2話 バカップルは朝もいちゃつく
「おはよっ!奏太くん」
学校に登校するために家を出ると、清香が家の前で待っていた。
清香と俺の家はだいぶ遠いんだけどね。
「おはよー、清香~」
清香を見ると、合服から夏服に変わっていた。
半袖のシャツから、綺麗な白い腕がチラチラ見える。
あ~福眼、福眼。
「夏服の清香も可愛いな~」
「そっそんなことないって!」
そこから、どんどんと視線を下げていくと、雪のように白い太ももが出現した。
しかし、スカートが結構短い気がする。ギャルかよ。
けしからん。
おパンツが見えるかもだろ?嫌じゃないけど。嫌じゃないんだけどね?
「なぁ清香、ちょっとスカート短くないか?」
歩きながらそう言うと、清香はスカートの端をつまみ上げる。
「ん?皆このくらいじゃないの?」
「いや、俺が知ってる訳ないじゃん」
「ふふっ、そうだね、でも皆この位だよ」
「んん~、そうなのか?」
そんな感じで話してると、学校に近づいて来てしまった。
ここで、一旦清香とはお別れだ。
「清香、ここから別々で行こう」
その言葉を口にした瞬間、清香の顔が暗く落ち込む。
「……ねぇ、奏太くんは私と付き合ってる事をそんなに隠したいの?」
不意に放たれたその言葉に、俺は答えられず体を硬直させる。
「いやっ……ちがくて、前も言った様に……」
「もういいっ!奏太くんキライっ!」
その言葉を残して、清香は走り去ってしまった。
「おいおい、嘘だろ……」
ーー実は、俺と清香が付き合っている事を知って居る人はほとんどいない。
俺みたいなモブがあの桜ノ宮と付き合ってるって事がばれたら、とんでもない事になる。
恐らく、三年生に呼び出され、サンドバッグになってしまうだろう。俺はMじゃないから、それはやだ。
だから、俺と清香が付き合っているのを知られると本当に困るのだ………………ってこの前言ったばっかり何だけどな…………
「はぁ~、どうすっかな……夢の国にでも連れてけばワンチャン……」
俺は、不安を抱えたまま学校に向かう。
(゜m゜;)?(゜m゜;)?(゜m゜;)?(゜m゜;)?(゜m゜;)?(゜m゜;)?
教室に入ると、既に多くの生徒が登校していて、教室は賑やかになっていた。
いつもよりも、大分賑やかなクラスメイト達に疑問を覚えながら、俺は、数少ない友人の元に向かった。
「なぁ藤助、何で今日はこんな賑やかなんだ?」
藤助は、腕を組むとムフフと笑い出す。
「おはよう奏太、何故ってか?…………ムフフ、それはな……」
藤助は意味ありげに、チラチラ横に目をやりながら、興奮した様子で口を開く。
「桜ノ宮さんのスカートがめっちゃ短くなってるんだ!」
俺も、ちらりと清香を見る。
あ~本当だ。
皆も同じ位とか言ってたのに、全然短いし、普通にギャルグループの人達並に短いし。
クソ~ぐれやがったなアイツ。
もう無視してやる。
放置プレイだ!(謎)
「ふ~ん、それがどうした?」
そう言うと、藤助は驚いたように口を開く。
「は?お前、あの桜ノ宮さんだぞ!」
「ああ、そうだな」
「あの、金髪系清楚美少女の桜ノ宮さんだぞ!」
「なんだ?きんぱつけい……??」
「金髪系清楚美少女だ!」
こいつの言っている事はちょっと良く分かんないけど、近くに清香も居るし、今までの不満をちょっと遠回りに言ってみるか。魔が差したってやつだ。
「そうか~?美少女は外見だけだったりして?」
藤助は首をかしげ、頭に?を浮かべる。
「どっどういう事だよ?」
俺は、待ってましたとでも言うかの様に、べらべらと喋り出す。
「いやぁ~、意外と桜ノ宮さんは彼氏の前ではデレデレだったり~、直ぐ拗ねちゃったり~、ヤンデレ、ツンデレなところがあるかもな~って」
「そんな訳ないだろ!あの桜ノ宮さんだぞ!きっと彼氏の前でも隙を見せない。そんな人だ!…………彼氏居るかは分かんないけど……」
藤助の怒りのボルテージが最高潮に達した所で、俺も追い討ちをかける。
「そうだよな~、あの完璧金髪系清楚美少女の桜ノ宮さんがそんな面倒臭い女な訳ないよなぁ~」
「当たり前だ!俺がもしも、もしも彼氏だったら、そんな彼女絶対やだ」
……チラッ
今までの、不満をわざと聞こえる様に言った俺は、ちらりと清香を盗み見る。
え?
泣いてる?
俺が見た清香は、今まで見たことの無い悲しそうな表情で泣いていた。
そして、俺と目が合った瞬間に教室から出ていってしまった。
それから、最後の授業が終わるまで、一度も清香と目を合わせることは無かった。