性的な憂鬱の原因の一つだ。

しかし最近はもっと違う原因が僕の心の奥で渦巻いているのだが、ぼんやりとしていて正体が掴めない。どうにかしたいがどうやらそれを突き止めたくない感情もあってずっとモヤモヤしている。


気を取り直して本日の僕に課せられた唯一の仕事をするため布団を抱えて居間にやって来た。

ガラス戸を開け布団を抱えて縁側を降り庭へ出る。

まぶしい日差しで暑さを感じたが、すぐにそれを中和するような涼しい風がふいてきて心地よい。

十分すぎる日光を浴びて洗濯物が風にゆれ、柔軟剤のいい匂いが漂う。

物干し台に布団を干して一息つくとさっきまでの憂鬱がほんの少しマシになった気がした。


立ったままぼんやりしていると目線の先にナッツが見えた。

ガラス戸を開けっぱなしにしていたので出てきたらしい。いつもは縁側から下りることはほとんどないのだが今日は珍しく庭を探検している。


「出てきちゃったのか?」と声をかける。


フンフンと熱心にキンモクセイの根元を嗅いでいたかと思うといきなり

「シャーー!!」と威嚇をはじめた。

何もないはずの空間に向かって背中を丸めて毛を逆立てて威嚇体制をとる。


「ナッツ!どうした?モグラでもいたか?」ケガをさせる前に捕まえようとそばに近づく


するとものすごい勢いで何かを追いかけるように走り出すナッツ。

今まで見たことない迫力で庭を走り抜け、外の方へ出ていく。

「ダメだ行くな!!」

ナッツを追いかけて僕も走り出す。

思ったよりも動きが速く一瞬で見失う。

家の前であたりを見渡すと隣にある寺へ続く石階段を駆け上がってるのが見えた。

「ナッツ!」

このまま寺の方へ行ってくれたら出口は一つなので捕まえられそうだと思った。


30段くらいある石階段を登りきり寺の門をくぐり抜けたすぐ先にナッツは居た。

何もない空間を睨んで威嚇している。

捕まえるなら今だ!


後ろからナッツに近づこうとしたとき

目の前に突然ニュルリと真っ黒い人影が現れた。

「うわ!なに???」

訳が分からなくてパニックになる。

そんな僕を黒い人影がドンドンと後ろへと突き飛ばしていく

その場に踏み止まれず後ろへよろけながら後退していく僕。

いつの間にか黒い人影の足をナッツが思い切り噛みついているが相手は全くひるまない。

ついにドンと大きく突き飛ばされた僕は石階段から転げ落ちた。

目まぐるしく回転しながら死ぬかもしれないという思いが頭をよぎる。


ドスンッ


やっと地面にたどり着いたが頭がぼんやりして起き上がれない。

そんな僕の上にあの黒い影が馬乗りになり首を絞める。

ぎゅーっと締め付けられる感覚に息ができない。


「おい!どうした!」

薄れていく意識の中で聞き覚えのある声が近づいてくる。


声の主は「どけ!」と言って黒い影を押しのけたように見えた。

僕の傍らにきて「侑!侑!しっかりしろ!」慌てた口調で僕に声をかける。


温兄(はるにい)?」

自分でも聞こえるか分からないくらいの声でつぶやいたのを最後に完全に僕の意識は途切れた。












































最後まで読んでいただきありがとうございました。

文章力がないのでどこまでイメージが伝わるか心配ですが、自分も他の人も楽しんで読めるように工夫していきたいと思います。


もしよかったら第2話もよろしくお願いします。

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