3話 バカップルはバカップルなのです。喧嘩してもバカップルなんです。こんなのは日常茶飯事です。バカップル死ねとか言わないで。リア充爆発しろとか言わないで。
「起立……礼」
最後の授業が終わり、放課後に突入した。
教室に残ったのは、俺と藤助だけ。
「なぁ奏太……いつまでボーッとしてんだよ、帰ろう……な?」
奏太の声で我に返った俺は、
「そっそうだな………帰るか」
そう呟き、教室を後にした。
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
帰路についた俺は、藤助と雑談に投じていた。
「奏太さぁ…なんか今日、元気ないな………」
「…………いや、そんな事ないって」
そう呟いた俺を、藤助はじっと見つめる。
「………嘘つくなって……なんかあったんだろ?俺に相談してくれよ」
実感は無いが、藤助は俺が元気の無いように見えると言う。
「俺……そんな元気無い様に見える?」
すると、藤助はニヤリと笑う。
「当たり前だろ?授業中もずっと溜息ばっかだったじゃん」
「そうか……他から見ても元気無さそうに見えるのか…………俺」
藤助にそう言われてからやっと気が付いた。
今まで、鬱陶しい程感じていた清香の視線。
学校での、人の目を盗んでのイタズラ。
それが無くなった事で、ポカリと開いた俺の心。
それを埋めていたのは、清香だったのだ。
時々、しつこい時もあったし、イライラしてしまう事もあったけど、俺は、俺が思っている以上に清香の事が好きだったみたいだ。
清香に会いたい。
そんな思いが湧き上がってくる。
初めは、神様のプレゼントだとか言って、清香の事を本気で考えた事が無かった。
たった数時間。
こんな短い間だけども、清香と喧嘩をして実感した。
清香が好きで、俺には清香が必要だと言う事。
ーーこのままじゃダメだ。
俺は無言で走り出した。
「おっおい!どこ行くんだよーー」
藤助が何か言った気がするがどうでもいい。
今は清香に会いたい。
会って、許してもらって、ぎゅっと抱きしめたい。
「うぅぅおぉぉおおおーーーーさやかああああああーーーー」
見っともない叫び声を晒しながら俺は清香の元に向かう。
しばらく走り、坂を登ると一人の少女の背中を発見した。
清香だ………
清香との距離、約30メートル。
俺はその距離を人生最高速度で駆け抜ける。
「待って!清香っ」
そして、俺は、清香の前に回り込んんだ。
「何?奏太くん」
清香は、今まで見た事無い様な表情で俺を見つめていた。
無感情な冷たい視線を向けられ、体が固まる。
俺は必死に言葉を紡いだ。
「清香……怒ってるよな…………?」
清香は表情をピクリと動かす事もなく口を開く。
「なんで?怒ってないよ?」
そんな訳が無い。
清香は怒っている。
「嘘だ………俺には分かるよ、清香が怒ってるって事……」
すると、清香の表情が始めて変わった。
それは、何かを必死に伝える様に、瞳には涙を浮かべ、
「だって……だって……奏太くんがぁっ、私みたいなっ、しつこい女は嫌だって、デレデレはしつこいって、言ったんだもん!私は、奏太くんがっ大好きだったのに、奏太くんが本当は私の事を、そう思ってたんだと知って…………だから、しつこくおもわれない様に、必死にぃっ目を合わせ無いようにっ、してたんだよ?ねぇ……何で?何で私に会いに来たの?奏太くんを見ちゃうと、私……我慢できなくなっちゃう…………」
清香の目からどんどん涙が溢れて来る。
可愛い顔は涙と鼻水でグチョグチョだ。
そんな清香を見た俺は、もう我慢できなかった。
俺は、涙を拭いている清香を抱き締めた。
「えっ……」
柔らかい感触が手に伝わる。
清香の体は温かく、清香の匂いがした。
「ごめんっ……ごめんなっ清香……」
俺の瞳からも涙が溢れ出す。
体は震えて、嗚咽が止まらない。
しかし、俺は清香に今の気持ちを伝えたい。
俺には、清香が無くてはならない存在だと言う事を。
「清香っ聞いて……」
清香の体がピクッと動いた。
「…………うん」
清香の返事を聞き、俺は再び話し始める。
「朝の事……覚えてるよね……」
「うん」
「俺は、清香と付き合ってる事を知られるのが嫌だ」
「うん」
「でもそれは、清香がだめって事じゃないんだ……………………清香は、最高に可愛くて、優しくて…………だから、学校で清香の事を好きな人達は一杯居るんだ。だから、それがバレると俺がボコられたり、清香にも迷惑をかけてしまうかもしれない。だから、皆にはバレないようにしようって言ったんだ」
「うん」
「あと、俺は初めて清香から告白された時、本当に清香の事が好きなのか分からなかったんだ」
「うん」
「だけど、今ならハッキリ言える」
「…………」
「俺は清香の事が好きだ」
「……」
「今日、一日で、良く分かった。授業中に清香と目が合わないと悲しかった。たまにされるイタズラも、無いと何処か物足りないかった。清香が他の男子と喋ってるのを見るとモヤモヤして。なんでだろう?…………それは、清香が好きだからなんだって」
「…………」
「だから……ごめん。清香を悲しませて、怒らせてしまってごめん。……ごめん。」
涙がどんどんこぼれ落ちる。
涙で視界が遮られ、なにも見えない。
場に静寂が訪れる。
その時だった。
涙がなにか柔らかいもので拭き取られていった。
視界が開き、目に写ったのは白く綺麗な手。
その手の伸びる方に視線を向ける。
そこには、俺の方をじっと見つめる清香の顔があった。
清香は、泣きながらも笑っていて最高に可愛かった。
俺も清香を見つめる。
「好きだよ、清香」
すると、ほんのり顔を赤く染めた清香も口を開く。
「私もだよ。奏太くん…………好き」
そして、二人で笑い合った。
その事を何処か遠くで見ている者がいた。
「アハッ、見っけちゃった~。桜ノ宮の彼氏ー、どんくらいで落ちるのかな~?まぁ男なんて誰でも同じか~」
そう呟きその場を去っていった。
何やってんだお前ら、爆発しろ(矛盾)