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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第二章:切味抜群の男
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25話

おいおい嘘だろ、何で怪字が出てるんだ。

誰がストーカーの加害者と被害者のパネルが適合すると予想できただろうか。唐突な出来事に驚きを隠せない。

神崎先輩とストーカー野郎は共に気絶しており、風成さんは怪字を見て立ち竦んでいた。

神出鬼没の怪字は風成さんの方を見て、彼女に襲い掛かる。


「危ない!」


咄嗟に奴の脇腹を蹴って転倒させるが、まるで体操選手のようにバク転して態勢を直した。その身軽さに驚きながらも風成さんに逃げるよう言った。


「2人を連れて逃げて!」


「う、うん!」


1人の力で二人を運ぶのは骨が折れると思うが、神崎先輩たちを安全なところに逃がせるのは風成さんしかいない。俺は彼女たちに攻撃が向かないように怪字の相手をしなければ。


「お前の相手は俺がするぜ……紳士さん」


そう、この怪字の服は紳士服とやけに人間味がある。今までにこんな怪字は見たことが無い。見たところ主な武器はあの長い爪だろう。いかにも殺傷能力が高そうな爪だ。

すると奴がこちらに跳びかかってくる。


「のわっ⁉︎」


右爪による引っ掻き攻撃を後退して避ける。続いて左爪で突いてきたのでそれも受け流すように回避した。

それでも止まらない爪の猛攻、素早い動きでこちらをじりじり追い詰めていく。爪の攻撃も警戒はしているが、もっとも注意を払っているのは()()()()()()だった。今のところ変わった動きはしてないが、その能力次第で戦況を一変されるかもしれない。最も既にこっちが押されているが。


「そろそろ……反撃しないと!」


いつまでも奴の攻撃を受けているわけにもいかない。そう思ってるといつのまにか橋の柱まで追い詰められていた。

攻撃が当たると確信したのか、怪字は両腕を大きく振り下ろした。


「今だ!」


俺はそれを避け、後ろの柱を蹴って怪字に突撃する。奴は腕を振り下ろした後なので防御はできないはず。そのまま拳を顔面に食らわせようとすると……


「なっ……消えた⁉︎」


パンチが当たる直前で、()()()()()()姿()()()()。さっきまでそこにいたはずなのに、奴が見えなくなった。

どこへ行った、というよりどこに消えた⁉︎辺りを渡す。


「がっ⁉︎」


すると突如として背中に激痛が走る。振り返ってみると消えた怪字がそこにいた。右爪で俺の背中を切ったのだ。

地面を転がり、怪字との距離を作る。しかし怪字はまたもや一瞬で俺の目の前まで移動する。


「瞬間移動ってやつか……⁉︎」


その長い爪を突き刺してきたのでギリギリのところで回避する。もうすこし遅かったら串刺しになっていただろう。

背中の傷が辛いが状況を整理せねば。

あの怪字の能力は文字通りの瞬間移動、テレポートだ。つまり背後からの攻撃に気を付けないといけない。となると使うパネルが絞られる。


「八方美人!」


四方八方からの攻撃に対し完璧に対処できる「八方美人」が答えだ。これなら背後に瞬間移動されても大丈夫だ。

怪字はいきなり能力で俺の後ろに瞬間移動して爪で攻撃してくるが、当然躱す。それから先の攻撃も避ける。

時折カウンターを入れるが瞬間移動で避けられる。お互いに攻撃して躱される状態が津でいていた。

このままでは埒がかない。どんどん攻めないと――


「疾風迅雷!」


ここで高速移動が可能になる「疾風迅雷」を発動、超スピードで怪字の攻撃のリーチから脱出する。

そしてそのまま怪字の周りを回り始める。高速で移動しているため凄まじい風圧が起きる。常に動き続けて敵を翻弄させる作戦だ。現に怪字は俺を捉えられていない。


(ここは風成さんの時の怪字の真似をするか……!)


俺は疾風迅雷で怪字の背後に回り込み、今度は疾風怒濤を発動する。


「ゲイルインパクトォ!!」


連続パンチで怪字を攻撃する。すると奴が振り向きざまに爪でカウンターをしてきたので回避し、再び疾風迅雷を使って回り始める。このような攻防を何度も繰り返し、少しずつダメージを入れていった。

しかしそれはいつまでも続くわけではない。


(もう疲れてきた……昨日のツケが回ってきたか……!)


昨晩の怪字との戦闘による疲労とダメージ、そして先ほど受けた背中の傷が予想以上に効いて高速移動に疲れてきている。

ここである事に気づく。何故奴は瞬間移動で俺を捕まえないのかを。

持ち前の能力を使えば高速で動き回る俺を簡単に捕まえられるはずだ。なのに奴はただ俺の攻撃をただ受けている。

何か企んでいるのか、それとも……


(一休みついでに試してみるか!)


ここで俺は怪字の視界から外れ、奴と結構な距離まで後退して一時停止する。奴はまだ俺が周りを回っていると思い辺りを見渡していたが、風圧が無くなったことで近くにはいないことに気づく。

そして離れた場所にいる俺を見つけた瞬間、背後に瞬間移動してきた。再び高速移動をして怪字の爪攻撃を回避、また奴の周りを回り始める。


(思った通り、こいつ()()()()()()()()()()()…!)


さっきまでの俺が超スピードで動いていた時は瞬間移動しなかった。しかし俺が立ち止まり姿を見せた瞬間奴はそれを使った。そこから考えられるのは瞬間移動の条件(・・・・・・・)。あの怪字は相手の姿が見えないと瞬間移動できないことを悟る。

こいつは風成さんを狙っていた。考えてみればもし自由に瞬間移動ができたならすぐに追いつけたはず。しかし俺に邪魔されて姿が見えなかったのだろう。

もしこれが当たっていたなら、勝機は十分にある。


「このまま疾風迅雷で押し切ってやる!!」


先ほどと同じく疾風迅雷の高速移動で一方的に怪字を攻撃する。体力の限界が訪れる前に仕留めようと思ったが……


(いや……そろそろ限界か……!)


自慢の体力も遂に底をつく。完全に無くなったわけではないが、これ以上使うと奴の前で動けなくなる可能性があった。

疾風迅雷を解除し、無駄だとは思うが奴と離れた位置まで下がる。しかし俺がもう高速で動けないことに気づいたのか怪字は瞬間移動ですぐに距離を詰めてきた。そしてすぐさま爪で切り裂いてくる。


「のわっ⁉︎」


何とかそれを避け体勢を立て直す。すると怪字は怪字はすぐ消え、俺の右側に現れた。また攻撃してくるかと思い身構えたが、何もしないでまた消える。今度は俺の左側に現れた。

自分の周りで消えたり現れたりを繰り返す怪字、しかし一向に攻撃してこない。たまに俺の死角に瞬間移動してくるのにだ。


(さっきの俺の真似か……仕返しのつもりかよ!)


さっき自分が超高速で怪字を翻弄したように、今度は怪字がその不規則な瞬間移動でこちらを混乱させてくる。立場が一気に逆転した。

目が回りそうなぐらい翻弄されたとき、ようやく向こうが仕掛けてきた。


「危なっ!」


右後ろから伸びてきた爪を直感的に察知して回避する。すると奴は正面に現れて俺の胴体を切り裂いた。


「ぐああっ⁉︎」


深くは切られていないが血しぶきが大きくあがる。やばい、このままだと奴の思うつぼだ。

疲れているがここは八方美人で回避しないと、そう思って八方美人を使おうとした瞬間、また切られる。今度は左肩だ。


「いっづ……!」


そして俺を翻弄させるのをやめ、どんどん両爪で俺の体を傷つけていく。


(こいつ……八方美人を使わせないつもりか!)


このまま攻撃を受け続ければ本当に危険だ。どうする?金城鉄壁で防壁を張っても相手は瞬間移動をしてくる。半透明の壁では奴を止められない。いやそもそも相手がパネルを使わせてくれないのだ。これでは一触即発のカウンターも

できない。


(本当にどうする⁉︎このままだとやられるのを待つだけだ!考えろ……考えろ……)


しかし打つ手がもう無い。パネルが使えないんじゃどうしようもなかった。

こうしている間にも怪字の猛攻は止まらない。もう駄目かと思ったその時……


「ッ⁉︎」


彼方から飛んできた斬撃によって怪字の爪が弾かれる。俺はその隙に怪字から離れた。

見たことのある斬撃だ。しかし前見たやつより少し小さいように感じた。


「やっぱり『紫電一閃』じゃないと弱いか……」


そして聞いたことのある男の声。間違いなくあの人だった。


「宝塚先輩……!」


「やぁ、昨夜ぶりだな」


現れた宝塚先輩は既に「伝家宝刀」を出し、戦闘態勢に移っている。そして庇うように俺の前へ立った。

昨日のことがあるせいかこの救援にあまり喜べない。また助けられてしまった、そう思ってしまう。


「早速だが……また『一』を貸してくれ、君はもう戦えないだろう?」


「……ッ!」


正直言って貸したくない。また自分との差を見せつけられそうだったからだ。先輩より強くなる覚悟をした次の日ということもあるだろう。

だけど、そんな私事を出している暇はない。今この怪字を倒せるのはこの人だけだ。


「……はい」


「ありがとう、使わせてもらう」


先輩は俺から「一」のパネルを受け取り、刀を怪字に向ける。先輩の実力は昨晩見た通り強い。しかも刀なら爪も受け止められるだろう。

邪魔をされて怒ったのか、怪字の敵意も俺から先輩へと移る。いつのまにかこの場が先輩と怪字のタイマン勝負の雰囲気になる。


「さて、早めに終わらせようか」

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