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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第三章:修行合宿
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38話

天使の怪字は俺の方をずっと睨んでいる。その目も彫刻のようなものだからどこに視線が向いているかは分からないが、向けられる敵意と殺気でそれが分かった。見た目が見た目なのでどういう攻撃をしてくるかがまったく分からない。


(さぁ……どう出てくる?)


すると天使の怪字が小刻みに震え始め、俺の警戒心を更に煽り立ててくる。いつどこからも攻撃が来てもいいように「八方美人」の準備をした。

震えがどんどん大きくなっていると、奴の背中から数本の黒い手が背中を突き破って内側から伸びてきた。どうやら天使の像のような見た目は殻みたいなものであり、何かが中に入っているとみた。

蛇のようにうねる沢山の手は凄まじい速度で俺の方へと向かった。


「八方美人!!」


それを八方美人で回避して黒い手に飛び乗り、伸びる腕の上を走っていく。そうして怪字の目の前まで移動した。


「まずは1発!!」


右拳を強く握り、像の顔面を思い切り殴りつける。その威力で奴はバランスを崩し大きく反れ、地面に仰向けで倒れる。その表面は殴って痛かったが虎鉄さんの硬化と比べれば可愛いもんだ。


(このままゲイルインパクトを叩きこんでやる!!)


怪字の体に乗り移り、そのまま顔に連続パンチをブチかましてやろうと思ったが背後から迫る攻撃の気配を感じとる。


「ちっ!!」


さっき伸ばした黒い手だ。最初の攻撃をした後Uターンして俺を追尾したのだ。それをジャンプして避け、地面に着地し怪字から距離を取る。

黒い腕は本体の周りを漂い守護していた。どうやら簡単に終わらせないらしい。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!」


叫びながら怪字の所へ走っていく。途中黒い手が襲いかかってきたが跳んだり屈んだりして避ける。避けながらも足は一切止めなかった。

そのまま怪字の頭上まで高く跳び、空中で「一触即発」を使用、待機状態に入った。これなら落ちて奴に当たった時重い一撃を放てる。

すると奴は更に背中から黒い手を出し、それで地面を蹴って蜘蛛のようにバックした。


「やばっ!」


逃げられたことにより待機状態のまま地面に着地してしまう。相手が触れてこない限り動けない。鷹目さんに教わったはずなのにもう判断を見誤った。

怪字は黒い手を鞭のように振り回し俺に当ててきた。それに反応して思い切りスマッシュを黒い手に当てる。


「プロンプトスマッーーーーシュ!!」


しかしその手は軽いのかスマッシュが当たっても弾かれただけでダメージが入っているようには見えない。狙うならやはり本体か。

すると怪字は再び俺目掛けて全ての黒い手を伸ばす。それを避けて怪字に特攻する。今なら本体を守る黒い手は無い。今のうちに今度こそゲイルインパクトを当ててやると、怪字に向かって跳ぶと……


「がああっ!?」


後ろから勢いよく何かがぶつかってきた。振り向くとそれは黒い手によって切断され引き寄せられた数本の大木だった。


(さっきの攻撃は俺に当てるためじゃなくて後ろからの不意打ちのためか!)


大木とぶつかって勢いで怪字の横を吹っ飛び地面に激突する。そんな中数本の黒い手が俺の右足に纏わりつき、そのまま振り回すように何度も地面に叩きつけてきた。


「がっ!?げほっ!?ぐはっ!?」


このままだとやられ放題だ。そう思い自分を振り回している黒い手を解き、叩きつけ攻撃から抜け出した。

あっという間にこっちの方が深手を負わされてしまう。対する奴にはパンチ1発しか当てられていない。


「疾風迅雷!!」


これ以上一方的に攻められるわけにはいかない。そう思って疾風迅雷を使用し怪字の周りを周回する。奴は黒い手で止めようとしてくるが今の俺の速さにはついていけなかった。

すると怪字は黒い腕を地面に突き刺す。そしてそのまま地中を通して俺の進行方向先に地面から飛び出るように出現させた。


「おっと!」


ギリギリのところで回避するが、同じような攻撃を連続でしてくる。地面から出しては抜き出しては抜きと、まるでもぐら叩きのもぐらのようだ。それを何度も避け、時折怪字に攻撃を入れる。すると黒い手を並べて前に壁を作った。


「壁!?」


壁を作った手はそのまま伸び続け真上から落ちてきた。これを受けたら大ダメージ間違いなしだ。


「金城鉄壁!!」


そこで金城鉄壁の結界で黒い手を防ぐ。手たちは何度も金城鉄壁を攻撃し突き破ろうとしたが、この金城鉄壁は中々壊せない。

怪字もそれに気づいたのか背中から更に黒い手を出す。今度は数本っていうレベルじゃない、数えきれないほど出してきた。

大量の黒い手は結界を四方八方囲い込み、全方向から殴ってくる。そのせいで外の景色が完全に黒く染まった。


(どうする!?この結界が破られたら一巻の終わりだ!)


もしそうなれば避ける時間も隙間もない。あらゆる方向から黒い手が伸びてきて自分を襲うだろう。だからといってその結界があるから逃げることもできない。完全に追い詰められた。

やがて沢山の手によって結界は崩壊、その中心へと黒い手が伸びた。しかしさっきまでそこにいたはずの俺がいないことに怪字が気づく。一体大量に出した黒い腕をしまい、辺りを見渡す。そして、結界で守られていた場所に()()()()()()に気づく。気づいた時にはもう遅い。


「隙ありぃい!!」


すると俺が地面の中から怪字の足元に現れ、完全に隙を突いた。


「ゲイルインパクトォ!!!」


そして怒涛の連続パンチを怪字の本体に当てまくった。拡散型のそれは奴を押すには十分すぎる程の速さだ。

どうやってあの包囲網から抜け出したのか、それは虎鉄さんとの修行を思い出せたからできた芸当だ。手だけじゃなく足も高速に動かせる疾風怒濤、それを応用し俺は高速で怪字の足元まで続く()()()()()()()()()()のだ。普通なら地面に潜れるほどの穴を掘る前に黒い手に襲われただろう。しかしゲイルインパクトぐらいの速さならトンネルを作ることぐらい朝飯前だ。それに奴が黒い手で結界を完全に覆っていたことにより、奴自身も金城鉄壁の中を見れないことに気づいたのだ。その結果、俺はこうして怪字に本当のゲイルインパクトを当てることができた。

連続パンチにより怪字は吹っ飛んだが、すぐに起き上がり再び黒い手を数本出した。体表にヒビは見られない、もう一声か。


「来い!お前にも土の不味さを味わわせてやる!!」


口の中に入った土を唾と共に吐き捨て再び怪字と対峙する。しばらく睨み合っていると数本の黒い手が迫ってきた。

それを避けつつ怪字の方へと向かう。避けた黒い手は勢いのまま地面に突き刺さった。


「おらぁあああ!!」


そしてそのまま奴の体に重い拳を1発入れ、次に同じ目線の高さになるよう跳びその無表情な顔を両足で蹴っ飛ばした。そのまま蹴った勢いで後退しようとした時、後ろから土の塊が迫ってきているのに気づく。


(さっき地面に刺した手で土を盛り上げたのか!)


このままだと激突してしまう。そう思った時には次の手を見出していた。

両足を土に付けて蹴り、再び怪字に特攻する。後退したらダメージを受けるのなら逆に敵に向かってしまえばいい!

このまま一触即発を使って待機状態になって勢いで触れ、力強いスマッシュを放とうとしたその時、怪字の右目が強く発光していたのが見えた。


(何をする気だ!?)


それに警戒した俺は一触即発の使用をやめ、そのまま八方美人を使う。悪い予感が的中し、怪字は右目から細い光線を放った。至近距離で本来なら避けれないだろうが八方美人の効果で体を捻ってギリギリ避ける。

俺の横を通過した光線は何本もの大木を貫通し、大爆発を起こした。それを地面に着地しながら見て息を飲む。


(何でもありかよ!当たってたら即死だったぞ今の!)


ここにきて警戒すべき攻撃が1つ項目に加えられる。目から発射される威力大の光線、当たったら即ゲームオーバー!

さっきの土をぶつけて俺の態勢を崩し、その隙に光線を撃って倒すつもりだったのだろう。あの土を見た瞬間、「それをぶっ壊して無理やり後退する」という手も思いついたが実行しなくて良かった。もしそれをしていれば奴が光線を撃とうとしていることに気づけなかったであろう。


「良いぜ、俺こういう避けゲー得意だし」


怪字は次の瞬間黒い手を大量に出し、全ての手が拳を握りこちらに向く。奴がどんな攻撃をしてくるかが理解できた。俺も同じことをするからだ。

予想通り大量の手がほぼ同時に襲いかかってきた。これを普通の状態で回避するのは無理だろう。ならばまた八方美人を使うか?


(いや――この攻撃は絶対に連続パンチ!八方美人を使うと自分で抜け出せなくなる!)


八方美人の弱点、攻撃が連続的に来ても回避はできるが避けるという行動に優先しすぎてそれしかできなくなってしまう。


「それなら……正面対決だ!!」


目には目を、歯には歯を、連続パンチには連続パンチといったところか。

すぐさま疾風怒濤を使い、自分も拳を高速に動かした。


「ゲイルインパクトォオオオ!!!」


「俺のゲイルインパクトVS怪字の大量の手」というパンチラッシュによる対決が始まる。どっちも引かず、拳を当てようとすると相手の拳がそれを防ぎ、相手の拳が来たら自分の拳で防ぐといった攻防であった。

俺の手は2本、相手が出せる手の数は多分無制限、これだけ見ればどっちかが有利なのかは一目瞭然なのだが、こっちには「2本の手+四字熟語の能力による加速」だ。例え拳の数で負けてても勝負には勝てる!


「おおおおおうううらぁあああああああ!!!」


数十秒続いた対決は、俺の右拳と奴の右か左かも分からない手との激突で幕を閉じる。俺は手がジンジン痛むが、奴にはそういった感じは見られない。手にもダメージが無いのを見ると、この黒い手にいくら攻撃しても無意味なのでは?

そう考えていると、いきなり怪字の体に()()()()()


「なっ!?」


亀裂というよりまるで何か()()()()()()()()()()()()()()()傷だ。

俺は何もしていない。一体どうしたというのだろう。


「……」


正体不明の傷をいきなり受けた怪字はしばらく動かずにいると、黒い手を全部中にしまい、さっきと同じようにまた震え始める。

すると天使像の要とも言っていい翼の部分を突き破り、中から黒い翼が飛び出てきた。その翼は奴が散々伸ばしていた黒い手と同じような物質だ。

怪字はその翼で大きく羽ばたき、空高く飛んで何処かへ行ってしまう。


「逃げやがった!?行動読みにくすぎだろ!」


奴が飛び去って行った方向に走っていく俺。突如できた切り傷、そして怪字の不可解行動、全てが俺を混乱させている。

どこだ、どこに向かっている?どんどん出てくる疑問の答えを考えながら怪字を追った。

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