6話
「それで天空さんが言ったんですよ、『私がお灸を据えてやる』って!」
「あっはっは!なんか神職の人じゃないみたい!」
昼食が終わり、特にやることもないので触渡君と楽しく雑談していると、疾東が不機嫌な顔で入ってくる。その後ろには迅美もいる。
何の用だ、さっき酷い仕打ちを受けたばっかなので止めて欲しい。
「ちょっと亀、雷門どこにいるか知らない?」
「……雷門ってアンタの周りにいつもいるあの子?知らないわよ」
「もう……ジュース買ってくるだけなのに何でこんな時間掛かってんのよ!」
パシリに使った雷門が帰って来てないらしい。彼女はイライラして自分の席に座る。
何事かと見てくる他生徒を威嚇していた。
「あんなに乱暴なのにあの二人からは慕われているんだね……」
「いや、こないだ雷門が陰口言ってるところ見た」
触渡君と小声で彼女の人望の無さを話す。
バレないように顔を近づけていたが、おでこをぶつけてしまう。
「ごめん!」
「いやこっちこそ……」
そして間近で顔を見たせいか照れてしまう。
気をつけないと、そう思っていると……
「おい!疾東いるか!」
担任が焦った様子で教室に来た。
息が荒れているので、走ってきたのだろう。その鬼気迫った顔がクラスを不安な空気に変える。これには疾東も驚いていた。
「お前と仲良しの雷門が……校舎裏で倒れているぞ!」
「雷門が……!?」
その瞬間、彼女は教室を飛び出てしまう。先生もそれに続いた。
そしてクラスの人々も後から追う。
「何があったんだろ……行ってみよう風成さん!」
「う、うん……」
「集まるな集まるな!今救急車が来る!」
現場は酷い有様だった。
結果的に言うと、雷門は誰かに襲われた。
その両足は青く腫れており、痛々しくて見ていられない。小学生の時転んで指を骨折したことがある。それと同じ色だ。
雷門は担架で救急車に運び込まれる。担任もそれに同行した。
「あの人って確か陸上部だよね……?」
「可哀想……」
「誰に襲われたの?」
辺りの野次馬がざわめく。無理も無い、誰かに襲われたということは襲った犯人が近くにいるかもしれないからだ。
襲った理由は分からないけど、普通ならもう逃げているはず。
いや、もしかしたらまだ学校内にいるかもしれない……
その事に気付いた周囲は更に騒がしくなり、軽くパニック状態になる。
「え〜生徒は速やかに自分の教室に戻って下さい!」
それを見極めた教師達は生徒を教室に移動させる。
移動中、疾東の青い顔が見えた。
触渡 発彦は気付いていた。
この事件は、警察では解決できないことを。
何故かって?「一葉知秋」のパネルが懐の中で薄く光っていたからだ。
大昔の戦国時代、中国の賢者が作ったと言われている「呪いのパネル」。
一枚一枚に漢字が書かれているそれは、現代日本にて猛威を振っている。
何故今なのかは分からない。ただこれだけは言い切れた。
この騒動には、呪いのパネルが深く関わっていることを。