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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第三章:修行合宿
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36話

合宿3日目、昨日と一昨日は虎鉄さんと鷹目さんの凄さと自分たちの未熟さを実感させられただけだったので、今日から本格的な修行を始まることになった。

その内容とは、マンツーマンによる四字熟語の応用する力を鍛えるものだった。俺は虎鉄さんに教わり、刀真先輩は鷹目さんから学ぶ。お互い離れた位置で自分の修行をしている。


「あの岩をゲイルインパクトで割ってくれ」


「はい!」


俺は虎鉄さんが指す方向にある大岩と対峙した。その大きさは自分の身長を軽々超す程のもので、よくこんなのが自然でできたと思ってしまう。

別に大岩を殴ることによる反動は怖くない。そんなの初日の虎鉄さんと比べれば可愛いものだ。


「ゲイルインパクトォ!!」


そして怒涛の連続パンチを岩に食らわせる。1つ1つの拳ではヒビすら入らない。しかし休むことなく殴り続けたので数秒でバラバラにできた。


「よしっ!」


「もっと同じところを重心的にやれば効果的だ。全体的に殴る時は相手を怯ませるため、一か所を殴る時は大きなダメージを与える時と考えたら良いだろう」


「はい!」


1対1で教わっているはずなのに、先ほどから俺は「はい!」としか返事をしていない。それほど虎鉄さんの指導に疑問を持たないという意味だろう。現にただ相手に攻撃するだけのゲイルインパクトに2つの応用方法を見出してくれた。


「所で本当に良いのか?プロンプトスマッシュの練習をしなくて」


「俺が『一』のパネルを使っちゃうと先輩が『紫電一閃』や『一刀両断』の練習ができないんです。それにプロンプトスマッシュはあまり応用できないと思います。ただの一撃カウンターなんで」


「そうか?色々あると思うぞ。上から落っこちてる敵を無理やり自分と触れさせるとか……」


「それもうしました」





一方刀真先輩は鷹目さんと修行をしていた。今やっているのは「剣山刀樹」をより正確にそして速く使う練習だった。


「じゃあ次は2秒以内で平仮名の『は』!」


「はいっ!剣山刀樹ッ!!」


その内容は鷹目さんが指定した文字を制限時間以内でその形に刀を生やすといったものだった。

しかしこれが物凄く精密な作業らしく、集中力も必要らしい。

例えば「あ」を書こうとしたら「お」になり、「そ」と書こうとしたらミミズのようになったという。現に今書けと言われた「は」はちじれた「け」になっている。


「もう一度!」


「はい!」


ちなみにあいうえお順でやっているのだが中々スムーズにいかず1時間ぐらいこれに費やしている。


「流石にこれに時間をかけすぎね……せっかく発彦くんから『一』を預かっているんだから紫電一閃と一刀両断の方をやりましょうか」


「はい……すいません」


仕方なく剣山刀樹の練習は止め、俺が貸した「一」を使う四字熟語の練習に移る。


「まずは紫電一閃からね、元々伝家宝刀だけでも斬撃は放てるけど紫電一閃は威力も距離もその比じゃない。分かっていると思うけど遠くの敵を狙うのに有効的ね」


「はい、どこまで斬撃を飛ばせるかは試したことがあります。10mぐらいでした」


「じゃあもっと遠くまで飛ばせるように練習しましょう。そうすれば遠くからの不意打ちが可能になるわ」


「はい!」


そう言って2人は腰まで伸びている草の草原へとやってきた。そこで先輩は刀を一度鞘に納め、抜きざまに思い切り振る。


「紫電一閃!」


放たれた紫色の斬撃がどんどん草を切り裂いていく。軌道上にあった草は全部斬られ、綺麗な一本道ができていた。ここならどこまで斬撃が飛んで行ったかが一目で分かる。


「その調子で後100回やりなさい。何事も慣れよ」


「はい!!紫電一閃!!紫電一閃!!」


一度紫電一閃を放ったら少し右にずれ、また斬撃を放ち右にずれる。そうやって1回1回の斬撃でできる距離の差が良く分かるのだ。

こうやってどんどん自分の幅を伸ばしていった。




4日目は、まず午前中に前日のおさらいとして座学の時間を行った。鷹目さんの指導と洞察力によって見直す点がどんどん見つかる。どういう状況で使っていいか駄目なのか、そういう重要な部分もやった。

午後は初日と同じく虎鉄さんと1対2で戦う修行だった。


「鉄額!!」


「神出鬼没!!」


いきなり繰り出された虎鉄さんの強烈な頭突きを刀真先輩は瞬間移動で俺の所に来て回避し、そのまま2人であの人に跳びかかった。

すると腕払いで殴りに来たので先輩はまた神出鬼没を使って虎鉄さんの背後に移動し、俺は宙を跳んだまま八方美人を使い腕を避ける。


()()()ゲイルインパクトォ!!」


そしてそのまま正面に立ちゲイルインパクトを彼に食らわせる。ただのゲイルインパクトじゃない。一昨日言われた通り拳を広範囲に打って相手を怯ませる拡散型だ。しかしそれでも虎鉄さんは微動だにしない。

すると向こうにいた刀真先輩が「剣山刀樹」を使う。そして伝家宝刀を地面に突き刺した。複数の刃で虎鉄さんを切り裂くつもりだと思っていたが、その意図はまったく違っていた。


「刀で閉じ込めた……!?」


刀は生えたは生えたが、それは虎鉄さんに攻撃するためのものじゃない。彼の周囲を刃で囲み、閉じ込めるためだった。そう言えば座学の時間で鷹目さんがこう言っていたのを思い出す。


「伝家宝刀は絶対に斬れる刀じゃない、()()()()()()()刀よ」


斬ることはできなくても折れない刀で囲めば虎鉄さんの動きも封じることができるのだ。あの鷹目さんの言葉を思い出してこんな手を思いついたに違いない。


「今だ発彦!!」


「分かってます!!」


今虎鉄さんを閉じ込めた理由は、この隙に重いのを食らわせてやれ!ということだろう。その為に俺側の刀の包囲網は通れるぐらいのサイズがある。これなら大きくなっている虎鉄さんには無理でも俺には通れる。

俺は虎鉄さんに触れるために跳びつき、そして彼に触れる前に空中で「一触即発」を使用、これなら体は動かせなくても跳躍の勢いで先輩に触れられる。


「プロンプトスマッーーシュ!!!!」


思惑通り虎鉄さんに思い切りスマッシュを当てることができた。今度はする。1日目のような頭突きとの張り合いではなく腹部にヒットする。

しかし1番の強度を誇る額じゃなくても全身が硬くなっている。つまり痛いのは痛かった。


「もう1発!!」


しかしいつ虎鉄さんが刀の包囲網から抜け出るかが分からないので痛みに悶絶している暇は無い。もう一度当てるために後退し、再び跳びかかった。

すると俺が触れる前に虎鉄さんは体を大きく動かさず器用に高く跳ぶ。


「なっ!?」


避けられたことで一触即発の待機状態のまま放置され、身動きが一切取れなくなる。上では虎鉄さんが両足を揃えて落ちてきた。そのまま踏みつける気だろう。

しかし向こうから触れてくるなら好都合。スマッシュを両足に打ち込んでやる。


鉄踏(てっとう)ッ!!」


「スマッシュゥ!!!」


そして俺の右手と虎鉄さんの両足が対決する。額じゃなければ大丈夫だと思っていたが、今まで感じたことが無い程の重量感が俺の右手に襲い掛かってきた。


「がぁあああっ!?」


やがてその重みに耐えきれずに押されてしまう。そのまま虎鉄さんが地面に着地した時の風圧で吹っ飛ばされてしまった。


「猪突猛進突きぃ!!」


すると横から来た刀真先輩が「猪突猛進」による一直線の突きを刀真先輩の脇腹に当てた。勿論硬化している皮膚に刺さらず金属音を鳴らしただけである。

離れた位置で着地した俺は、そんな先輩に「一」を投げ渡す。それを受け取った瞬間すぐに「刀」「両」「断」の3枚を取り出し組み合わせて使用。


「一刀両断ッ!!」


必殺の一太刀を虎鉄さんの横に当てるがそれでもびくともしない。仕方ないもう1発だ!


「刀真先輩返してください!!」


「あ、ああ!」


先輩から「一」を返してもらい、疾風迅雷で加速した虎鉄さんに向かって跳躍する。そして疾風迅雷を解除し一触即発を使い、また自分から虎鉄さんに触れた。


「プロンプトスマッシュゥーーーー!!!」


刀真先輩の「一刀両断」に続いてまたプロンプトスマッシュを腹に当てる。すると2人の必殺を連続で受けたことにより、今まで絶対不動の虎鉄さんが少しだけ蹌踉めいた。


「よっ……しゃああああああ!!!」


その結果に大喜びする俺と刀真先輩。初日は動かすこともできなかった虎鉄さんを遂に動かすことができた。今までの努力が実った証拠だ。


「ま、まさかこんなに早くできるなんて……」


それまで余裕の笑みを保っていた虎鉄さんも驚きが隠せないのか口をずっと開けている。自分たちも想像以上の速さだ。


「良かった良かった……って痛っーーーーーー!!!」


すると激痛が遅れてやってきた。あまりの喜びに痛みを感じるのを完全に忘れていたからだろう。さっきの両足に打った時の分も含めているのでこれは流石に地面を転がった。


「ぬおおおおおお……連続で打ちすぎた」


「私も腕が痺れてきた……!」


「やったじゃないか!!凄い成長ぶりだぞ二人とも!!」


さっきまで驚いていた虎鉄さんも飛び跳ねながら喜んでくれる。そして両肩をバンバン叩いてきた。まだ硬化しているので止めてほしい。


「じゃあ今度は1人でできるようにするか!」


「「嘘ぉっ!?」」


そして次の無茶ぶりが来た。





その日の夜、俺たちは疲れ果てて居間のソファーで気絶しているように寝ている。その横で虎鉄さんと鷹目さんが話し合っていた。


「まさかもう俺が少しとはいえ圧倒されるなんて……やっぱこいつらには才能がある!あっぱれ!若い世代だな!」


「私も驚いたわよ、まさか貴方が押されるなんて……」


2人とも俺たちの成長ぶりに驚いていたが、それと同時に喜びの感情もある。たったの4日間でここまで強くできたことが嬉しいのだ。


「才能がある若い世代といえば……あいつを思い出すな!5年前に来た()()を!」


「そう言えば……彼も凄かったわね、()()()()使()()()()()()十分戦えるレベルだわ」


「怪字の出現率が上がったら、それに伴うように才能のある新世代が増えていく……俺たちの出番も無くなりそうだ」


「だからこうやって指導者やってるんじゃないの」


「はは!そうだったな」


こうして合宿4日目が終了した。残り期間後2日、それまでどこまで強くなれるのだろうか……

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