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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第五章:刺客
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72話

「さっさと潰してこい雑魚共ぉ!!」


明石鏡一郎がそう叫ぶと怪字兵たちは一気に薙刀を構え俺たちに突撃してくる。すると右にいた勇義さんが1匹の怪字兵に向けて容赦なく発砲した。

その弾が当たった怪字兵はその威力で後ろに吹っ飛ばされるもすぐに起き上がり、再び走り出す。その表面には弾痕ができておりそこから広がるように傷が伸びていた。


「のわっ!」


そうこうしていると1匹の怪字兵がこちらに薙刀を振り下ろしてきたので紙一重で後ろに避ける。そしてお返しにその顔を思い切りぶん殴るとまた盛大に飛ばされ後ろにいた数匹の兵を巻き込んで倒れていく。

すると後ろから不意打ちしてきた怪字兵がいたのでそいつを肘打ちで態勢を崩させ、そのまま両足を掴んでぶんぶん振り回す。


「だりゃあああ!!!」


そしてそれを怪字兵がたまっている溜まっている方向へ投げ飛ばし、ボウリングのように倒していった。

今度はまた別の3匹がこっちに跳びかかってきたのでそれを一蹴りで一掃する。


「こいつら1匹1匹は大したことないです!どんどん攻めていきましょう!」


「「おう!!」」


一方刀真先輩は迫りくる大量の薙刀を1本の伝家宝刀で受け止め、どんどん怪字兵を斬り裂いていく。すると怪字兵たちが薙刀でどんどん突いていく。それに対し避けたり刀で払いのけたりし、余裕で奴らの攻撃を読み取っていた。


「はぁあ!!」


そして斬撃を放ち、群がる怪字兵たちを連続で仕留めていくがそれでもその猛攻は納まることを知らない。

やがて背後から薙刀で突こうと襲い掛かる怪字兵がいたが、先輩はそれを跳んで避け、その薙刀の上に乗っかった。


「せいやっ!!」


そのままその兵の首を刎ね、周りに集まっていた他の怪字兵たちも回転切りでまとめて斬っていく。

次は3匹が真正面から同時に斬りかかってきたので、それを伝家宝刀で受け止める。その隙に後ろから他の怪字兵が襲い掛かってくるも……


「させるかっ!」


遠くにいた勇義さんが狙撃し、怪字兵の頭をぶち抜いた。その勇義さんも多くの怪字兵と戦っている。

勇義さんは怪字兵に四方八方囲まれていながらも、決して不利になることはなく寧ろどんどん怪字兵を倒していく。

近づいてくる怪字兵を十手で打ち、近距離から弾丸を撃ち、体術で兵たちの攻撃を掻い潜る。そして一番近くにいた怪字の片手首に鎖が長い手錠をかけた。


「うらぁああああああ!!!」


そして手錠を縄に見立て振り回し、怪字兵に怪字兵をぶつけてどんどん薙ぎ払っていく。それでも近づいてくる怪字兵は、足を狙撃して動けないようにしてからその頭を十手で砕いたりした。

一方俺もどんどん怪字兵を倒していき、今目の前にいる奴はパンチで体を貫通させる。すると怪字兵は崩れ去っていき、1枚のパネルだけ残る。

本来の怪字ならこれで終わりの筈だが、怪字兵の場合倒された後のパネルも粉々になるのだ。


(人造だからか……壊れない筈のパネルがこんなに簡単に……)


パネルは本来壊れない、しかし話によればこの怪字兵たちを構成する人造パネルとやらはその名の通り人間の手によって作られた物、まずその話が嘘か誠か今ここで判断はできないがもし本当であれば、人造は本物のパネル同様絶対に壊れないという性質は再現できなかったのだろうか。

考えていても仕方ない、今は怪字兵たちをなぎ倒そう。そう思った俺だが、次の瞬間他の怪字兵に紛れて鏡のブーメランが投げ飛ばされてきた。


「がはっ!?」


俺はそれに肩を斬られ姿勢を崩すと、見えない何かに何度も何度も体中を殴られていく。鏡の世界に入った明石鏡一郎だ。


「ぜりゃあ!!」


すると奴は自分が投げた鏡ブーメランからこっちの世界に戻り、そのまま俺の頭部に踵落としを決めた。頭がグラッとなり、眩暈と振動が脳を襲う。

そんな俺を怪字兵はここぞとばかりに一同攻めてきたが、俺もそう簡単にやられる程甘くない。

先に来て突いてきた怪字兵の薙刀を両手で掴み、そのまま奪い取った後それを駆使して自分に襲い掛かってくる怪字兵たちをどんどん蹴散らしていった。


「どりゃあ!!」


そして最後には何度も自分の周りを飛び交い切ってくる鏡をその薙刀を投げ当て粉砕させた。気づくと自分の周りにはもう怪字兵はおらず、他の2人はまだ兵を相手に奮闘していた。

すると明石鏡一郎が正面から跳びかかってきたので奴と両手を握り合い、そのまま相撲のような押し合いの力比べに入る。


「相変わらずのすげぇパワーだ……お前の方がよっぽど化け物だぜ!」


「怪字になる人間に……言われたくない!!」


このまま押し合っても埒が明かない。そう思ったのか奴は背中から2枚の鏡を飛ばし、それを俺の上を通過させてそのまま背後目掛けて操作してくる。すぐに避けようにも奴が両手を放してくれず、離れることもパネルを使うこともできない。


「おらぁあああ!!」


なのでここぞとばかりに全てのパワーを出し切り奴の両手から抜け出し、後ろから迫りくる2枚の鏡はバク転して避けた。鏡はそのまま明石鏡一郎に当たると思われたが奴に当たる瞬間直角に上へと曲がり、自動追尾が如く再び俺に迫ってきた。


「八方美人!」


俺は「八方美人」を使い、前後から同時に来る鏡を上半身を曲げて回避、その後奴に跳びかかった。


「拡散型ゲイルインパクト!!」


そして奴を連続パンチで何度も殴りまくり、後ろに引き下がらせる。すると明石鏡一郎は後退してすぐに再び鏡の世界に入る。

そこから怒涛の攻撃は行われ、俺は成すがままにただ奴の一撃を受け続けるだけになってしまう。そこで俺は何とか「八方美人」を使い、殴ろうとしてきた奴の片腕を掴んだ。

見えないがそこにいるのだろう、腕を掴まれた明石鏡一郎は必死になって振り解こうともう片方の腕で殴ってきたが、八方美人で奴の腕を掴んだまま全て回避する。

やがて振り解こうとするその力が強くなるにつれてまるで焦っているかのように動きが速くなり、その勢いに負けて手を放してしまう。するとすぐさま奴が鏡の世界から姿を現した。


「ゼェハ……ハァ……ハァ……ハァ!」


その息は何故か荒くなっており、奴自身も苦しそうに呼吸をしている。まるでさっきまで()()()()()()()()()()()()


「……やっぱりな」


その様子を見た俺はここに来るまでに考えていた予想が当たった事を確信する。正直証拠や要素が少なく半信半疑だったが、俺の考えは間違っていなかった。


「お前、鏡の中じゃ()()()()()()んだろ?その様子が証拠だ!」


「……ッ!」


「ずっと不思議だったんだ……鏡に入れるなら何でずっとその中にいないのか、今までのお前は鏡と現実を行ったり来たりして俺と戦っていた。鏡にいた方が有利な筈なのに……」


そう、奴は頻繁に鏡から出たり入ったりし、どちらかの世界に留まらずに俺と戦っていた。奴が鏡の中に入れば現実の世界からは見えなくなるのでそっちのうが戦いやすいに決まっている。しかしこいつは現実の世界に何度も戻ってきた。

そこで俺はこう予想した。「ずっと鏡にいられるわけじゃない」と――、そして次に「何故いられないのか」を考えた。必死にヒントを探していると、奴の何気ない一言がその答えと導いた。


『ふぅ……ならこれならどうだ!?』


そう、明石鏡一郎は鏡から出た時まるで溜息のように息を吐いた。これは鏡に入る前に息を吸って、出た時にそれを吐いたのではと俺は予想した。

そこで導き出された答えは、「鏡の世界では呼吸ができない」といったものだった。

もしこれが本当だとしたら説明もつくし、現に奴は長時間鏡の中にいて出た後苦しそうに息をしていた。まるで水中に長く潜ってやっとのことで水面に出れた時のように。


「だから定期的に現実の世界に戻らないといけない。それを察されないように頻繁に出入りしてたみたいだが……それが仇となったな」


「……ご名答だよ、だけどそれが分かったから何だってんだぁあ!!」


図星を指された明石鏡一郎は怒り、背中から大量の鏡を発射し俺の周囲に立体的に展開した後、足元の水面鏡を踏み、光速の速さで移動し始めた。

鏡と鏡を光速に近い速さで移動でき、それは自動回避の「八方美人」もついていけない程のものだ。


「大口叩くのもそれぐらいにしとくんだな!!結局のところお前はこの速さについてこれねぇ!」


俺を惑わすためか、奴は俺の周囲を飛び交うだけですぐには叩いてこない。圧倒的な速さで姿形も捉えられない。

しかし速く動けるのはこいつだけじゃない。俺はポケットから「疾風迅雷」を取り出す。


「なら試してみるか?どっちが速いのか!」


それを使用し、俺も高速移動状態に移る。そして両者が目で追えない程速いスピードで対決し始める。

その衝撃波で飛び散る水滴も鈍く感じる中、俺と奴は何度もぶつかり合い、この空間を縦横無尽に動き回っている。

まさか「疾風迅雷」の速さについてこれる相手が来るとは思ってもいなかったが、だからといって負ける理由にはならない。寧ろ俺は自由に速く動けるが明石鏡一郎のその能力では鏡と鏡の間でしか発揮できない。こちらの方が自由に動けて有利なのだ。


「糞がぁああ!!」


対する奴は怒号を上げながら動くがそれでも俺の動きについてこれず、やがて俺に蹴飛ばされて地面に激突した。


「調子に乗るなよぉ!!」


そして光速移動に使っていた鏡を全て操作し、俺に向けて真っ直ぐ飛ばしてくる。先ほどのような死角からの不意打ちではなくその軌道も単調的になってきているのが分かった。

俺はそれを余裕で躱し、そのまま明石鏡一郎の顎を思い切り蹴り上げる。それに持ちこたえた奴はお返しにと拳を振り下ろすが、その時俺は既に「一触即発」を使っていた。


「プロンプトスマッシュ」


俺はスマッシュを放った後静かにそう呟き、奴に自分が冷静であることを見せる。そうだ、今の明石鏡一郎は落ち着いていない、俺に何度も有利を取られて怒って興奮しているのだ。

プロンプトスマッシュを思い切りブチ当てられた奴は、ボロボロになっていく自身の体を見ても尚牙を見せてくる。


「俺を怒らせやがって……!!もう我慢の限界だ!!ぶっ潰してやる!!」


そう言って怒りに身を任せ考えなしに俺を殴ってくるが、簡単に避けられてしまい、逆にもう1発顔を殴られてしまう。


「悪いが、()()()()()()()()は俺の方が上手だったな……

言っておくが、そういう()()()()()()()()()()()ぞ」


「溜めるだぁ!?何わけわかんねぇこと言ってんだこのぉ!!」


すると奴は懲りずにまた俺へと突っ走ってくる。どうやら完全に怒りで冷静さを失っているようだ。だから俺も同じように「一触即発」を使用、もう1回プロンプトスマッシュを勢いよく放った。


「溜めてお前みたいな屑に全部ぶつけるんだよ!!この単純馬鹿が!!」


「ふぎゃああ!?」


そうしてまた派手にぶっ飛び、奴は泥まみれになりながら地面を転がる。プロンプトスマッシュを3発当てられてまだ倒れないところを見ると、中々の耐久力と防御力だ。


「うがぁああああ!!だりゃああ!!」


その勢いも全然治まらず、すぐに起き上がると同時にまた背中から鏡のブーメランを数枚発射し飛ばしてくるも、刀真先輩の斬撃と勇義さんの銃弾が横入りし全ての鏡を粉砕させた。


「ようやく片付いたと思ったら、既に終わってる感じか?」


「どうなってんだこれ……!?倒した後中のパネルもまとめて粉々になるぞおい……!」


どうやら2人も怪字兵の大群を全て倒せたらしい。よって事実上の3対1へと再び戻る。

怪字もこちら側の数が増えたことでようやく怒りが治まったのか、先ほどまでの勢いは無くただこちらを睨みつけているだけだ。


「さぁ、どうする?大人しく負けを認めてこちらに投降するか?お前には聞きたいことが山ほどある」


そう言って勇義さんが拳銃を構えた状態で奴に降伏を要求する。仕事上こういった駆け引きには慣れているのだろう、随分手馴れている感じがする。そこで俺も負けじと相手が諦めるような言葉を言う。


「冷静になっただろ?勿論お前を逃がしたりしない。まだ暴れるっていうならいくらでも相手をしてやる……!!」


「……良いだろう、負けを認めてやる」


てっきりまだやる気だと思って警戒してたが、意外にも明石鏡一郎はあっさりと負けを認めてきた。ここまで正直だとまだ何か企んでいるのかと思ってしまう程意外だった。


「ただし……()()()だ!!」


すると奴は再び背中から大量の鏡を出し、それを俺たちがいる方向とは逆の方角に展開させていく。風成さんを誘拐した時と同じように光速で逃げるつもりだ。

刀真先輩と勇義さんはすぐさまその鏡を撃ち落とそうとするも、その前に奴が最初の鏡を踏み、そのまま森の中へと逃げてしまった。

やばい、まさかまだあの速度を出せるほど力を残していたとは……!


「おい刑事、お前が変なこと言うから逃げられたじゃないか」


「俺のせいか!?そんなこと言うならお前がさっさと倒しておけばよかっただろ!!」


しかし2人は奴に逃げられたというのに慌てた様子も見せず、それどころかいつも通りの喧嘩まで始めている。


「ちょっと!何でそんなのんびりしてるんですか!早く追わないと!」


「あー、安心しろ。こんなこともあろうかと……山の外で()()()()()()()()()待ち構えている」


「天空さんが……?」


刀真先輩の父上というと、宝塚家前当主の「宝塚 刀頼」さんのことだろう。あの人が戦っている姿は見たこと無いが、それに加え天空さんもいるらしい。なら……


「なら大丈夫ですね!天空さんがいるなら」


俺はそれですっかり安心し、2人の喧嘩を中立に入った。


「大体触渡だって最後カッコつけてたろうが!」


「……あんたにカッコつけてるなんて言われたらおしまいだな」


「んだとぉ!?」


「まぁまぁ……疲れてるんだから喧嘩は後にしましょうよ」










「はぁ……はぁ……ざまぁみろ!逃げてやったぜ!」


一方その頃明石鏡一郎は、鏡による光速移動で発彦たちから逃げた後、流石にもう光速は出せなくなるほど疲れ、怪字の姿のまま山の中の森を彷徨っていた。

しかしもう満身創痍に近く、殆どボロボロの状態である。木に手をやってゆっくり森の中を進んでいると、前に生えている木の陰から1人の老人が現れた。


「……なんだジジィ、今の俺を見ても悲鳴1つあげないなんて……」


「……驚いた、本当に怪字が喋っている。中に人が入ってるというのは本当なのだな」


そういうとその老人は「諸」「刃」「之」「剣」と書かれた4枚の四字熟語を使うと、そこから1本の剣が形成されていき、その老人の手に持たされた。

そう、この男こそが宝塚家16代目当主の「宝塚刀頼」である。

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