3話
今日の授業は全て終わり、下校時間になる。
今日も部活があるため私は更衣室へと向かった。
「あ、触渡君。さようなら」
「うん、さようなら」
その途中触渡君と出会ったので別れの挨拶をした。
今日転校してきて会ったばかりだけれど、中々好感を持てる生徒だ。
疾東から庇ってくれたから少し嬉しい。良い交友関係が作れそうで安心した。
(そういえば何処に住んでいるんだろ?)
帰って行く彼の背中を見ていると、ふと興味が湧いてきた。
まぁ無駄な詮索はしないけど……
(良かった……皆いい人そうだ)
帰り道の途中にある坂を下がりながらそう思う。
自分が少々頼りない人間と言うことは十分承知だ。前の学校では虐められたりはしなかったけど「ヘナチョコ」とからかわれてた。
だけど風成さんに言った通り俺は怒るのが嫌いだった。何故かっていう理由はあまり思い出したくない。
そうこう歩いている内に自分の家へと着いた。
長い階段を上り、赤い鳥居を潜る。
そう、「触渡 発彦」の家は神社であった。
参道を進んでいると、道端を掃除している若い神主が居た。
「天空さんただいま」
「ああ、帰って来たんだね」
白い髪のこの人は「海代 天空」、俺の親代わりになってくれてる人だ。
「お風呂が沸いているから入って良いよ」
「ありがとうございます」
こうして俺は、神社の中に入った。
「それで?新しい学校はどうだった?」
「上手くいけそうです」
食事中、ちゃぶ台の向こう側から天空さんが聞いてきた。
それに対し俺は問題なさそうに答えた。
花瓶の水を掛けられたなんて答えたら面倒くさくなるからだ。
こう見えて嘘は得意の方だ——
「……嘘、何かあっただろう」
前言撤回、下手くそだ。
仕方が無いので学校で起こったことをありのまま答えた。
「水を掛けられたねぇ……発彦、その女子生徒の名前を教えてくれ、私がお灸を据えてやる……」
そう静かに立ち上がったので慌てて止めた。
天空さんは俺に対して過保護だ。だからたまに暴走する時もある。
「いいですいいです!心配しなくてもいいですってば!」
「お前のことだから怒りもしなかったのだろう……?」
それに対しギクッとする。そんな俺を見て天空さんは呆れて溜息を吐いていた。
「発彦、お前が怒りを嫌っているのも、その理由も分かる。だけどな?だからといって怒らないなんて駄目なんだ。自分の感情は伝えないと意味が無い」
「はい……」
軽い説教を食らってしまい、弱々しく返事する。
かといって怒るのは本当に嫌なのだ。できることならこのまま一生怒りたくない。
「おい……発彦!」
「はい聞いてます!」
「そうじゃなくて光ってるぞ!」
「!!」
その言葉を聞いてハッとし、懐の中を手探りする。
そこには、青白く光っている4枚のパネル。
1枚一文字で、「一」「葉」「知」「秋」という四字熟語ができていた。
その意味は、僅かな現象から大きな出来事を察知すること。
「天空さん!ちょっと行ってきます!」
「ああ、気をつけていくんだ!」
俺は外に出て急いでそいつへと向かって走って行った。