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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第一章:爆発寸前な男
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5話

昼休みにて、私は教室でお弁当を食べていた。

ハンバーグにポテトサラダ、作った自分が言うのも何だけどバランスの取れているメニューだと思う。

ちなみにお弁当作りは母、私と一日交替。父の分、自分の分、といつも二つ作られている。

中学生の頃は給食だったが、父の分もあるので、料理の腕は昔から鍛えられている。

面倒なのは前日の母と献立が被らないよう注意しないといけないことだ。なので作れる物の幅も広い。

ここでふと、隣の触渡君のお弁当が目に映る。


「……わぁ!」


全体的にタンパク質が少ないが、色鮮やかな野菜が沢山詰まっている。なんとも女性に人気の高さそうなお昼ご飯だ。


「触渡君のお弁当美味しそうだね!お母さんが作ってるの?」


「いや、天空さんって人が作ってくれてる」


「テンクウさん?」


「俺の親代わりになってくれてる人、俺昔両親捨てられてさ」


「えぇ!?ごめんなさい」


失礼なことを言わせてしまった。

親に捨てられた、という人の心境は分からない。私の両親は優しい人だから。

だけどその悲しみは十分理解できる。


「大丈夫さ……()()()()だしね」


「……自業自得?」


……もしかして自分を捨てた親にすら怒っていないのか?

流石にそれはおかしい。私なら激怒している。そもそも捨てるなら産むな!と言ってやりたい気持ちになるだろう。

昨日から思っていたが、彼は本当に「怒ること」が嫌いなんだ。

それに、「自業自得」ということはどういう意味だ?

何か悪いことをして、それが原因で捨てられたのか?

しかし、彼の性格からそんな悪行をするようには見えない。


(……って、人の悲しい過去をそんなに考えるもんじゃないか)


これ以上の詮索は止めたほうが良い。

私達二人だけ暗い空気になってしまった……話題を変えないと。


「そ、そうだ!そのお野菜一つ分けてよ!」


「え、良いですけど……」


「代わりに私のハンバーグ、分けてあげるから!」


そう言って私は彼にハンバーグを渡し、ブロッコリー1個を持って行く。

直ぐさまそのブロッコリーを頭から囓る。


「あ!美味しい!」


これが思った以上に美味しく、感動する程だった。

今まで自分が食っていたブロッコリーは何だったんだと思ってしまうほど美味かった。


「風成さんのハンバーグも美味しいよ!お母さんが作ってるの?」


「いや私、お母さんと交互に作ってるの」


「へぇ〜」


何とか良い雰囲気になってきた。そう思った矢先——


「さっすがひ弱、弁当も地味ね〜!」


疾東(じゃま)が入ってきた。

心の中で舌打ちする。表に出すとそこを弄られるので隠す。


「よし!今日からアンタは『草食動物』よ!」


変なあだ名を付けられ頭は叩かれまくる触渡君。

知っていたがそれでも怒らない。


「アンタもアンタで……亀のくせに箸で餌食ってんじゃないわよ!」


「きゃっ!?」


すると急に私が標的となる。

手で叩かれて箸を床に落としてしまった。


「亀は亀らしく犬食いで食いなさいよ!」


そして頭を掴まれ、そのまま弁当に押さえつけられた。

頭が上がらない、顔がベタベタになっていく。


「ほらほら!食わないの!?」


「はなし……て……!」


ずっと押しつけられているので息が苦しくなる。

両手をジタバタさせて何とか抵抗するが力は強まるばかり。

ここで触渡君が疾東の手を払い除けた。


「……っ!」


ようやく解放された私。何とか息を整えようとする。

触渡君は疾東を睨み付けた。


「何よ……草食動物の癖に……!」


疾東も睨み返すが、触渡君の目力は押されない。逆に疾東を圧倒していた。

その圧力に耐えられなくなったのか、彼女はそのまま教室を出た。


「まったく……雷門、ジュース買ってきなさい」


「私が!?何で!?」


そして連れの一人に八つ当たりしていた。


「風成さん大丈夫?」


「う、うん……」


ティッシュをくれたので、それで顔を拭く。


「ごめん風成さん……本当なら僕が止めるべきだった……それを怒るのが嫌いなんていう個人の理由で……」


「謝らなくていいよ、私も君を盾にしていたかも……ごめんね」


「怪我は無い……?」


「大丈夫、ちょっと痛いだけ。箸洗ってくるね」


お互いに謝り、気遣い合う。

それにしても、私のことで怒ってくれたのは少し嬉しかったなぁ……










「何よ疾東の奴……私をパシリなんかにしやがって……」


その頃雷門は、疾東に使われたことを納得していなかった。

ちなみに媚びを売っておけばお零れをくれる存在として扱っており、尊敬など友情など大して感じていない。


「あいつの好きな物なんだっけ……?」


しかし苛立っていたせいか、彼女は気付けなかった。

自分に忍び寄る、魔の手に……

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